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【ライブレポート】2024/2/23 Getting Better-28th Anniversary Party"Sun"-@下北沢ERA


TORO

2月22日、歯医者の帰りにたまたま寄った高円寺のヴィレヴァンに展開されていたアルバム『TORO』。流れてくる曲と映像に惹かれて即購入。ストレートに言ってしまえば、90年代後半に活躍したWINOを思わせるような歌声とUKロック、ブリットポップの香りがものすごく好み。スケール感もあって、どんなライブをするんだろうと興味が湧いた。

Jam Fuzz Kidと対バンとかしたら絶対楽しいぞ、なんて思ってつらつらSNSを覗いていたら、まさかの翌日、Getting Betterのイベントで共演する、との情報が。

これは行くしかない、とチケット購入してこうして馳せ参じたのだが、生で観ることができて良かったと思わせてくれるライブだった。

梅田シュウヤ(Vo)と大西竜矢(Dr)にサポートメンバーを加えた4人編成。2023年結成というルーキーバンドながらすでにメンバー脱退も経験。順風満帆とはいかなそうな、不穏でギラギラした空気を感じる佇まいにゾクゾクする。

日本語詞と英語詞の両方を操り、とぐろを巻くネガティブなエネルギーを音に乗せる、いや、音と共にフロアにぶつけていくようなパフォーマンスに圧倒される。

結成メンバー3人が全員1999年生まれというTOROの楽曲「1999」。元メンバーも観に来ているという今日のライブで披露してくれたが、楽しいこともそばにいてくれる人もいないし、適当に生きている人にはわからない、と歌うネガティブな感情が詰まった一曲。

もし10代や20代でこの曲に出会っていたら、部屋にこもって、ひとり深夜にヘッドホンで聴き続けて、「俺の曲だ…!」なんて思いながら暮らしていたに違いない。(今でもその素養はあると自覚しているのだが)

物販のTシャツを自身でプリントしていると語り、「そこらへんのパンクバンドよりもDIYなんで」「俺らのほうがパンク」と反骨精神も隠さず堂々と振る舞う姿は、まさにロックバンド。

「ロックの復権」をコンセプトに活動しているというTOROだが、そのサウンドや歌詞、そしてステージでの姿勢と、コンセプトに偽りなし。シンプルに「カッコいい」という感想が漏れてしまう、そんなライブだった。

01.本音
02.EUPHORIA
03.困惑
04.BOW
05.-
06.1999
07.Close to me
08.言い逃れたい
09.天国
10.どのくらい

Jam Fuzz Kid

2番手はJam Fuzz Kid。以前、Getting Betterのイベントでthe telephonesとTENDOUJI、そしてJam Fuzz Kidという最高なスリーマン企画があったのだが、体調不良でJam Fuzz Kidは出演辞退。

そういえば『下北にて'23』でもここERAでライブを行った彼らだったが、機材トラブルで開演が押しに押して、予定通りできなかったこともあった。

・Getting BetterでJam Fuzz Kidを観る
・下北沢ERAでフル尺たっぷり使いきったJam Fuzz Kidを観る

という2点における個人的リベンジでもある今日のライブ。

「自由に身体クソ揺らして帰ってくれ!」というRiki(Vo)の言葉とともに「601」から景気よくスタート。

続く「KABUKI」も含めてJam Fuzz Kid自慢のツインギターがRikiに負けず爽快なギターリフをぶちかまして、TOROからの流れ含めて、ここはマンチェスターのライブハウスかと思うくらいの空気を作る。

今日が2024年バンドセット一発目のライブだという彼らからは、久々のライブに心から楽しんでいる様子が伝わってくる。

辞めることは簡単だが、続けることは難しいと言ってGetting Betterの28周年を祝いつつ、中盤ブロックでさらにUKロック×Jam Fuzz Kidの楽しさ、気持ちよさをアピール。

久々に披露するという、Getting Betterの片平実に捧げる「Afterglow」、立派なアンセムに育った「Tyler」、そして何度聴いてもまずそのイントロのリフで心が震えてしまう「Pluto」と、息つく暇もなく名曲たちを続々とプレイ。性別国籍関係なく、フロアもめちゃくちゃ盛り上がっていた。

アリーナやドームで鳴らす姿がイメージできるくらい壮大な楽曲が魅力のJam Fuzz Kidだが、RikiはSNSのフォロワーが垢バンで10人減るだけでも落ち込んでしまうと語る。

そんな微笑ましいMCを挟んで、ライブ終盤では2023年リリースのEPより、これも新たなアンセムに育ちそうな「Nightwalker」を演奏。あまりにも盛り上がりすぎて、これで終幕な空気が流れるも、これで終わりではなかった。微妙な間も生むが、まだ1曲あるという「お得感」をアピールして切り返すRiki。

キマりそうでキマらないのが彼ららしさかもしれないし、そういう部分が「俺たちのJam Fuzz Kid」な雰囲気を醸し出しているとも言えそうだ。

「最後、ロックンロールして帰るんで」の言葉を残して「Shimmer」を披露。振り返ってみればどの曲も代表曲と呼べるようなクオリティ。そして今日のセットリストは、彼らが明確に進化し始めたと思われる2021年以降の楽曲ばかり。

もって売れてほしい、もっといろんな人に知ってほしい、聴いてほしいと思いながら応援しているJam Fuzz Kidなのだが、いざライブになるとそんな気持ちは軽く吹っ飛んでしまい、ただただ目の前に広がる音とパフォーマンスに心酔してしまう。

頭の中を空っぽにしてくれるライブは本当に最高だ。

01.601
02.KABUKI
03.FOOLS
04.Afterglow
05.Tyler
06.Pluto
07.Nightwalker
08.Shimmer

Mississippi Khaki Hair

3番手は、これまで名前は知っていて音源も聴いたことはあるが、ライブで観たことはなかったMississippi Khaki Hair。

大した予備知識もないまま、目の前で繰り広げられるライブを観たのだが、余計な情報がない分、その音楽とパフォーマンスをピュアな気持ちで楽しめたような気がする。

もともと出演予定だったバンドが急きょ解散となり、片平があちこち声をかけるも急すぎて次々に断られるなかで、そのオファーを快諾したというエピソードが片平本人の口から語られたが、もうそれだけでMississippi Khaki Hairを好きになってしまうじゃないか。

TORO、Jam Fuzz Kidがブッキングされるラインナップでもまったく違和感がない、海外を感じさせるようなサウンドと英詞の楽曲。Taito Kimura(Vo/Gt)の歌声との相性もバッチリで、下北にいるのに日本じゃないような、でもこういうのがまた下北っぽさでもあるような、と思いがぐるぐる巡る。

Akane(Syn/Cho)が放つシンセの音色が楽曲に華やかさをもたらしており、曲の中身自体はちゃんと濃く仕上がっているのに、初見のリスナーもスッと入っていける間口の広さも併せて持っている印象。

リズム隊も含めて“聴かせる”演奏がとても心地よく、音源だけで済ませてしまうのはもったいない、むしろライブがめちゃくちゃカッコいいし力強さも色気もあるバンド、ということを強く認識させられた。

諸事情あって今回はこの3バンドまで観てERAを後にしたのだが、こうしてライブに行くことで新たな出会いがあるなあと実感。

体調崩してから出不精になりがちだったが、やっぱりライブはいいなと感じさせてくれる3バンドのパフォーマンスだった。

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