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【ライブレポート】2023/8/31 STROKE RECORDS Pre.「STROKE NIGHT 2023 ~東京編~」at 渋谷CLUB CRAWL


かつて、毎年8月31日に渋谷CLUB CRAWLで開催されていたのが、STROKE RECORDSのレーベルナイト、その名も『ヤンキーナイト』。出演者全員が特攻服を着てライブをするという遊び心満載のお祭りが、久々にCRAWLに帰ってきた。

名前は『STROKE NIGHT』に変わり、もう特攻服も着ない。すでに富山や水戸で開催されたレーベルのお祭りが、いよいよ本陣となる渋谷に登場だ。

私が最後にCRAWLでライブを観たのは、コロナが話題になる前の2019年12月、内田直孝『音物語~拾陸ノ夜~』だ。その後、オンラインにてCRAWLのライブを観ることはあったが、足を運ぶ機会はなかなか訪れず。

たまたま今年の2月、関西の知人がCRAWLでライブを企画するということで、まだオンライン上でしか交流がなかった彼と直に挨拶がしたいと思い、F.A.Dでのライブ終わりに終演後のCRAWLへ駆けつけるということはあった。そこで数年ぶりに(そしていつの間にか店長になっていた)ヒロシさんと再会。さらにはいつも受付で最高の笑顔でもって対応してくれていたスタッフのくららちゃんとも言葉を交わすことができた。

ライブハウスに来て、そこで鳴っている音楽や演奏しているバンドとは関係なく「懐かしい」と思える存在がいることにじんわりきたのを鮮明に覚えている。コロナで人との直接的な交流がしづらい数年間を過ごしたから、余計にそう感じたのだろう。

3年半の時を経て、ようやくCRAWLでバンドが鳴らす音楽を浴びることができる。そんなワクワクとドキドキに拍車をかけるように、CRAWLへの道すがら、Rhythmic Toy Worldを通じて知り合った友人が、KEMURIのTシャツを着た自分の背中だけでピンときて、「ほしのんさん?」と後ろから声をかけてくれた。

私を知らない人は、STROKE RECORDSのイベントになぜKEMURI?と思うかもしれないが、自分にとってKEMURIのTシャツは、何を着ようか迷ったときのユニフォームみたいなものだ。(あとLOW IQ 01)

思わぬかたちで友人と合流し、今日のライブ、そして続々と発表されるRhythmic Toy Worldの対バンライブについてああだこうだと話しながらCRAWLに到着。まずは受付にいるくららちゃんと挨拶だぜ…と思ったら別の人が受付に。あれ、今日はいないのか…?と一瞬不安がよぎるも、クローク付近に立つ彼女を発見して、無事に「久しぶり!」の挨拶を済ます。

この顔を見るとなぜか安心する、そんなスタッフがいることをCRAWLはぜひとも誇りに思ってほしいし、大事にしてほしい。他にも物販やPAなど、いつものスタッフたちがそれぞれの仕事をキッチリ進めている姿に頼もしさと、そしてやっぱり懐かしさを感じながら、ハコの中でなじみのリズミッカーたちとも合流し、いよいよ『STROKE NIGHT 2023 ~東京編~』の幕が上がる。
※ここからは敬称略

bivouac

トップバッターは、レーベル最年長メンバー率いるbivouacだ。他のレーベルメイトたちに比べると、コンスタントにライブをやっているとは言い難い。それでも不定期でマイペースにライブ活動を続けている。

ノホリサチオ(Vo/Gt)のヒリつくような歌声と共に「BAYSIS」でスタート。ライブハウスやステージに立つ想いを歌った楽曲は、ライブハウスとそこに集う観客たちを大事に思うSTROKE RECORDSのイベントにおけるオープニングナンバーとしてこれ以上ない適役だろう。

疾走感溢れる「Mr.answer」も披露し、あっという間に場を温めるbivouac。しかし騒いだ血をゆったり鎮めるかのごとく、ササキヒロシ(Dr)のMCが皆を和ませていく。

