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【ライブレポート】2020/12/12 Vo.松川ケイスケプロデュースリモートライブ『独想演奏会 命短し恋せよ言葉~紅、松川ノ独壇場~』

もともとは2019年10月に予定されていた「変現自在」発売記念ワンマンツアー 「独想演奏会」ヒューリックホール東京公演ですが、台風やコロナの影響で延期が重なり、とうとう中止になってしまいました。

このホールツアーは公演ごとに各メンバーをフィーチャーした内容になっており、東京公演の2DAYSは細川大介と松川ケイスケをフィーチャー予定。しかし両日とも中止ということで、今回オンラインでのライブ開催が実現しました。

今日はその2公演のうち、松川ケイスケフィーチャーの『独想演奏会 命短し恋せよ言葉~紅、松川ノ独壇場~』について簡単にレポートしてまいりたいと思います。形式としてはリモートライブ。ケイスケさんと真一さんは同じ場所でディスタンスを保ちつつ、他の3人はそれぞれ(おそらく)自宅からの参加となります。

開演時間を少しまわった頃、ケイスケさんを映す画面をベースに小窓も登場し、真一さんが現れます。黒の中に浮かぶ小さな灯り。最低限の照明とともに、右横からのアングルも新鮮なケイスケさんを眺めながらさっそく1曲目が始まりました。

今日のドレスコードは赤ということで、赤いフレームの眼鏡と蝶ネクタイが存在感を放つ真一さん。そんな彼のキーボードとコーラスを従えて、ケイスケさんが優しく丁寧に一つ一つの言葉をそっと吐き出すように歌う「檸檬」でライブは幕を開けました。

曲が終わると画面はガラリと切り替わり、引き続きベースとなるケイスケさんを正面に捉えつつ四隅に各メンバーが映る画面が配置されるスタイル。

「独想演奏会!」
「松川ノ独壇場」
「命短し恋せよ言葉へようこそ!」

「今宵はわたくし松川の独壇場」
「最後までおつきあいいただきます」
「どうぞよろしくお願いいたします!」
「行こうかみなさん!」

ケイスケさんの絶叫が響き渡ると2曲目「斜陽」へ。さきほどの黒い画面から一転して太陽を思わせるオレンジの光から始まり、青や黄色といったカラフルな照明が舞い踊る。

「行けるかい電波のみんな!」

そんな掛け声も入りながら、リモートといえど激しくライブは展開していきます。カメラはときおりケイスケさんのアップに切り替わる。ギターソロのタイミングで、画面上では右下に映ってソロを弾く大介さんに目線を送り、煽るケイスケさん。この形式で何度もライブを重ねているだけにこういった演出も上手ですね。

今日は赤のドレスコードということで各メンバーの「赤」を紹介しましょう。啓示さんは赤Tと赤ソックス、ケイスケさんは赤のタートルネック、重田さんは赤い柄シャツ、大介さんは赤いネイル、そして紅をひいているとのこと。ちょっと画面が暗くてわかりづらかったけど、どちらも大介さんには似合うなあ。

「あらためまして電波の前、画面の前のみなさま」
「LACCO TOWERですどうぞよろしく!」


KEMURIのふみおさんが言う「みなさんこんばんはKEMURIです!」
テナーのホリエが言う「俺たちストレイテナーっていいます」
リズミックのうっちーが言う「Rhythmic Toy Worldへようこそ!」
星野源が言う「こんばんはー!星野源でーす!」
と同じくらい、ケイスケさんの「LACCO TOWERですどうぞよろしく!」という挨拶が好き。「どうぞ」を強調するあの言い方がクセになります。

バンドならそれぞれに持っているであろう、ある種の名刺ともなっている挨拶フレーズ。いろいろ集めてみたら楽しそう。

話が逸れましたので戻しましょう。

MCでケイスケさんは、今日は“松川ノ独壇場”ということで、自分の好きなようにやらせてもらう、セトリも、どんなライブをやるかもすべて自分が決めたと話します。「他のメンバーは操り人形」という言葉も飛び出します。完全に主従関係が出来上がっているせいか、今日のライブはケイスケさんが他の4人の言動に対してポイントを与えるという仕組みになっており、各メンバー(啓示さんを除く)のケイスケさんへの露骨なごますりが蔓延するトークとなりました。

メンバーのことを好きなあだ名で呼ぶ、と宣言するとさっそく、いつもは「大ちゃん」と呼ぶ大介さんのことを「細川くん」と言ってみたり、真一さんのことを「ウォーズマン」と呼んでみたり。まさに王様の好き放題なライブとなってきました。

