タイムスリップ

気付くと、母と私、一緒に外に居た。知っている場所のような、知らない場所のような。
よく見ると、木葉の先が尖っていたり(私たちの知っている木葉は先が丸まっている)、よく知る街路樹の肌には棘のようなものがいくつもついていたりしている。
おかしいと思って、母が公園で雑談している女学生たちに話しかけた。女学生たちはにこやかに、これでもどうぞ、と言って黒いおやつ?を差し出してきた。母がそれを手に取って口にすると、苦い顔。それからすぐに私と共にその場を離れた。さっきの食べ物は何だったか問いかけると、「おこげ」と言われた。

ある見知らぬ建物に母と二人、入った。ある部屋に入ると、小さな作業場のようなところに机に向かって何かを書く女の子が居た。女の子は見上げると黙ってじっと私達を見つめていた。
同時に、別の机の前に立っていた女の子(さっきの女の子よりは、年上のようだ)に私達の存在に気付かれると、「お前たちの居場所はここだよ」と、これまた小さな空間を指差された。扉を開いてみると洋式便所が一つだけの、狭い部屋。ここで過ごせと言うのだろうか。

もう一度外に出て、母と一緒に確認してみることにした。そして、母は仮説を立てた。「ここは私達のいる時代よりも昔の時代なのではないか」と。

再び先ほどの部屋に行き、少女たちに会いに行った。年下の無口な少女は黙ったまま、そして年上の強気そうな少女は不機嫌そうな様子だった。
「あなたたちはどの時代から来た者なのか?」と問うと、年上の少女の方はさっと顔色を変えた。そして、事情を話してくれた。

自分たちは姉妹で、ある日突然この時代…過去にタイムスリップしたということ。未来にどのようなことが起こるかについて、記事を書かされているということ。こんな狭い部屋で、奴隷のように働かされているということ。私達(私と母)を見て、別の奴隷の世話を押し付けられたと思ったのだということ。

一通り話を聞いて、ああ仲間が居た、ととりあえず安心感を覚えた。年上の少女が言うには、申し訳ないことにトイレしか私と母の居場所が無いのだとのこと。

私と母も、未来に起こることについて記事を書かなければならないのだろうか?少女たちはどの未来から来たのか?疑問が色々残る。

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