「CRAWL18周年おめでとうございます!」「ありがとうございます!」

CRAWLのステージに立つbivouacのドラマーとして、ライブハウスへのお祝いを述べると、すぐさまCRAWLの店長・佐々木ヒロシとして、お祝いに対するお礼をする、一人二役の落語スタイル。

何度も言葉に詰まるなど、たどたどしいMCにフロアからは「がんばれー!」の声が飛ぶ。これに対して「今のヒデ[アルコサイト北林英雄(Vo/Gt)]だろ」とノホリ。ライブ本数が少ないbivouacを英雄は「ノホリさん緊張してるよーー!」「ヒロシさん今確認してるよーー!」などと楽屋でいろいろイジっていたそうだ。

そんな暴露話で笑いを誘うと、さらにノホリは続ける。本来なら今日は自身にとっても富山ぶりの『STROKE NIGHT』となるはずが、体調不良で富山のライブをキャンセルせざるを得なかった。そんなイベントに賭ける思いも重なり、レーベルメイトたちの楽曲の中から、各バンドの「聴きたい曲」をSNSで発信したものの、誰もノホリのリクエスト曲をやらないことが判明。

最年長の威厳とは…笑。年上のひと言に強制力がない、という点でいかにこのレーベルがフラットで風通しが良い場所か、ということの証明でもある、としておこう…。

bivouac待望の新曲「HOME」や「僕に告ぐ」など、前半のBARICANG時代の楽曲からbivouac楽曲へと切り替わった中盤。あらためて久々に観る彼らのステージをじっくりと堪能した。

イトウユウジ(Ba)は、やっぱり数年前と変わらず、顔でベースを弾いている。そのパワフルさには磨きがかかっているかのようだ。ヒロシは、ライブハウスの店長という重責を一旦肩から下ろして、彼のトレードマークともいえるニコニコの笑顔と共に軽やかにドラムを叩いている。

サトウナオヤ(Gt)は、迫力のガタイに似合うエネルギッシュなギタープレイで楽しませつつ、ユウジのベースがメインとなるパートで、しっかりチューニング。曲中の隙間でさらりとやってのける姿がカッコいい。

「選んでもらえるようなバンド人生でもなかった」というノホリは、そんな自分たちを選んでくれたSTROKE RECCORDSへの感謝と併せて、「俺が選んだものを大事にしようかなと思ってます」とも語る。

そして家族とも呼べるレーベルメイトや応援してくれる人たち、そして目の前にいる観客たちに向け、今日一日をちゃんと刻んでいきたい、と告げた。

bivouacが選んだラストナンバーは「you're my sunshine」。ギターロックよりもメロコア寄りな激しい一曲で、後輩からのイジリを受け止める愛すべき先輩として、堂々たるパフォーマンスを見せつける。

「STROKE RECORDSに、CRAWLに、あんたに光あれ!」

ノホリの最後の叫びに、bivouacの想いが全て込められている、そんなステージだった。

goomiey

もとはスリーピースだったが、コロナ禍に入りメンバーが脱退。しばらくの間は平山舞桜(Vo/Gt)がひとりでgoomieyの名前を背負い、活動をしていた。スリーピース時代に何度かライブも観てCDも買い、個人的に応援していたバンド。楽しみな未来を感じさせてくれていたので、メンバー脱退の一報にはショックを受けたと同時に平山の心情を想うとなんともいえない気持ちにもなっていた。

そんな、ひとりになっても逞しく活動を続けていたgoomieyに、今年一つの朗報が。それが、おり(Dr)と鎌田あかり(Ba)のバンド加入というニュース。新生goomieyがいよいよ動き出した。

この3人になってからは初めて観るライブ。登場SEはジュディマリの「そばかす」だ。《思い出は~♪》と口ずさむおりの姿を見て、早くも(この子は推せる…!)と思ってしまったが、ライブを観てもその気持ちは変わらなかった。

