見出し画像

【ライブレポート】2021/10/21 of BLUE LAB vol.3 by HOT STUFF

時短営業解除間近の渋谷で開催される、気鋭の3組による濃厚なライブを体感してきた。HOT STUFF企画による今夜のスリーマンライブには、MO MOMA、illiomote、そしてMonthly Mu & New Caledoniaが出演する。

個人的にはilliomoteのみ、過去に2回ライブを観たことがあるが、他の2組は今日が初めてのライブ観賞となる。それぞれ異なる魅力を持つアーティストたちの競演を振り返ってみたい。


■MO MOMA

元LILI LIMITの3人に高橋尚吾(Dr/Sampler)を加えて結成された男女4人組バンド。フロントには白一色のシンプルな衣装を身にまとった志水美日(Vo/Key)と黒瀬莉世(Vo/Ba)、後列に土器大洋(Gt/Ch)と高橋が並ぶ構成となっている。

電子と生のドラムを使い分け、どこか無機質でデジタルなサウンドで組み立てたり、かと思えば肉体的な音を放ったりと、曲によって違う表情を届ける4人。いわゆるシューゲイザーやドリームポップと呼ばれるジャンルに近い音楽を中心にしつつ、ジャンルの枠を越え、幻想的な世界を作り上げていく。

スクリーン後方に映し出される、抽象的な映像も彼らの世界観の構築において重要なポジションを担っていたように感じた。

ある曲では、スクリーンに映る火の映像に合わせ、場内暗転で火をフィーチャーしつつ徐々にオレンジの照明で4人を照らしていく、といった手法も展開。さらには後方のライトをフロアに向けることで4人をシルエットにする演出など、光を使ったライブの見せ方に対するこだわりを感じる場面もいくつかあった。

土器はパッドのような機材を使い、黒瀬も小さいキーボードを駆使するなど、メンバーそれぞれマルチタスクプレイヤーとしてパフォーマンスすることで4人編成以上の音のバリエーションを生み出しており、1曲ごとに様々な音色を楽しむことができた。

黒瀬の歪んだベース、そして空気が震えるキーボードの音は特に強く印象に残っている。

また、清水と黒瀬による二人のハーモニーも美しく、強く主張するタイプのボーカルではないが、だからこそよりトラックと一体化してひとつのサウンドとしてのまとまりを感じさせていたように思う。

自らのバンド名と、「最後の曲です」「ありがとうございました」くらいしか喋らない、歌以外寡黙なライブ。キャラクターに頼らず、鳴らす音楽で勝負する、そんなストロングスタイルもカッコいいMO MOMAだった。

■illiomote

今日の一番の目当ては彼女たち。池袋発ハッピーポップユニット。NHK深夜の音楽番組「シブヤノオト」やフジテレビ「Love Music」でもライブを披露するなど、メディア露出も目立ってきた、今勢いのあるふたりだ。

転換中にセッティングしている様も見ているだけで楽しくなってくる、自由を体現しているような彼女たち。

SEが流れ、ダッシュでステージに登場して転びかけるMAIYA。スカート&ルーズソックスというスタイルだが、「寒くなると履けなくなるから」という理由でこのタイミングでの着用とのこと。しかしライブ中やたらとルーズソックスにシールドに絡むため「格好ミスった」とぼやく場面もあった。

ライブは「Sundayyyy」で幕を開け、たて続けに「In Your徒然」「Everybody Nice Guys」とキラーチューンを披露して会場を盛り上げる。フロアはライブ中の発声NGということもあり、歓声はないもののリズムに合わせて体を揺らしたり、頭を縦に振ったりと観客は思い思いに楽しんでいる様子。

ジェスチャーで楽しんでいることを伝えた観客がいたのか、思い切り笑顔になって指を交差させる、いわゆる“きゅん”のハートを作り、リアクションするYOCOの姿も。

過去のライブから一貫して、制限があるなかでも自分たちなりのやり方でライブを楽しんでほしいと伝えていたYOCOにとって、ルールを守りつつ存分にライブをエンジョイする観客の存在はきっと嬉しいに違いない。

次のブロックでYOCOはハンドマイクからギターにチェンジ。ここでは切なさたっぷりなファルセットがたまらない「ブラナ#15」をはじめ、日本語詞でしっとりと歌い上げる「きみにうたう」「夕霞団地」などを披露する。聴く者の心に刺さる歌声と、その歌に寄り添うMAIYAのギタープレイのコンビネーションは抜群だ。

続いてのブロックでは再びハンドマイクに戻り、新曲や「Melancholy」「What is??」を演奏する。自分の中で、出会った頃のilliomoteは「What is??」のユニット、という印象だった。しかし曲を聴きこんだりライブに通ったり(といってもまだ今日で3回目だが)するうち、「What is??」のユニットという印象はだいぶ薄れた。この曲以外にもたくさん魅力あふれる曲があることを知ってしまったからだ。アルバムもEPも、リード曲しかないと思わせるほど素晴らしいラインアップなので、まだ聴いたことがない方がいたらぜひ通して聴いてみてほしい。

…illiomoteをプッシュしていたらもう最後のブロックに。ここで最新リリース曲「No Kidding!」が飛び出す。ライブ中、しきりに脱げかける靴を気にするそぶりを見せていたMAIYAだったが、ここでついに靴を脱ぎ棄て、ルーズソックスでステージに立ってギタープレイを炸裂させる。不自由さから解放されたかのように生き生きとギターを弾くMAIYAはとても楽しそうだ。

