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【ライブレポート】2022/8/7 ラブリーサマーちゃん LOVELY SUMMER SONIC 2022@渋谷 CLUB QUATTRO

ラブリーサマーちゃんのワンマンライブ『LOVELY SUMMER SONIC 2022』に行ってきた。ライブハウス内にあるスクリーンには、サマソニを模したビジュアルが映し出され、ヘッドライナーとしてラブリーサマーちゃんの名前が。ひとりサマソニ、という世界観だろうか。

ラブリーサマーちゃんにとって夏の風物詩ともいえるイベント…らしいのだが、何せ彼女のライブ初体験ということもあっていろいろ新鮮。2020年リリースのアルバム『THE THIRD SUMMER OF LOVE』で彼女の音楽に初めて触れてひと聴き惚れして早2年弱。ようやくライブを観ることができた。

強く印象に残ったMCやステージでの振る舞いなどを中心に、メモと記憶をたどりつつ貴重な初体験ライブを振り返ってみよう。

ぎっしり埋まった渋谷 CLUB QUATTROには、20代から30代を中心に男女半々くらいのファンが集まっていた。

開演予定時刻を少し過ぎた頃、巨大クラッカーを手に、ラブリーサマーちゃんとバンドメンバーたちが登場。銀テならぬ金テ(?)を発射させ、ライブスタート。

オープニングから『THE THIRD SUMMER OF LOVE』収録の「AH!」「More Light」「心ない人」と立て続けに演奏し、ビギナーファンである自分の心は鷲掴みされてしまう。

今日のライブ、声出しはNGだがその代わりにハミングをしてはどうかと提案してからの「Part-Time Robot」では、さすがにバンドサウンドにかき消されてハミングはラブサマちゃんに届いていなかったようだ。しかし「全然聞こえなかった」と言いつつ、ハミングしてくれた事実が嬉しいとも話していた。そんなやり取りを挟みながら、6曲目「魚の目シンパシー」までを一気に駆け抜けていく。

音源よりもパキっとした歌声で、時折右足を蹴り上げる仕草をしながらアクティブに歌う姿は、ステージ映え抜群。

リードギターを務める馬場庫太郎を筆頭に、バンドメンバーが生み出す楽曲の雰囲気も気持ちよく、歌声、楽曲、演奏、ビジュアル、パフォーマンスと5つの魅力それぞれが絡み合い、序盤から最高のムードで走り出した『ラブサマソニ2022』。

「魚の目シンパシー」について、「お父さんいる?」と会場に来ていた父親に呼びかけながら、「この曲作ったとき、お父さんが『うちの娘は才能があるかも』と思ったらしい」というエピソードを披露。

MC中に暑すぎて「照明さん頑張りすぎ?」と言えばすぐスタッフが照明を暗くしてしまい、メンバーが慌てる一幕も。また、今日はラブサマソニ、つまりサマソニということで、「フェスっぽい曲やるわー」と告げ、「Underworldの『Born Slippy』やるわ!」「くるりの『ワンダーフォーゲル』やるわ」と、まるで横山健のような言い回しで次々とタイトルを言いながら、「FLY FLY FLY」を演奏する。確かにBorn Slippy味のある浮遊感を帯びたイントロ。そして曲中にはワンダーフォーゲル味のあるリズムもちらり。MCからの流れも含めて遊び心たっぷりなライブだ。

「海を見に行こう」を歌った際には、「なんで夏は海に行くのか?」と疑問を呈しつつ、「涼しいから?」「冬だと寒いから?」と自ら答えを見いだす。そして、会場にいる観客に「今年海行った人?」と問いかけ、パラパラと手が挙がると羨ましそうな態度を取っていたが、その中に友人がいたようで「普通に誘ってほしいわ」と不満たっぷりにコメントしていた。