今日のライブは投げ銭で自分が見たいケイスケさんのアングルをプッシュできる仕組みとなっているというアナウンスも。毎回いろいろと工夫を加えてくるチームラッコです。

ここからスイッチを切り替えて
「生でできることはオンラインではできないことも多い」
「オンラインだからできることでみんなと楽しめればいいなと思う」

「普段のライブではやらないようなセットリストでお届けしようと思うので」
「どうか最後まで楽しんでいっていただけたらと」
という言葉を紡いで次の曲「六等星」へ。

静かにしっとりとした空気をまとったオープニングから熱唱のサビへとつながっていく流れが気持ちのいい構成。MCでの言葉通り、普段のライブではなかなか聴けない一曲です。スケール感たっぷりなギターサウンド。大介さんのソフトなタッピングも美しき哉。曲タイトルを踏まえて星空をイメージしたのか、青い照明に照らされるケイスケさん。アップでは映らないものの、各メンバーのプレイもしっかり堪能できる画面分割スタイルはオンラインならでは。

「ここで六等星やることないから新鮮」と大介さん。序盤から通常のLACCO TOWERによるライブとは明らかに違う流れにドキドキ感が増していきます。

リアルのライブが何度も流れてしまったので、せっかくなら今ここでしかできないことをやりたいんだと話すケイスケさん。ちなみに今日の服装も自由、ということで衣装ではなくほぼ私服なんだとか。

先日開催された大介さんプロデュースのライブではケイスケさんと大介さんのふたりきりで「永遠」を披露し大好評だったそう。

ということで今日もこのふたりでの演奏が行われるとのこと。啓示さんからユニット名を問われると「ゆでたまご」という名前を発表。現時点ではあくまで仮らしく、絶賛募集中らしいです。

「(今日のライブは)“恋せよ言葉”というタイトルなので」
「特に僕が好きな歌詞が入っている曲を選ばせてもらった」とケイスケさん。

大介さんが準備する間、オンラインライブの画面上には真一さんの操作により次の曲の、特にケイスケさんが好きな一節をピックアップした歌詞が表示されます。

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大介さんの準備ができたところで演奏スタート。曲はもちろん「橙」。画面はケイスケさんをメインに映し、左側に大介さんウィンドウ。音色豊かなアコースティックギターがここまでの流れを一変させます。このサウンドにより曲の持つ切なさがさらに増していく。一方ケイスケさんは抑えたファルセットを駆使することで艶やかさと悲しみを醸し出し、より歌の世界を引き立たせている。今日のライブならではの「橙」が画面いっぱいに広がっていました。


曲が終わると画面は再び5人編成に戻り、「茹で上がったぜ!」とそのユニット名にかけたコメントで盛り上げる啓示さん。コンビネーションが仕上がってますね。

ここでライブを観ている視聴者からのネットコメントを紹介します。LACCO TOWERのオンラインライブではおなじみの時間。大介さんも、観客の反応がわからないから毎回コメント見られるのはありがたいと話します。

ケイスケさんからテリーマンと呼ばれ、「先日子犬を助けたところ」と返す重田さん。「新幹線止めるやつね」とケイスケさんが反応すれば「ゆでたまごから離れろや!」とキレる啓示さん。この昭和生まれ男子なら誰もがわかるキン肉マンネタ、視聴者はどこまで理解できたでしょうか…。

「橙」はAメロを書いたときに、これはいい曲になると思ったんだそうです。そして次にやる2曲も同じく、とある部分の歌詞を書けたからこれはいい曲になる、と思った曲とのこと。

そんな話の流れから、再び5人編成に戻っての「切手」へ。ケイスケさんの歌声を中心にしながらも、4人の音がしっかりと味わえるバランスが良い。全5画面構成のオンライン、そしてアーカイブも観られる状況ゆえ余裕をもって鑑賞できるからこそ、各自の音やパフォーマンスをじっくり楽しめるのかもしれません。ケイスケさんがたまにする、眼鏡を抑えるしぐさがセクシーだ…。《私に縫い付ければ》で手の振りをつけるところ、ここにも彼らしさが出ています。アウトロのギターサウンドも染み入りますね…。

続く曲は「炭酸水」。歌謡曲テイスト溢れるオープニング、イントロのフレーズが秀逸かつ最高。真一さんとのユニットである松川ジェットでもにじむ、ケイスケさんの歌謡曲への愛をバンドで表現した一曲ともいえるかもしれません。歌謡メロディ×ロックサウンドのミックスが面白い。