何よりも楽しそうに叩く、その笑顔が素晴らしい。bivouacのヒロシもそうだが、個人的に笑顔が似合うドラマーが大好きなのだ。

そして鎌田が鳴らすベースは、音が粒立っていて小気味良い。このふたりによるリズム隊、なかなか良いのでは。

平山の「手拍子を貰えますか?」という誘いから「マガジン」へ。コーラスワークが気持ちよく、しっかりとスリーピースとしてのバンド感が出ているライブが続く。

『STROKE NIGHT』は、まるで年に数回の親戚の集まりのようだと平山。ノホリの「家族」発言を受けつつ、STROKE RECORDSはそういう場所なんだと語る。さらに「今日は長女として、皆さまに今のgoomieyの姿を見せられたら、と思います」と力強く話してくれた。

いつもライブに持参するモノを忘れてしまった、今日の自分は情けない…そんなトークから、情けない日々を洗い流せるような曲を、というフリで「情けない日々」。ダダッ、ダダッ、ダダッダン!と勢いあるドラムから始まるロックナンバーで、今年リリースのアルバム収録曲でもある。

さらに「もう涼しくて夜には心地いい風が吹く、夏の終わりにピッタリの曲を」という紹介から「うみべの話」へ。

平山は、まるで自己紹介も兼ねているかのように、曲を演奏する際には必ず曲名を添えてくれた。今からやる曲を、さっき披露した曲を、ちゃんと知ってほしいという想いが伝わってくる。こういう小さなことの積み重ねは、これからきっと活きてくる。

ライブ終盤にはレーベルメイトや関係者、そして観客に向けて、自分がひとりになったときやメンバー加入して新しいアルバムを出す、ツアー回る、といった際に温かく向かい入れてくれたことに対して感謝のメッセージを届けていた。

「運命」という曲を披露する際には、「夏の最後の思い出に、goomieyと一緒に悪いことしようや!」という、『ヤンキーナイト』の残り香を感じさせる不敵なセリフも。

同曲は、ひとりの平山から今の3人になったgoomieyを表現しているかのような《独りじゃ何も出来ない私を見つけてくれた貴方を》や《何時も何時だって1人じゃなかった》といった歌詞が印象的。そして、ノホリが「自分が選んだものを大事にしたい」といった言葉にも通じるような《何度でも此処を選ぶと思えるよ》というフレーズも。

彼ら、彼女らはSTROKE RECORDSに選ばれたと同時に、自分たち自身がSTROKE RECORDSを選んで、此処にいる。

それを改めて表明するように、ラストは「ライブハウスの曲を歌います!私たちがSTROKE RECORDS所属、goomieyでした!」という平山の宣言で「ハナコトバ」を披露し、30分のステージを駆け抜けた。

数年前のgoomieyのライブでは、どこか挑戦的であったり、硬い印象を受けるパフォーマンスを目にした記憶があった。負けちゃいけない、そんな強気の姿勢が見えるライブ。しかし今日のライブはレーベルイベントということもあってか、とてもいい表情でこの時間を楽しみながらフロアと一緒にライブを作っている、そんな気がした。

新たに頼もしい仲間を得た平山率いるgoomieyのこれからがますます楽しみだ。

セットリスト
01.2020
02.マガジン
03.情けない日々
04.うみべの話
05.運命
06.ハナコトバ

かたこと

Cymbalsの「Winter Day Song~彼の冬・彼女の冬~」を流しながらステージに登場したのは、長尾拓海(Vo/Gt)、純(Ba)、伊東拓人(Dr)からなるスリーピースバンド、かたことだ。SEからして、なんて爽やかなんだ。『ヤンキーナイト』と銘打っている場合ではない。

「最高に楽しい時間にしましょう!湘南から来ましたかたことです!」
これまた清々しい挨拶から、1曲目「Letter Song」でライブスタート。長尾の清らかで爽やかな歌声が、一陣の風のようにCRAWLを吹き抜けていく。

