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【ライブレポート】2024/4/20 EdgeEnd Fes 2024 Spring! vol.1@上野恩賜公園野外ステージ

上野恩賜公園野外ステージで行われた『EdgeEnd Fes 2024 Spring! vol.1』に行ってきた。4月下旬、晴れの日に爽やかな風が吹き抜ける上野公園という、絶好のロケーションで開催となったイベントを簡単に振り返る。


開場からしばらくの時間は、ひなひよがDJとして開演までの時間、心地良い楽曲たちをズラリ並べて客席を温める。出演アーティストたちはそこかしこで、ひなひよの流す曲に反応したり、仲間と談笑したりしており、のどかで平和な景色が広がる。

転換中やクロージングではExit Musicが選曲。最初から最後まで音楽が途切れることのない、最高の一日が始まった。

ケイチ&ココナッツ・グルーヴ

やがて開演時間を迎え、トップバッターとして登場したのは、2022年結成、自ら「サブスク世代の渋谷系バンド」と謳うケイチ&ココナッツ・グルーヴだ。

ライブの幕開けを飾ったのは「the circle」。なるほど、渋谷系の看板を掲げるのも納得の、あの頃がよみがえるようなお洒落でポップなサウンド。バンドが鳴らす音が丸みを帯びていて柔らかく、なによりケイチ(Vo/Gt)の歌声が優しい。

こういった野外は初だそうだが、青空と風と太陽に包まれながら聴く彼らの音楽は、最高のひと言。

その後も「Diner Song/素敵なアメリカ」「郊外」「そこにいなくても」「シテール島への脱出」と、渋谷系あるいはネオアコとも呼べる耳心地のいい音楽が続々と披露された。カジヒデキのラジオ番組やイベントに誘われるなどあの時代の渋谷系を担っていた中心人物のひとりとも縁が深く、歴史が継承されている、まさにその瞬間を体験しているのかもしれない。

今一番新しいシングルだという「ひとりを知ってる僕らのために」を演奏する際には、メンバーのギタリストがステージから去り、ギターボーカルにキーボード、ベースという3人編成でのプレイ。

ラストで再び4人編成に戻ると、観客を巻き込で手拍子を誘いながら「日曜日は終わらない」を披露し、ライブの幕を下ろしたのだった。

Jimmy Pops

2番手に登場したのは、Jimmy Pops。彼女たちのライブを観るのが今日が初めてだ。

1997年、パンチョ(B)の宅録プロジェクトにOri(Vo.)が加わり結成。
1998年7月1stシングル『Seashell e.p.』発売。収録曲の「Michelle」は全国のギター系クラブキッズに愛され、今ではクラシックとなっている。
1999年には2ndシングル『Love Hunt e.p.』をリリース。 1999年12月アメリカのthe crabs来日公演ではフロントアクトを努め、the crabsのメンバーがいたく気に入り自ら彼らの音源を購入。
2000年一時期活動を停止するが、その間も音源はフロアでは愛され続ける。 2003年に待望の復活。 2005年遂にアルバム発売。
KOGA RECORDSサイトより引用(http://www.koga-records.net/artist/jimmy-pops.html

パンキッシュかつアグレッシブな曲を中心にOri(Vo)の可愛くもキレのある声が野外ステージに響き渡る。ライブハウスならモッシュが起きそうなくらいの勢いがあるのだが、何よりも印象的だったのは、メンバーが皆楽しそうに演奏していることだ。

客席に漂うホーム感も理由のひとつかもしれないが、キャリア豊富なバンドがこうして楽しみながらライブをしている姿が最高だ。

彼女たちが活動をスタートさせた90年代後半、自分はちょうど学生で、Jimmy Popsのような音楽も好んでよく聴いていた。あいにくリアルタイムでは遭遇しなかったが、25年近い時を経て出会えたことに感謝したい。

Three Taller Hats

アキラウィルソン、ショーノレンこと石田ショーキチ、エルトンジュンこと岡田純によるコーラスグループ、その名もThree Taller Hats。3人それぞれにギターを抱えて歌うスタイル(岡田はタンバリンも駆使)で、その歌声もまた素晴らしい。

前半2バンドのMCがハッキリと聞き取れない場面が多かったことを踏まえ、ライブ冒頭で「ゆっくり大きめに喋らないと聞こえないからね」と語るあたりはさすがの大ベテランたち。

