「新作落語台本発表会」の感想と分析
2022年11月25日(金)池袋演芸場で開催された「新作落語台本発表落語会」に行ってきました。後輩が書いた台本が選ばれたのです。
日大芸術学部に通っていた私ですが、大学3・4年生の時は母校ではなく法政大学落語研究会に籍を置いていて、そこで仲良くなった1つ下の後輩が牧田くんです。彼が近年、いわゆる「公募」の投稿職人になっており、広告コピーを書いたり川柳を書いては数々の賞を受賞していました。ツイッターで見かける彼の作品は「謎かけ」をベースにしたものも多く、落研時代に培ったものが活かされていて読む度にニヤリとしています。
そんな牧田くんがこの度、落語協会主催の新作落語台本コンクールに向けて落語を執筆。それが236本の中の5本に選ばれ、プロの噺家さんによって演じられる事になったのです。
こいつぁめでたい!
彼は現在福岡で働いており、なかなかこういう機会がないと会えません。元気な姿を見られれば、私もうれしい。スケジュール的にもこの日は偶然余裕があったので、池袋へ行くことにしました。
新作落語台本発表落語会、
とても面白かったです!
爆笑することもあれば、惜しいな〜!と思うこともありました。
最前列に座る私は積極的に声に出して笑うようにしていたのですが、全体的には重ための空気だった気がします。そうそう、私の右隣りのおじいさんからは最後まで笑い声が聞こえませんでした。何しに来てんだか!
全体的にお客さんの年齢層は高めです。さらに、後列にはズラリと審査員の落語家がいたので演者にとってはそれがやりにくく、重たい空気になっていたのかもしれません。
三遊亭丈二さんと林家正雀さんのオープニングトークは軽くて楽しかったのですが、「M-1グランプリ」における前説のBKBやくまだまさしのように、柳家花ごめさんの高座が始まる直前は「ひたすらくだらないだけの色物さん」を入れても良かったのでは。なーんて生意気なことを思ったりもしました。
生意気ついでに言うと、落語の最中、舞台裏でゴソゴソと物音がしてうるさいなと思うことが何度かありました。
寄席にいくと毎回ですが、ゲラゲラ笑えている時はそこに身を委ねているのですが、身を委ねきれない時(つまり退屈だなと感じる時)、本当に色々なことが頭をもたげます。
「なぜこの落語は面白くないのだろう?」
「なぜこのくすぐりはウケないのだろう?」
特にこの落語会で思ったのはこれです。
「これ、台本が面白いの? 演者が面白いの?」
私も一応、テレビ業界の隅っこに20年いる人間です。エンタメの文法をつい分析したくなる。今回はちょこちょこ、チラシの裏にメモをとったりしました。それをここに書き留めておきたいと思います。
新作落語と言えば、つい昨日のこと。
1つ大きなトピックがあったばかり。
公開収録なのに「誰が優勝したかは放送まで口外禁止!」と箝口令が敷かれたことで話題になったNHK新人落語大賞。蓋を開ければ、立川吉笑さんによる文句のつけようのない新作落語《ぷるぷる》が満点優勝しておりました。
新人落語大賞では2年前に笑福亭羽光さんが優勝していますが、羽光さんの受賞ネタの新作落語《ペラペラ王国》には作中に立川吉笑さんが出てくることでも知られています。その吉笑さんの優勝したのです。なんだか、点と点が入れ子構造でつながった感がありますね。
吉笑さんの新作落語は構造的な工夫のある話が多く、私も大好き。吉笑さんにそのイメージがあるからこそ、羽光さんさんも自分で作った新作落語の中で「まるで立川吉笑」「よっ吉笑!」なんて言う。
吉笑さん自身は、それだけではいけないと思っていたのでしょう。己の身体性を活かしたネタを作ってやらねばとここ数年格闘しているのは拝見して感じておりました。
吉笑さんの代表作《ぞおん》、《舌打たず》、その末にできた《ぷるぷる》。
発想だけでなく、猛烈な練習量が必要なネタであることは一目瞭然です。あんなことされたら審査員は満点を付けざるを得ません。完璧なネタだと感じました。
タイミング的に「新作落語」について、ぼんやりとそんな最新トピックを持ちつつ観たのが今回の「新作落語台本発表落語会」でした。
個人的には大変得るものが多く、140文字では消化できないほど色々な課題をもらった気がしたので、ここに綴ることにします。
ちゃんと木戸銭2000円払って観たんだし、こちとら自腹じゃ!井筒イズムで綴りますがご容赦ください。
ここから先、こんなことを書いています。
では、観た順番に思ったことをつらつらと。
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