曲が終わるとMCブロックに突入。視聴者からのコメントをチェックして、投げ銭の状況を踏まえカメラアングルを切り替えていく。さらには「眼鏡取ってください」というコメントに反応して眼鏡を外すケイスケさん。これもひとつの、生配信ならではの双方向なエンターテインメントです。

「こんなに楽しいのは松川さんの独壇場だからだと思います」と真一さんが言えば「これはごますりがすごいぞ、さすが和菓子屋」と大介さん。その直後、ケイスケさんのコメントに反応できなかった大介さんは、声が素敵で聞き入っちゃったという言い訳を発動。「今のこそごますりじゃないですか!」と反撃する真一さん。

これはもう完全に王様ケイスケによるポイント制度の弊害が顔を出してますね笑。


コントもほどほどに、話題は先ほどの演奏曲に移ります。

画面上に「切手」の歌詞の一部を表示しながらのトークです。

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歌詞に《ラストシーン》という言葉を使いたくてこれを書いたんだそうです。

「切手」の歌詞が大好きだという大介さんは、具体的な箇所として「口づけたのは…切手だった、みたいな?」と好きな割には適当なコメントで笑いを誘います。さすがの天然キャラ。バンド内でもいちばんの愛されキャラかもしれません。

続いては「炭酸水」の歌詞。

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《寂しくて悲しくて》

《死にたくはなくてややこしい》
この部分を書きたくて「炭酸水」を書いたと話すケイスケさん。

ここで天然大介さんが覚醒して質問を投げかけます。
「歌詞を書くとき、テーマを決めるより文章の一節を考えてから発展させることが多いってことですか?」

思わず「インタビュアーさんみたい笑」と笑うケイスケさんですが、LACCO TOWERの歌詞はそうやって作っているかもしれないと答えます。あるいはタイトルの漢字を決めてから歌詞を書く、といったやり方もしているそうです。

制作の裏側に関する貴重な話が聞けたところで、7曲目へ。ケイスケさんはもちろん、重田さんもすごい好きな曲とのことで、披露したのは「香」。これも普段のLACCO TOWERのライブではなかなか聴けない曲ではないでしょうか。高らかに歌うようなギターソロも炸裂。楽しそうに、というか気分が乗っていることが伝わってくる、啓示さんのベースも楽しい。アウトロはもはや絶唱といってもいいくらい素晴らしいギターでした。

「楽しんでます?ミスターパーフェクト」とケイスケさんによる新しい呼び名が飛び出すと「楽しんでます!」と答えたのは真一さんと啓示さん。パーフェクトを自認していることが発覚したふたり。

「こういう曲ばっかりのライブもなかなかないですけど、グリーンジャイアントは楽しんでますか?」との問いには即、重田さんが例のこもった声でリアクション。さすが昭和世代。

「オンラインでしかできないこと」をひとつのテーマに今日のライブを作っているということで、冒頭での松川ジェットもそうでしたがライブ終盤のこのタイミングでも再び、真一さんとふたりのユニットが登場します。

「僕が選んだ大好きな歌詞の曲」という紹介から、2曲の歌詞を画面表示。

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「幸福」の歌詞が映し出される中、「今、何が楽しいか何が正解かよくわからない時代を一緒に生きてますけど、凄い昔に作った曲が違う響き方をする」と語るケイスケさん。


続いては「桜桃」の歌詞を表示。

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「いろいろとデジタルを見るうえで気づくことも多いと思いますけど…」と最後は明確な言葉にはせず、それぞれの想像に委ねながら、演奏を再開します。

松川ジェット編成による「幸福」。今回は右横顔アングルでの配信です。ケイスケさんの向こうにひとつ明かりが灯っている。抑えた照明の中でのパフォーマンスは、より歌詞を聴かせる、響かせる演出ともいえるかもしれません。ライブの途中でカメラは右前からのアングルに切り替わります。間奏での壮大な真一さんピアノも美しく広がってゆく。

曲が終わって、しっとり浸る余韻をまさかのジングルが破壊する…!

チャチャチャン
チャチャチャン
チャチャチャンチャン
ヘイ!

