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星の女子さん17『ハハチチ/チチハハ』公開パンフレット

はじめに。開演前のご挨拶

星の女子さん主宰の渡山です。
いつもならA4のペラペラなコピー紙を二つに畳んだような、我々が「当日パンフレット」と呼び習わしている印刷物をお客様に配布しているのですが、消毒のしようもないペラペラな紙は、配るのをやめておこう、ということになりましたので、ここで公開パンフレットという名目でご挨拶文を書くことにしました。というわけで、公開こそしておりますが、これはご来場いただいた皆さまに宛てた、ある種、私的な、密な関係の、秘密の文章になります。秘密てのは一密でしょうか。三密じゃないならいいですよね。なんて冗長な駄文も、いつもなら文字数制限の壁に負けてあっさりカットされるのですが、ここでは制限なんかないので、やりたい放題です。おまけにこれを校正する人もいないのです。いかがなものかと苦言を呈する者のない文章は、いかにも自由で、とりとめなく、まあそんなに面白くもないですね。自由ってのは案外面白くないもんです。それでも自由がいいって人は一定数はいるでしょう。僕はそうです。面白くなくても、不安にかられようとも、厳しい季節になろうとも、自由って素晴らしい。そう思う方です。
だいぶ文字数も増えてきたのですが、まずは、このご時世にご来場いただいた頼もしきお客様方に、心よりお礼を申し上げます。ご来場まことにありがとうございます。
2020年7月、ナビロフトplusという企画で1ステージだけの『ハハチチ』を上演しました。(出演/平手さやか、すぎうらまこ、小熊ヒデジ)その時のお客様方に、劇場でまた会いましょうと、お伝えいたしました。人が集うことにリスクがうまれる世の中だと、わかっていても劇場は人が集う場所で、舞台と客席がそれぞれ「いるかい」「いるよ」と存在を確かめ合う、それが娯楽であり芸術であり、表現となる稀有な場所なのです。人が生きているところを見たい、それが見られる場所が劇場なのです。
こんな世の中だからこそ、生きている人を見たいし、お見せしたい。どうぞ俳優たちの息づかいを感じてください。この狭い小屋で、精一杯を生きている人たちを、見てください。役という人生は、そこそこ他人の顔をしていますが、他人には見せない顔も、さらけ出してくれます。そこに、生きている人を、命を見つけるのです。私たちには、それが必要なのだと。ああ生きてるなあと、思いたいのです。
『ハハチチ』も『チチハハ』も家庭という狭い世界を舞台にして、家族の問題を扱っています。最も密接な関係をはらむ集団にして、秘密のうまれやすい最小単位の集団です。一緒に暮らす人と、三密は避けられません。それなのに、一緒に暮らすことがリスクだとは、喧伝されないのがこの世の中です。だって、仕方ないから。仕方ないというのは、諦めでしょうか。それとも強制でしょうか。ときに一緒に暮らすというのは、暴力的ですらあります。この演目は、ただ家族のお話ではなく、やはりこの時代のお話でもあるのです。
さて、ここは狭苦しい芝居小屋ですが、隙あらば換気していますし、床や壁や椅子その他諸々、清掃にアルコール消毒と、清潔にしております。もちろんキャストもスタッフも手指を消毒してキレイキレイにしております。逆に言えば、我々のような小規模な劇団には、小規模な小屋でないと管理が行き届かないのです。長時間滞在を避けるため、これまでなら1日でこなす作業を何日かに分けて、なるべく過密なスケジュールにならないよう、「あたらしい小屋入り」を模索しながら、公演に臨んでおります。「注文の多い芝居小屋システム」はその試金石となるよう、遊び心と実用性を兼ねるよう運用しておりますが、ぜひご意見ご感想を伺いたいものです。
やあ。やはりどうも、自由に書くととりとめもなくなります。この辺りでiPhoneのフリック入力を止めておこうと思います。
それでは星の女子さんの演劇を、ごゆっくりお楽しみくださいませ。

星の女子さん主宰
渡山博崇
2020.10.14.

星の女子さん17『ハハチチ/チチハハ』上演記録

キャスト
『ハハチチ』
平手さやか


すぎうらまこ


今枝千恵子


『チチハハ』

依子/五木結女


加藤/二宮信也


爺/渡山博崇(声の出演)


スタッフ

作・演出/渡山博崇
舞台監督・舞台美術/早馬諒(妄烈キネマレコード/かすがい創造庫)
照明/則武鶴代
音響/鈴木sun
小道具/渡山博崇
衣装/星の女子さん
演出助手/青木謙樹
映像撮影・編集/いしぐれじゅんこ
写真撮影/佐藤アクロス
フライヤーイラスト/カシワイ
宣伝美術/柊マフユ
受付/黒崎真実、野津彩葉、濱崎優、まとい、今井あや子
制作/寺島久美子、星の女子さん
スペシャルサンクス/演劇練習館アクテノン、てんぷくプロ、ハラミナホ、加藤智宏


会場/円頓寺レピリエ
日程/2020年10月14日(水)〜31日(土)
名古屋市民芸術祭2020参加作品

上演内容/『ハハチチ』『チチハハ』の短編演劇二本立て連続上演。

『ハハチチ』あらすじ
生活のゴミが堆積し、散乱したアパートの一室で柱にくくりつけられた女がいる。それを取り囲む人影は、女の目覚めとともに苛烈な要求をはじめる。貧困と暴力の連鎖が女を縛り付け、追い詰める。はたして女の体感する不条理に解放の日は来るのか?

『チチハハ』あらすじ
築45年のささやかな一戸建て。洗濯物を畳む母と今日結婚式を迎える娘。娘は母に頭を下げて家を出ていく。母は式に向かう様子がない。狭くて古いリビングで、ぶつかってはすれ違い、すれ違っては寄り添い合う。転がり続ける親子の物語。

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