1曲目、Bobby Freemanの「Do You Wanna Dance」ではアキラの歌声を中心とした、抜群のコーラスワークで早くもThree Taller Hatsのポテンシャルの高さを見せつける。ずっと聴いていられるほどに気持ちがいい。

MCでは、アキラ自身はロカビリーバンドをやっており、岡田はロックンロールバンドをやっているとのことで、この3人の共通点はなんだろうと考え、「大瀧詠一が好き」にたどり着いたんだそう。そんな大瀧が山下達郎とカバーしたThe Everly Brothersの曲をやりたい、ということでセトリにはThe Everly Brothersの「Love Hurts」が組み込まれていた。

また、これほど練習で脳みそを使うバンドはいないと語るショーキチ。疲れすぎて、練習が終わってから「メシ行こう」とならないのが、このThree Taller Hatsなんだそうだ。

本格的なバンドセットよりも、時にこういうラフな編成のほうが伝わりやすいのも、こうした野外ライブの面白さ。各メンバーの卓越したスキルを、間近でたっぷり堪能できるという贅沢な時間だ。

特に石田ショーキチの、アコースティックギターによるソロプレイやリードボーカルを務めた際のその伸びやかな歌声には圧倒された。ギターも歌も、上手すぎる。Spiral LifeやScudelia Electroよく聴いてたなあ、で止まっている人がいれば、ぜひ今の石田ショーキチを味わってほしい。

と言いながらも、私の最後の記憶は、2007年6月に下北沢で開催された、GO ALL THE WAY vol.1(石田ちゃん祭り)での村松ショータローとニューインディアンデスロック。もう17年前の話だ…。

今日、最新の石田ショーキチを味わうことができて本当に良かった。

楽譜を見ないと弾けないと言い、老眼鏡を手にする姿もあったが、歳を重ねて30年前とはまた違った輝きを見せるショーキチに心から感動。ちなみに、他のアーティスト演奏時も客席で熱心にライブを観て、自ら率先して声を出したり手を叩いたりしながら楽しむショーキチも、カッコ良かった。

セットリスト
1.Do You Wanna Dance / Bobby Freeman
2.Yes I Will / The Hollies
3.When The Summer Is Through / The Happenings version
4.Love Hurts / The Everly Brothers
5.Wouldn't It Be Nice / The Beach Boys
6.Cruel To Be Kind / Nick Lowe
7.I Get Around / The Beach Boys

東京センチメンタル馬鹿野郎

ラストを飾るのは、そのいかつい名前が誤解を生みそうなバンド、東京センチメンタル馬鹿野郎だ。初めてその名前を目にした人は、決して「馬鹿野郎」に重心を置かないでほしい。「東京」から連想されるアーバン&お洒落感と「センチメンタル」こそが、このバンドの魅力を表しているのだ。

ライブは「花束」で始まった。速いテンポではないのに、見事なグルーヴによって心がドライブする感覚が生み出され、あっという間に身も心も前のめり。たすく(Vo/Gt)の繊細でありながらどこか包容力も感じる、個性豊かな歌声がバンドの雰囲気ともマッチしており、癖になる。

ライブではお馴染み(?)ともいえる「温泉慕情」では、《ダメ~》の歌詞に合わせて両手でバツ印を作るよう促し、客席との一体感を生み出す場面も。

MCでJohnchilは、本日の出演バンドについて感謝とともにコメント。Three Taller Hatsについては、その素晴らしいライブに「震えてましたね。順番逆なんじゃないかって」と語っていたが、大丈夫。東京センチメンタル馬鹿野郎もトリを務めるにふさわしいパフォーマンスだった。

昼は暑い日差しが降り注いでいた会場も、時刻はもう夕方。爽やかな風が通り抜ける過ごしやすいこの時間帯に、彼らの音楽が輪をかけて過ごしやすくしてくれていたのではないだろうか。

リズムに身を委ね、身体を揺らしたくなるシティポップソングから、しっかりとビートを刻むアップテンポな楽曲まで、バラエティ豊かなセットリストで観客を最後まで楽しませてくれた東京センチメンタル馬鹿野郎。

ライブ終盤には新曲も披露し、良質な音楽をアットホームな雰囲気の中で届ける『EdgeEnd Fes 2024 Spring! vol.1』を、その素晴らしい歌と演奏で締めくくった。


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