松川ジェットではおなじみ、曲終了直後に放り込まれる真一さんによるキーボードジングルです…。

思わず「ごめん!やっちった!」と慌てる真一さん。「真ちゃん、ホントにやんないほうが良かったかもしんない」と話すケイスケさんの顔は笑っていたけど…この笑顔はマジで怖い…!反省会案件ですかね…。照明のタイミングがばっちりだったのは、スタッフさん的には想定内だったということでしょうか。

さあ気を取り直しての「桜桃」。切ないオープニングが印象的なこの曲へと繋ぐうえで、さきほどのジングルは確かに不要だったかもしれない…。真一さんの柔らかいコーラスが素晴らしいだけに余計に惜しい!マイクを持たない手を使っていろいろと歌詞を表現するケイスケさん。その右手だけでも、まるでアーティストのよう。

今度こそ曲の後味を感じられる…と思いながら聴いていたきれいなピアノの音色が表情を変え、やはり飛び出すジングル。

チャチャチャン
チャチャチャン
チャチャチャンチャン
ヘイ!

しかしそこはさすが熟練メンバーたち。ジングルのタイミングにカメラ目線で決めるケイスケさん、さらには重田さんのドラムも加わる。
「今のは重田が良かったかな。あれなかったら俺終わってたかもしれないから助かりました」という真一さんの言葉はきっと本心でしょう。

「普通のライブ中にLACCO TOWERもやって松ジェもやってゆでたまごもやって」と真一さんが触れていたように、レアな構成で届けられている今日のライブ。歌、言葉が主役ということで、音数を減らしての配信とのこと。重田さんとケイスケさんによるユニットも企画としてはあがっていたそうですが、今回はナシ。また別の機会にこのユニットでのライブが披露されることも楽しみにしたいと思います。

そろそろ終わりの時間、次で最後の曲という発言には素直に驚きました。もうそんなに時間が経っていたのか…という衝撃。時間の割に曲数がそこまで多くないのはトークも盛り上がるからですね。

ここで啓示さんからのナイスアシストが飛び出します。
「もしかして、これがラストってことは、今年ラストってことっすか?」
これを合図に、怒涛の告知が発表されました。

まずは
■LACCO TOWER年末恒例の「LTS132」開催決定

2日間で1位~20位を10曲ずつ演奏するそうです。
360度での配信ライブということで視聴者は自分の好きな角度で映像を楽しめるんだとか。
アルコサイトがやっていたようなスタイルかな。

さらに
■12月27日大忘年会トークライブ開催
■1月4日に新年会開催&ファンクラブフルリニューアル
という具合に年末年始に向けてニュースてんこ盛りです。

メンバーは絶賛レコーディング中だそうで、死ぬほど忙しいとのこと。何をしたらいいのか、何をしてはいけないのか…とモヤモヤしていた春に比べたら自体は大きく変化していることを感じます。

「逢えへんからできないことも多いし」
「逢えへんからできることもすごいあるから」

「僕の日と言ってますけど実際みんなにとってはみんなの日ですから」
「こういうふうに一個ずつ作っていければいいなと思っている次第でございます」

こんな言葉とともに、いよいよ最後の曲。

「ラストはうちのメンバーみんな大好きなこの曲を」という紹介を挟んで、ラスト「悪人」を演奏。寒色と暖色が絡み合った照明が画面いっぱいに煌めく。ケイスケさんも今日イチのアクションを交え、全身を使って歌います。バラードやミディアムテンポのしっとり曲が多かったセットリストの中で、最後は激しい真っ黒曲で〆てくる。今日のライブの中では「斜陽」以来ともいえる、貴重な重田さんの激しいドラミングも堪能。

歌が中心なのはもちろんですが、それでも随所に各メンバーの見どころがあふれていたリモートライブでした。

「ありがとう!届いたか電波の前のみんな!」
「がんばるぞ、まだまだやるぞ!」

ある種の決意のような熱い思いを感じさせるケイスケさんの言葉を受け取り、『独想演奏会 命短し恋せよ言葉~紅、松川ノ独壇場~』は終演となりました。

延期が続いて開催できなかった2019年からの宿題を2020年内にキッチリと形にして、LTSで〆て新たな一年へと歩みを進める。LACCO TOWERのスケジュール的にもキレイに着地した感があります。

2021年のライブシーンがどうなっているかはまだ誰もわかりません。オンラインによるクリエイティビティあふれる配信ライブなのか、あるいはライブハウスでの、腹の底に響く爆音まみれのパフォーマンスが戻ってくるのか…いずれにしても、ラッコらしい企画を引っ提げての今後の活動を楽しみにしています。


セットリスト
01.檸檬
02.斜陽
03.六等星
04.橙
05.切手
06.炭酸水
07.香
08.幸福
09.桜桃
10.悪人


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