2曲目の「アイデンティティを愛して」まで聴いて、なんてピュアなんだろうかと驚くと同時に、それだけじゃないエネルギーも感じた。以前にも何度かかたことのライブを観たことはあって、そのときはひたすらに「爽やかだー!!」と思ったのだが、しばらく観ないうちにちょっとずつ変化あるいは進化が始まっているようだ。ポップ100%だったものにロックが混じりつつある、そんな印象。

MCでは、自分たちがSTROKE RECORDSに入ってから、8月31日開催のイベント名が『ヤンキーナイト』ではなくなった件について、「見てもらったらわかるように、ヤンキーじゃない、カツアゲされる側」と話すメンバー。諸先輩方がいかに『ヤンキーナイト』にふさわしい存在なのかを示すかのごとく、「(アルコサイトの)英雄さん見てたら、『何見とんねんコラ!』って」と怖いエピソードも披露するなど、レーベル内ではいちばんの後輩ながら、容赦なく先輩イジりをするというSTROKE RECORDSあるあるが発現。

会場も大ウケで、完全にこの場の主導権を手に入れたかたことだ。

「僕らには圧倒的に夏過ぎる曲がある」という言葉からの「ラブ&ポップ」、そして「もっともっと夏を加速させる曲!」と告げての「夏風、恋する君と私」と、2曲連続でのサマーソングも披露。

「夏風、恋する君と私」なんてタイトルの曲、これまでのSTROKE RECORDSではなかなかお目にかかれない。まさしく新風。

悩み続けた先に自分なりの答えが見つかることが最近ちょっとずつわかってきたと、長尾は語る。ただ、悩み続けることはエネルギーがいるし、心が折れることもあると続け、そんなときに自分を肯定する歌、迷わずに大丈夫だと言ってあげられる歌を歌いたいと話し、「あなたが自分のことを愛してあげられますように」というメッセージを添えて「主人公」を披露。

これまでのポップでロックな場が盛り上がる楽曲と少し趣が異なる、心に沁みる一曲だ。長尾の、語りかけるように、目の前の「あなた」にちゃんと届くように歌うその歌声も素晴らしかった。

最後は「CLUB CRAWLに吹く風で貴方の涙が晴れますように!」と叫んで「涙が晴れるまで」という、2020年リリースのEP収録曲を演奏する。

「あなたの声が聴きたい」と言い、フロアにシンガロングを促すと

《雨降る日々を抜けて》
《明日の風で晴れろ涙》

の大合唱がCRAWLに轟いた。よほど好きなバンドの好きな歌でもない限り、こういったシンガロングはしないタイプの自分だが、あまりのグッドメロディと気持ちのいい歌詞に、思わず声を出してしまった。まさにキャッチー。

冒頭で「清々しい挨拶」「清らかで爽やかな歌声」と書いたが、こうしてフロアを巻き込む力やロックの強度が加わったポップネス溢れるパフォーマンスなど、かたことがただピュアなバンドではないことを示す、そんなライブだった。

とは言いつつも、やはりSTROKE RECORDSにおいては抜群に清らかなバンドであることは間違いなさそうだ。

セットリスト
01.Letter Song
02.アイデンティティを愛して
03.ラブ&ポップ
04.夏風、恋する君と私
05.主人公
06.涙が晴れるまで

アルコサイト

コロナ禍でのオンラインライブは観たものの、リアルでアルコサイトのライブを観るのは、2019年の『ヤンキーナイト』以来、ちょうど4年ぶりだ。

「お前と歌いに来た!!!」という英雄の力強い叫びから1曲目「人間失格」が始まった。画面越しにも伝わってくるものがあったが、やはり対面で浴びるアルコサイトのパワーはすさまじい。

「ロックバンドが来たぞ!!!お前と歌う!!!」

英雄の絶叫から「最後の恋」、そして「馬鹿みたい」を続けて披露する。

「普段通り、練習どおり? そんなライブつまんねぇよ! 俺たちが連れ出してやる! 本物のロックバンドのライブ!」という英雄の頼もし過ぎる煽り。このメッセージは決して誇大でも、虚勢でもないことは彼ら自身が証明してみせた。

