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社会見学と木の引き戸

就職試験と不正解と不採用』の続きです。

1月中旬、給与が少し高かった会社の校内選考が通り、就職試験を受けることになった。就職試験は翌週、ある都市へ新幹線で行くことに決まっていたのだが、その前に採用になったら勤める予定の営業所へ『社会見学』へ行った。以前に試験を受けた会社のプレ面接よりも気楽なものだった。

そう、給与が少し高かった理由は、本社が都市にあったからだった。

その日は土曜日で、授業は午前中に終わり、社会見学は14時の約束。
その会社は私の通学路の近くにあった。「ここの近くを通っていたのに、この道は通ったことがなかったなぁ…」と思いながら自転車で会社へ向かう。会社や工場の多い、細い川沿いの場所に会社はあった。
自転車を会社の敷地内に止め、社内へ入って行く。

倉庫の隅が会社の事務所になっていた。
事務所の入口は木の引き戸。こんなことを言うのはどうかと思うが、綺麗なオフィスに勤めたい人はすぐに敬遠してしまうのではないかと思われる会社だった。部材が置いてある倉庫内は埃っぽかった。
30歳の所長、変なやたら明るいお兄さんの29歳の部下(?)、19歳の男性社員、結婚して退職する予定の事務の女性の計4名の会社。私は(若い…!)と思った。

翌週の就職試験は所長が一緒に来てくれることになった。私はホッとした。道に迷わず行けるからだ。ほとんど住んでいる町から出たことがなかったので、都市の会社に無事に到着出来るか不安だった。

そして翌週。
都市まで営業所の所長と就職試験を受けに行った。適性検査で疲れ、面接でプチ嘘をついた。「友達はたくさんいますか?」と聞かれ、「…はい!」と答えた私。実際はそんなにいなかった。
本社の事務所を少し見学させてもらえた。伝票処理にパソコンを使っていたのを見て、仕事でパソコンが使えるんだ!と嬉しくなった。当時はまだパソコンを使っている会社はそんなに多くなかったのだ。

就職試験は合格だった。その直後に行われた簿記1級の試験も合格した。私は卒業までに就職が決まったのだった。ギリギリだった。2月上旬からは実質授業は休みだったので、本当にギリギリだった。

3月1日に卒業式が行われた。
3月11日は会社の出社日初日だった。

私は出社日初日に会社を休んだ。



この頃、友人と交換日記を書いていて(私がほとんどを書いていましたが)、当時の内容が書かれていたため、この記事を書くのに役立ちました。
『社会見学』や社員の方々の表現は交換日記に書かれていた内容をそのまま引用しました。

交換日記に書かれている私の口調が子供っぽく、恥ずかしくて直視出来ません。この頃の私は若かった。友達は少なかったが、ごく普通の高校生だったと思う。

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