ラブサマちゃん自身がギターをかき鳴らしながら歌う楽曲もあり、またキーボードを弾きながらの歌唱曲も飛び出すなど、多芸ぶりも発揮。演奏前にキーボードの設定をイジってしまったのか、一瞬慌てる…こともなくぼやきながら設定を戻す場面もあったが、そんな状況をつぶさに実況しながらライブに臨む彼女は、とても自由に今日のステージを楽しんでいるように見えた。

ライブ中突然口紅を塗りだし、場内をざわつかせると「声を乗せるためマイクにかぶりつくのでライブ中に口紅が落ちてしまう」ことが理由だと話すラブサマちゃん。この後演奏されるしっとりしたセンチメンタルなナンバーへの雰囲気作りなどお構いなしだが、お膳立てなどなくともびくともしない強度が彼女の楽曲にはあった。

また、こんなシーンもあった。キーボード曲を終え、次の曲へと突入する際のこと。歌いだしのタイミングまで大きなペットボトルの水を飲みながら、ギリギリ歌に入る…というところで、アーム式のスタンドに設置されていたマイクをはぎ取って歌い始める荒業を見せつける。

2022年2月~3月に開催したツアーに来た人はいるかとフロアに訊ねると、たくさんの手が挙がり、喜ぶラブサマちゃん。さらに、今日初めてライブを観に来た人はいるかと問うと、再びたくさんの手が。これに大興奮する彼女は「レコード屋さんてデビュー1~2年の新人はプッシュしてくれるけど…。7年やっててもこんなに初めてのお客さんが来てくれるってすごい」と大喜びだ。

また、クアトロ名物の柱側にいた観客に「ごめんね~! 観づらいでしょ? いっぱいこっち来るね!」と声をかけ、用意していた大量のグミを柱側の観客に向かって投げ込んでいく。狙っているファンに向けて必死に投げるもなかなか届かなかったり、何度も同じファンにグミをぶつけてしまって謝ったり。さらには、馴染みのファンを見つけたようで「刺青入れたんだ? いいね!」と話しかけるなど、ステージとフロアの垣根を感じさせないコミュニケーションが続く。

ちなみに、ライブ終盤でもグミを大量放出した際には、同じエリアに集中して投げ込まれた様子を見たギターの奥村大が「たくさん持ってる人は周りの人に分けてあげてね」と優しいアナウンスをしていた。

ライブ後半戦では、20年前のピチピチロックギャルをカバーするとアナウンス。いったい誰のカバーだ?と待ち構えていると、ブリトニースピアーズ→t.A.T.u.Oと2度、フェイクとなるアーティスト名を出しつつ、3度目の正直でアヴリル・ラヴィーンの名を告げる。いや、t.A.T.u.の名前出すセンス、アラフォーじゃないかと思ったりもしたが、バキバキのギターサウンドで「Sk8er Boi」を披露し、フロアを圧倒。緩くて楽しいトークや自由な振る舞いとゴリゴリのバンドサウンド&音源より強い歌声のギャップがスゴイ。

続いては新曲を2曲続けて披露。ロック色の強い「普請中」とポップ色の強い「OK,Shandylane」。演奏後に、どちらのほうが気に入ったか観客に拍手で答えさせるなど、楽曲に対する自信が垣間見える場面もあった。

また、マイクから離れ、何か作業しながら喋りはじめたラブサマちゃん。この状態でもフロア後方まで聞こえていることを確認すると、子供のころ父親に連れられて行った某アーティストのさいたまスーパーアリーナでのコンサートでのエピソードを話す。そのアーティストは「生の声を届けたい」とマイクオフで歌ったが、たまアリの後方にいた自分にもちゃんと歌声が届いてびっくりしたという。と同時に「生の声届けたいって思わないけどね! マイク通してでいいじゃん」とバッサリ言い放ち場内の笑いを誘っていた。

本編も残すところあと3曲、というところでメンバー紹介。各ミュージシャンについて、それぞれの所属バンド名と共に丁寧に紹介するラブサマちゃんが印象的だ。

本編が終わり、ステージからはける際には「着替えてくるから本気で(手を)叩かなくていいよ!」とファンへの気遣いもみせていた。

しばらくして再登場したメンバーたち。ライブ序盤で「暑くて脱ぎたい」と言っていた黒衣装からキュートなグッズTに着替えたラブサマちゃんは、ここでも爽やかな新曲「whydontyou」をひとつ披露し、インターバルで落ち着いた空気を再び盛り上げていく。