以前よりも着実に逞しくなっている、そんなエネルギッシュなステージ。近年、クールでオシャレなサウンドの曲や、ボカロ系の複雑な展開の楽曲がチャートを賑わしている。もちろんそれらの楽曲も素晴らしいのだが、カットボールやスプリット、スイーパーなど多彩な球種が飛び交うなかで、渾身の160km/hドストレートなロックで勝負するアルコサイトは、掛け値なしにカッコいい。

英雄を筆頭に、ギラギラした暑苦しいまでのステージング。浜口亮(Ba)の巨体から繰り出される迫力のベース、小西隆明(Gt)の切れ味抜群なギタープレイ、個性派たちをキッチリとまとめ上げる森田一秀(Dr)のドラミング。

アンサンブル、という表現ではまろやかすぎる、どつきあいのような攻撃的なプレイにハプニングはつきもの。途中で隆明のギターの弦が切れてしまったようで、急きょ英雄のギターを使って演奏を続ける。隆明のギターソロでは英雄が「俺のギター!!」と紹介する一幕も。次の曲が始まる際にはもう弦の張り替えが終わっているという、結果的にSTROKE RECORDSのチームワークまでも証明する時間となった。

そんなSTROKE RECORDSについて英雄は「世界で一番イケてるレーベルです」と、「レ」の部分を軽く巻き舌で発音しながら語ると、さらにこう続けた。

「俺にとっては家族であり仲間であり友達であり戦友であり。バンドだけの話じゃなく、お前のことも仲間だと、友達だと思ってる。だから一緒に歌いたいんだよ」

そして、まさにスーパームーンだったこの日に「俺たちのために用意された日だ!」と叫んで「スーパームーン」を披露。年に一度のレーベルナイトの夜がスーパームーンと重なり、同名の曲をもつアルコサイトがライブで演奏する。この日にしか味わえない、ミラクル。

最後を飾ったのは「猫みたい」という、彼らの最新曲。めちゃくちゃ聴きやすいメロディとなんとも可愛らしい歌詞がユニークで、今日初めて耳にしたのだが、もう好きになってしまった。

ドストレートなロックで勝負、と評したばかりだが、サビあたりで両手をグーにして顔の近くで手首を90度に曲げる、“ザ・猫”な仕草をして見せた英雄が実にキュートで。そのうえ自身のその行為に即照れてしまう姿がさらにキュートさを倍増させていた。ストレート中心の配球の中で、こんなスライダー投げられたらそりゃ簡単にやられてしまうというもの。見事なストライク。

《わたし猫みたい ほんと猫みたい ほんと猫みたいでごめんなさい》
《でもそんなわたしのこと 好きなんでしょ?》

サビのこの歌詞と覚えやすいメロディは、誰かがTikTokで振り付け動画でもアップしてくれればバズるんじゃないだろうかと思うくらいの破壊力だった。

「愛してあげるよ」以外はすべて2022年以降リリースの曲で固めたセットリストで、今のアルコサイトを見せつけるようなライブ。4年ぶりに観た彼らは確実にあの頃よりも成長しているように感じたし、対バンライブでアルコサイトがいてくれたらめちゃくちゃ頼りになりそう、と謎のブッカー目線で手ごたえを感じてしまう自分がいた。

アルコサイトは、次のバンドに繋げてくれるというより、イチから空気を作ってしまう、あるいは変えてしまう、そんなバンドだ。

セットリスト
1.人間失格
2.最後の恋
3.馬鹿みたい
4.愛してあげるよ
5.スーパームーン
6.オリオン
7.髪を切って
8.猫みたい

Rhythmic Toy World

Rhythmic Toy Worldのライブではおなじみ、BOOM BOOM SATELLITESの「Kick it Out」をSEにメンバーが登場すると、内田直孝(Vo/Gt)は「遊ぶ準備はできてるかCRAWL! しょっぱなからフルスロットルでいこうぜよろしく!」と挨拶し、その言葉通りオープニングから彼らのアンセムのひとつである「青と踊れ」でいきなりフロアをブチ上げていく。

