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平成ひとむかし|西村しのぶ作『美紅・舞子』


↑この投稿を読んでくださった、
友人Mさんより、

「きゃあ、西村しのぶだって。ミサオちゃん大好き。」

なるメッセージをいただいた。

こんな身近なところで反応いただけるとは思っていなくて、うれしい~~!ファンは多けれど、ニッチでもあろう西村作品への、個人的な熱い想い。オモテに出すと、こういうこともあるのだな(*^^*)

「西村しのぶワールドは神戸レジェンド!」
「“水蜜桃には竹ベラ”ですね~」
「シャケ皮のカリカリ焼き載せお茶漬け…」
「淡路島の玉ねぎ娘、アテのセンス抜群」

などなど、もうすっかり血肉になっている『アルコール』におけるディテール、すなわち地元ネタや食材における西村流リチュアルを取り沙汰して、つかの間メッセージラリー、白熱…!

そんなMさんが、

「ミサオちゃんもいいですが、私はなんと言っても『美紅・舞子』です」

といって貸してくださった、この一冊。


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(神戸市内、Mさんご実家近所にはかつて貸本屋さんがあり、そちらで全巻読破したタイトルもあったりと、かなりのお得意様だったご様子。阪神の震災後、惜しまれつつもお店じまいをされることになり、蔵書を大放出された折に譲っていただいたというのがコチラ。レンタル料は「一日50円」と奥付にスタンプされていた。)


この作品、自分はまったくの初見、これまで存在も知らなかったのは、初出掲載もコミックス化も青年誌なので、縁遠かったのかなと。

(その後、新装版も出ていたらしい。知らんかったーー)

以下、ネタバレ御免ください。

1980年代後半のリリースだけあって、表紙だけでもそこはかとない年季モノ感。(右・舞子の衣装ってあのPINK HOUSEかなーー)

中身ももうほんっとに懐かしくて、スクールウォーズのテーマが聴こえてくるようだ。ちなみにこの頃、わたし自身は小学生。

(ドラマの脚色や演出があるにしても、こういう時代がほんとにあったってこと、たとえばうちの姪っ子(小1)や、今の十代二十代のヒトたちにはどう映るんだろう??戦国時代モノ感覚??)

主人公、美紅たちJKの制服スカートの裾はあくまでも長く、教室で隠れてタバコを吸い、体育の授業はブルマ姿。

憧れのイケメン、有末先輩は同級の本命(?)彼女と同時進行でお金持ちの人妻とお付き合いし、その他複数いるらしい女性にヨージヤマモト(だったかな)の上下を貢がれたりしている。そのうえで美紅にも応じる、根っからのモテ男だ。

程度の差こそあれ、異性関係にフリーダムなのは美紅も同じ。好奇心と、バイタルサインと同じくらい自然な欲求に突き動かされ、片っ端から身の回りの男性陣を踊るように駆け抜ける。


昭和が平成に変わるころ、古き善きバブル全盛期、世の中こんな雰囲気だったんだなー、という時代考証はさておき、そこかしこに、

「恋せよ乙女
 酔うのもいいけど 自分の感覚あってこそよ
 ぞんぶんに楽しんで!」

という見守り的なものを、全編通じて感じる作品だった。

それは、『アルコール』や『RUSH』『ライン』『一緒に遭難したいひと』『砂とアイリス』にも含まれてると思ってるけど、『美紅・舞子』がどれよりも直截的な氣がする。

「語るに落ちてんじゃね―か」と有末さんに見透かされるような、美紅の、まっすぐで、自分を隠せないところは大人になっても変わらなさそう。

ここぞというときには、「わたしはこうなの!!」「こうしてくれなきゃいやなの!!」「ここから先に踏み込んだらただじゃおかねーー!!」という線引きと、それを相手にわかるようにバシっとキメるのも美紅のいいところ。

それは舞子も同じなんだけど、こちらの彼女はどこかつかみどころのないお嬢様。いちおう一途なんだけど、感情のままに“よそ”にも突っ走る。(美紅はほんとの感情が出てくるのがワンテンポ遅いときがあって、ギリギリになって相手に自分をぶつけるような感じは見ていていじらしい)

一話ごとに別々のだれかに影響を受けているかのような、しばらくしたら人格や言うことがコロコロ変わるような舞子の印象はそういうキャラ設定なのか。ハイティーンの女の子の実態を想うと、ものすごくリアルに見えてきたりもする。

西村さんの作品に出てくるオトナは、アカンところもあるけど絶妙の節制度合いでカッコイイ。ゆえにおかしなクソバイスもない。それって、とても救いだ。漫画に描かれた理想の世界でしょ、といったらそれまでだけど、ある程度までは愛ある目もルールも行き届いてる、こんなおおらかなところでみんなのびのび育ったらいいと想う。

最終話、舞子が

「わたし、なんかわかっちゃったかも。 恋って、、、」

と、美紅にわからせるでもなく語ったあのセリフ、よかったなぁ。今となっては同感。あいにく自分の金星期(15~24歳くらい)には、読んだとしてもまったくもってピンと来なかっただろうけど。。。

それにしても、「しょ、、、昭和や、、、」と思ったこの作品。コミック出るころには平成に代がわりしてると知ったときのタイムスリップ感といったらない。もう、令和からしたら平成元年なんて教科書の中の出来ゴトなんだ。歴史ですよ、歴史。

そして、昭和・平成からの時空を超えた“おたより”はMさんに『美紅・舞子』を返却したあとも勢い増し増しになってゆくのだった。(つづく、かも)

星の一葉 ⁂ 図書係

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