ラストナンバーは「It's gonna be you」。ここでのMAIYAの刻むギターが最高にカッコいいことは過去のレポートでもお伝えしているのだが、やはり今日もめちゃくちゃカッコよかったことを記しておこう。

彼女のギターはソロだけでなく、歌の隣で鳴らす音にも色気があり、強烈な存在感がある。そんなギターに負けることなく響くYOCOの歌声も強弱のメリハリもうまく引き込まれてしまう。

何より音楽を、ライブを心から楽しんでいるふたりの姿が彼女たちのステージを最高のものにしている気がするのだ。

アウトロを途中でぶったぎったMAIYAにびっくりしながらも笑っていたYOCO。幼馴染のふたりが生み出すハッピーなグルーブはまさに最強だ。


■Monthly Mu & New Caledonia

本日のトリを飾るのはMonthly Mu & New Caledonia。門口夢大(Vo)、鈴木龍行(Gt)、若林達人(Gt)、小笹龍華(Ba)、武亮介(Dr)の5人組バンドだ。

illiomote同様、こちらも転換中から目が離せない。特に鈴木の、座りながらのギターチューニングは独特でずっと注視してしまった。

人気曲「U&F」の印象から、お洒落サウンドバンドというイメージを持っていたが、ライブが始まると、彼らが単なる“雰囲気お洒落バンド”ではないということがよくわかった。

とにかく個々のメンバースキルが抜群に高い。真っ先に耳を奪われるのは若林の卓越したギタープレイだ。ハイセンスさをにじませるそのテクニックと音作り。単品でもずっと聴いていたくなる。

そして武のドラミング。時に激しく、時に高速で、そして常にグルーヴィ。鮮やかすぎるスティックさばきに耳だけでなく目まで奪われてしまう。ライブ後半では武によるラップパフォーマンスも飛び出した。ドラマーが席を立ってラップしながらステージ前に進出する場面は衝撃かつ新鮮。ジャンルや枠組に捉われないという彼らのスタイルを体現するかのようなシーンだった。

また、基本後列でバンドを下支えする小笹のベースも、何度かフロントに進出して魅せるプレイを披露する。派手なパフォーマンスの裏で、Monthly Mu & New Caledoniaのイカした音楽を支えているのは若林、武、そして小笹の音だ。

そして注目の鈴木。転換中の座りスタイルがユニークでライブ前から気になる存在だったが、ライブが始まればますますその行動に注目せざるを得なかった。激しいアクションはもちろん、ライブ中でも座ってのプレイもあり、さらに通常は足で操作するエフェクターを手で操る場面も多々あった。それはそうだ、座ってギターを弾く瞬間が何度もあったのだから。

ステージ脇に置いたハイネケンをときおりぐびっと飲みながら、自由にプレイする鈴木はとてもライブ映えする存在で、いわゆる華のある男だった。

最後に、バンドの根幹をなすフロントマン、門口。スキルフルな楽器隊に負けない、セクシーと熱いスピリットが同居するボーカルは素晴らしく、沈黙のフロアからも門口の歌に呼応して生まれた熱気はじゅうぶん伝わってきた。

初めてWWWを訪れたのはMOROHAときのこ帝国のライブだったという門口は、そんな自分がここに立っていることへの感慨も吐露しつつ、コロナ禍もあって分断があるこの時代に、心で繋がれるのが音楽なんだと語った。


《miracle》の連呼も印象的な「ISSUE」や超絶お洒落曲「U&F」で始まり、一気に観客の心を掴んだ彼らが50分ライブのラストに配したのは「jamaica」。

最後に披露するこの曲について門口は、これからどうなるんだろうと人生について悩んでいたという20歳の頃に、ジャマイカで作った曲なんだと紹介する。

そして「今日この曲をやるためにここに来ました!」と力強く告げると、「jamaica」を披露したのだが…まさにこの一言を証明するかのように、これまでのパフォーマンスからさらに一段ギアを上げ、とんでもない熱量であふれるステージが繰り広げられた。

バンドに対する大した知識も持たず、「U&F」しか知らないまま、カッコいいこの曲を一度生で味わってみたいな、程度の動機で彼らのライブを観ていた自分が、気づけば涙を流していた。何度も歌われる《夏が終わるよ》という、20歳の若者がこの先の人生に思い悩む中で書いた歌詞が切なくも激しく、WWWに轟く。

最後の一滴まで振り絞るように歌いきった門口の姿が目に焼き付いている。

音源での印象(と言っても一曲だったが)を軽く飛び越えて、自分の胸にその存在を刻み込んできたMonthly Mu & New Caledonia。お洒落な仮面の下にめちゃくちゃ熱いスピリットを持つカッコいいロックバンドだ。

今日出演した3組はそれぞれにしっかりとした個性を持ち、音楽性や演出、パフォーマンスなど聴きどころや見どころもたっぷりで充実のライブとなった。彼ら、彼女らの音楽がもっともっとたくさんの人に届いてほしい。この3組はそういう音楽を生み出していると思う。

各アーティストの曲は、サブスクにて配信もされているので、ぜひチェックを!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?