最後の曲を演奏する前に、グッズ紹介ブロックへ。定番のタオルやTシャツ、そしてピンバッチをプレゼンしていると、最前近くにいた観客が持つサコッシュに目が留まり、その観客から借りてステージにて手に持ちながら解説が始まった。そのサコッシュにはたくさんのラブサマアイテムが付けられており、「かわいい!」を連呼するラブサマちゃん。このサコッシュはフリーのとき、これはビクターのときの…とひとつずつ思い出にも触れながら、今回発売のピンバッチを3種類付けている点についても「単体じゃなく3つあるほうがかわいい!」とべた褒めし、大量購買を促していた。

『ラブサマソニ』最後を飾る「LSC2000」では、ライブ序盤でも提唱していたハミング作戦再び。もともとライブで観客にシンガロングしてもらうつもりで作った曲だったが、直後にコロナ禍となってしまい、理想のかたちが実現できていないとのこと。そこで今回、アウトロをハミングしながら手を振ってほしいとファンにお願いし、リハーサルとして試しにやってみたところ、その美しい景色にこらえきれず涙を流すラブサマちゃん。

演奏前に一度感情がピークに達してしまうも、そこはプロフェッショナル。本番では見事な歌とパフォーマンスで観客を魅了し、観客もこれに応えて精一杯のハミングとワイプで共に楽曲を盛り上げて、最高の締めくくりでもって『 LOVELY SUMMER SONIC 2022』はフィナーレを迎えた。

アンコールでは楽しいMCだけでなく、いろんな政治信条を持つ人がいることは承知の上で、と前置きしながら、ミャンマーで拘束されてしまったラブサマちゃんの友人、久保田徹さんについて現状を知ってもらい、協力をお願いするも場面もあった。

振り返ると、会場にいる父親や友人、馴染みのファンなども対象にしながら展開するトークがたくさんあった。こういうケースでは、ともすれば「身内ノリ」として、近しい人は盛り上がっても自分のような初めてライブに来たファンにとって気持ちが冷めかねない状況でもある。しかし彼女の場合は1mmもそんな空気にはならなかったし実際自分もネガティブな感じは全く受けなかった。それは、トークの話題や話しかけた相手が誰であろうが、根本には、ここにいるすべての観客に対して分け隔てなく注ぐ感情があることを、ひとりひとりが感じ取っていたからではないかと思う。

とにかく、ラブリーサマーちゃんからファンに向けられた愛が、ダダ漏れしていたのだ。いや、ファンだけではない。ライブ終了後のインスタでは、バンドメンバーたちはもちろん、照明や音響、ヘアメイクにマネージャーなどライブスタッフたちの名前も丁寧に記した投稿をアップしていた。

ラブリーサマーちゃんは、周囲にいるすべての人たちに愛とリスペクトをもって接していることが伝わってくる。誰も疎外感を感じることなく楽しめる、HAPPYに溢れたライブだった。

バンドメンバー
奥村大(Gt/wash?)
馬場庫太郎(Gt/NENGU)
右田眞(Ba/nenem、ayutthaya)
吉澤響(Dr/セカイイチ)

セットリスト
01.AH!
02.More Light
03.心ない人
04.どうしたいの?
05.Part-Time Robot
06.魚の目シンパシー
07.FLY FLY FLY
08.ファミリア
09.海を見に行こう
10.ルミネセンス
11.アトレーユ
12.豆台風
13.Sk8er Boi (アヴリル・ラヴィーン)
14.普請中(新曲)
15.OK,Shandylane(新曲)
16.あなたは煙草 私はシャボン
17.青い瞬きの途中で
18.僕らなら
EN.
19.whydontyou(新曲)
20.ヒーローズをうたって
21.LSC2000

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