火事、自警団に占拠された学校

高校。火事が起きて、教室はざわざわしている。避難した方がいいよね?と誰もが思い、そっと教室から顔を出すと、担任のM先生が「教室にいた方が安全かもしれないから、みんなここから出ないように」と動揺した様子で私達に告げた。私達はそれに従った。
消防の人がなんとか火事を食い止めてくれているような気配はする。しかし、爆発音がして炎が教室の天井を舐めるように這い、私達はパニックに陥る。逃げ出す者や教室に残り続ける者。私は階段を降りようとして、迷っていた。
そこで銃の発砲音が聞こえた。下からだ。私は引き返し、教室に逃げ込んだ。どこかの過激な自警団が学校を占拠した、という噂が流れる。窓を覗くと、校庭に体育座りをしている生徒たちと生徒たちを監視するように立つ、武装している自警団たちがうようよいる。どこにも逃げ場は無い。
誰々が自警団に殺された、というニュースがひっきりなしに聞こえてくる。私は他人事のように思っていたのだが、「(推しの名前)が自警団に惨殺された」という声を聞き、他人事ではなくなった。
私は教室を飛び出して昇降口から校庭へ走った。(推しの名前)はどこですか?と叫んで人に聞いて回る。誰かが校庭の隅を指差し、猛ダッシュした。
校庭の隅には死体が並んでいる。そこに、一人の男子生徒が頭を包帯でぐるぐる巻きにしてぼんやり突っ立っている。顔が隠されているので誰なのかわからない。私は何の根拠もなしにその人が推しだと思い、生きていることに安心した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?