長くバンドを続けていくと、初期に浸透した曲、ブレイクのきっかけになった曲から抜け出せず、10年、15年を経てもその曲が皆の知る、皆が望んでいる代表曲というパターンも多くあるだろう。そのカタチもまたバンドのスタイルでもあるし、逆に言えば何年も第一線を張れる楽曲というのも素晴らしい強度をもっている、と表現できる。

一方で、常に代表曲をアップデートしていく状態もまた、バンドとしての素晴らしいカタチのひとつだとも思うのだが、この「青と踊れ」は、「輝きだす」や「僕の声」といった一般的にリズミックといえばこれ!なラインアップに加わるだけでなく、ライブでの盛り上がり必至な曲へと育っているのではないだろうか。

そんな、美しい旋律と青春の汗と涙と笑顔が浮かんでしまう名曲に続いて披露されたのは、岸明平(Gt)が奏でるフックのあるギターリフも印象的な「JIGOKU」。生命のエネルギーがこれでもかと詰め込まれた「青と踊れ」の直後に「JIGOKU」ときた。ギャップが凄い組み合わせながら、佐藤ユウスケ(Dr)が刻む激しいビートと四つ打ちリズムについつい身体が揺れてしまう。

持ち時間の短いイベントだが、まだここで手綱を緩めるようなことはしない。3曲目は「とおりゃんせ」だ。須藤憲太郎(Ba)の濃厚なベースイントロが始まると、直孝は「お前らの声と手をくれよ!」と煽り、フロアはリズムに合わせてオイコールで応える。変化と緩急に富んだ構成がたまらない楽曲だが、サビの爆発力はリズミックの楽曲の中でもトップクラス。私が10歳若かったらモッシュしてるんじゃないか、というくらいアツい。

直孝が「1年に1回と言わず、12回やりたい」「でも、そうしたらお前ら飽きて来おへんやろ?」と言えば、佐藤が「他人のせいにするのやめなさい」と諫める。この体制になってからはおなじみともいえる、直孝にツッコミを入れる佐藤の図。

直孝は「コロナごときじゃ、うちのレーベルは潰せなかったね!」とSTROKE RECORDSへの絶対の自信と信頼を示しつつ「これから進んでいく俺たちを、すべてを持ってこの歌を」と告げて「CHAMPION ROAD」へ。

ポケモンカードゲームPVへの提供曲で、楽曲自体素晴らしく、初めて耳にしたときに「これは良い!」と感じた曲だ。ただ、ポケカはおろかポケモンすら通ってない世代の自分にとって、ポケカで沸く周囲についていけず、正直どこか距離を感じてしまう存在でもあり…。しかしライブで浴びてみてあらためて歌いだしからの直孝の歌声の凄さとメロディ、そしてバンドの演奏が放つ楽曲の魅力を感じることができた。楽曲に貼られたタグを一度切り離して、曲と歌と演奏そのものをストレートに受け取ることも重要なのだ。

「トリらしいライブ、そんなんどこまでいったってよそ行きよ!俺たちがやりにきたのは、兄弟と作るホームのライブ!」

直孝らしい言葉に続いて演奏されたのは「フレフレ」。フロアのシンガロングがさらにライブの勢いを加速させ、『STROKE NIGHT』はいよいよクライマックスへと突き進んでいく。

「今日はありがとう!みんな大好き!STROKEもずっと大好き!いこうぜ!」

いつもは聞き取りづらい須藤の絶叫も今夜は不思議としっかりキャッチ。須藤らしい飾らない言葉で愛を伝えるメッセージと共に、ラストは「僕の声」。『弱虫ペダル』主題歌という強力なタイアップにとどまらず、世界の羽生結弦が勝負曲として競技直前に聴いていたというとんでもないエピソードまで加わった、Rhythmic Toy Worldとリズミッカーにとって一生忘れられない曲だ。

曲から受け取った「がんばれ」のエールを、自身の演技を通じて他の誰かにも届けたいという想いと共に聴いていたと、先日放送のテレビ番組で語っていた羽生。Rhythmic Toy Worldからの「僕の声」に込められたメッセージを受け継いで、次の誰かへと繋いでいく。そんな彼の姿勢は、「僕の声」という楽曲にとって、これ以上ないほどの嬉しいプレゼントになったのではないだろうか。

ライブでも定番となっている曲だが、聴くたびに感じるものがあるし、きっとその時々の自分の置かれた環境や状況次第で感じ方も変わってくるのだと思う。どう聴こえてくるかで、自分の精神状態が測れる、そんな曲かもしれない。

本編が終わると、フロアからの「あそぼーや!」コールに応えてメンバー再登場。岸、そして英雄がなぜかステージで側転パフォーマンスするという謎の時間も挟みつつ、アンコール。

「アンコールというのは、そもそもやるかやらないかは俺たち次第。ライブ終わって手拍子したら出てくる、そんなもんじゃないんですよ!」と、まるでフォーマット化しているアンコールシステムについて物申しつつも「もう一度みんなに会いたいから出てきた、それだけです!」と、ツンからのデレでフロアを沸かすと「拳と声貸して!」と告げて「ライブハウス」をパフォーマンス。

今日という日に、絶対外せない一曲だろう。ライブバンドが作るライブハウスの曲はどれもめちゃくちゃ心に響く。音源で聴いても間違いないが、それを現場すなわちライブハウスで浴びた際の感動と言ったらもう。

曲を終えると「最後に俺たちの素晴らしき兄弟を紹介」と告げてbivouac、goomiey、かたこと、アルコサイト、そしてレーベル代表・長田竜治をステージに呼び込んだ。

レーベルメイトが揃ったステージで演奏する曲と言ったらもうこれしかない。レーベルであるSTROKE RECORDSと対の存在ともいえる、マネジメント「チームぶっちぎり」を指し示す楽曲「Team B」だ。

曲後半で《WOH WOH》と繰り返し叫ぶパートでは、英雄が飛び入りで《アルコサイト》と歌ったことでひとつの流れができた。この部分で各バンドの名前を歌っていく、というスタイルだ。

英雄が「アルコサイト」を、平山が「goomiey」を、という具合に各チームを代表する者たちが順番にマイクに向かって「かたこと」、「bivouac」、「STROKE」、そして「リズミック」とその名を歌っていくバトンリレー。これはもしかすると『STROKE NIGHT』恒例のパフォーマンスとなるかも!?と思うくらいの盛り上がりを見せ、実に華々しくRhythmic Toy Worldのライブは幕を閉じた。

今日は8月の終わりにSTROKE RECORDSというレーベル所属のバンドが集まる、年に一度のお祭りだ。チームの結束やレーベル内での絆を感じる瞬間の連発。そして仲間でありライバルでもあるアーティスト同士の真剣勝負なライブパフォーマンスを存分に堪能できて、大満足の夜だった。

今日もどこかで、決して大きくはないレーベルや事務所のアーティスト・スタッフが真剣にああでもない、こうでもないと悩みながらいい音楽を届けるべく活動を続けている。彼らが生み出す音楽やライブが、そしてそれらが表現されるライブハウスが、誰かにとってのホームになる。

コロナを経て数年ぶりにライブを観に訪れた渋谷CLUB CRAWLで、なじみのスタッフや友人たちの顔を見て、ああここは自分にとってホームな場所なんだなと実感した。見慣れたPA卓、いつものステージ、慣れ親しんだバーカウンター。人だけでなく、そこにあるものすべてに愛着が沸く、そんな場所を大事にしたいと思わせてくれるイベントだった。

セットリスト
1.青と踊れ
2.JIGOKU
3.とおりゃんせ
4. CHAMPION ROAD
5.フレフレ
6.僕の声
EN.
7.ライブハウス
8.Team B

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