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【ライブレポート】2023/9/27 「あの子の居場所」リリースイベント 東京編@下北沢MOSAiC

レトロマイガール!!のレコ発イベント東京編にお邪魔してきた。『TOKYO CALLING』でスタッフとして現場に立ち会ってはいたものの、純粋に客としてライブを観るのは実は初めて。

大好き板歯目、そしてこちらも初めましてな梨炭酸と興味津々なスリーマンを簡単に振り返ってみよう。


梨炭酸

梨炭酸(pear soda)は、日本のインディーポップバンド。2022年4月より東京で本格的に活動を開始。純粋さのあるツインボーカルや、瑞々しく、かつノスタルジーを感じさせるサウンドが特徴。

梨炭酸 OFFICIAL SITE(https://pearsoda.info/about.html)より引用

キャリア1年ほどの爽やかさ漂うスリーピース。岸田かなえ(Vo/Gt)の、触れたら壊れそうな、繊細で可愛らしい歌声が特徴的だ。

一方で

《お金があったら お金があったら》
《今頃バンドをやっていたかな》

という歌詞が妙に胸に残る、その名も「お金があったら」は、こんなはずじゃなかったと、日々の苦しみを歌っている。最初にバンドから受けた印象とは異なる楽曲に驚きながら、俄然興味がわいてきた。

ピュア、そして素朴さが大きな魅力かなと感じながらも、しっかりと主張するギターリフや、思いのほか激しく暴れるようなバウンドサウンドが耳を刺激してくれる。そんな状況下でもまったく埋もれない岸田の歌声も良い。

MCではその素朴さを存分に発揮してほっこり空間を演出していたが、演奏が始まればまた梨炭酸のバンドとしての面白さや楽しさ、そして意外と孤独や闇を歌うその世界観にやられてしまう。なんとも不思議なバンドだ。

ラストを飾った「グレミカ」では、入りのタイミングでトラブルが発生してしまう。最初のドラムカウントとやり直しのカウントでは微妙にテンポが異なり、やり直しバージョンのほうが速く感じたが、果たして本来のリズムはどちらが正解だったのだろう…。

そんなハプニングも含めて、とにかくユニークで印象に残る梨炭酸だった。

板歯目

つい先月も渋谷WWWでワンマンを観たばかりの板歯目。先ほど観た梨炭酸のテイストとレトマイの音楽性からすると、ここに板歯目が組み込まれているのはなかなかに異物感あるなと感じるが、板歯目にとって「異物感」こそが真骨頂では、とも思ってしまう。

とにかく強い個性と主張、とてつもない破壊力をもつその演奏など、規格の外でうごめくモンスターな3人なのだ。

1曲目「SPANKY ALIEN」の最初の音からもう笑っちゃうくらいエグいバカテク。ゆーへー(Ba)の超絶五弦ベースが唸る。庵原大和(Dr)の爆裂ドラムが轟く。千乂詞音(Vo)の轟音ボーカルが響く。

決してスマートではなく、泥臭くもオーバーヒート気味に全身全霊でエネルギーの残量を目の前の音楽に惜しげもなく注いでいくスタイルには、ただただ圧倒されるばかりだし、それでいてとんでもなく華があるのだ。

千乂の鼓膜も心も震わす歌声、大和の卓越したリズムを叩き出すドラム、ゆーへーの、圧倒的色気が宿るベース音とビジュアル。「華」にもいろいろあると気づかせてくれる3人。

ポップでキャッチー、という表現からは縁遠いともいえる彼女たちの楽曲のなかでも比較的初見さんにも受け入れられやすいと思われる「dingdong jungle」でさえ、息を飲んで身動き取れなくなるような感覚を味わう。

爬虫類系統の名を冠しつつも獰猛な野獣のように暴れまわる様は痛快だ。2000年代生まれと、伸びしろしかないのが、末恐ろしい。

《雪だるま食べて腹壊す》《ah旨旨旨》という強烈な歌詞、軽快なギターイントロ、そしてド迫力のドラミングがカッコいい「雪だるま」。世界的名曲へのオマージュも楽しい「Ball & Cube with Vegetable」。その名を口にするとフロアから歓声が上がる「ラブソングはいらない」「沈む!」など、キャリア数年にして個性溢れる名曲の数々を抱え、ガンガン披露していく。

向かうところ敵なし状態のなかで、MCになるとそのモンスターぶりは影を潜め、「地獄と地獄」で歌っているような陰キャぶりを発揮する可愛らしさがまた、別の無敵感を呼び起こす。

「早くレトマイが観たいから終わります」とぶっきらぼうに語りつつ、どこか愛嬌がこぼれる千乂の、唯一無二なカリスマ性も感じさせる、ザ・板歯目の強度抜群なライブだった。

セットリスト
1.SPANKY ALIEN
2.ちっちゃいカマキリ
3.dingdong jungle
4.オルゴール
5.雪だるま
6.Ball & Cube with Vegetable
7.ラブソングはいらない
8.沈む!
9.地獄と地獄

レトロマイガール!!

大阪北摂発のスリーピース。奇しくも(?)、今日の出演者は全バンド女性ボーカルのスリーピースバンドだ。

花菜(Vo/Gt)、あやき(Ba)、ひらおか(Dr)の3人がステージに登場すると、1曲目「バンジー!」でライブスタート。疾走感溢れるビートに乗って花菜のストレートで綺麗な歌声が満員の下北沢MOSAiCへと降り注ぐ。

スリーピースバンドは、素人な自分の耳でもベースの音を拾いやすいので、跳ねるようなあやきのベースも心地よく飛び込んでくる。

“指”をモチーフにうまくいかなかった恋を歌う「never」、2人だけの楽園に登場する“誰か”のアイテムが表す悲しみの描写が秀逸な「逃避行」など、様々な切り口で恋や愛を描く歌詞の深みもまたレトマイの強さ。特に「逃避行」は自分がレトマイと出会った曲でもあるので、ようやくしっかりと味わうことができて感無量だ。

東京では、サーキットで2回出演経験はあるものの、いわゆる対バンライブとしては初出演となるのだそう。今日のメンツはそれぞれ音楽性は異なりつつも、彼女たちが好きな音楽を皆と共有したい、ということでオファーしたとのこと。

そんなMCを挟んで「映画で会いましょう」「my hobbies」と、映画やゲームを歌詞に入れ込みながら男女の機微を歌う楽曲を披露する。さらには「カトレア」、そして新譜『あの子の居場所』収録の「ふたり」を演奏。丁寧に音を紡ぎ、じっくりと歌い上げる様にフロアも静かに聴き入っていた。

ライブ後半には、あやきのホイッスルを合図に、ライブの主催としてゲストへのリスペクトを込めたコピータイムも。板歯目の「dingdong jungle」、さらに梨炭酸の「グレミカ」を演奏。「dingdong jungle」では、千乂特有の巻き舌や放り投げるような歌い方をしっかりコピーし、見事なクオリティ。また梨炭酸「グレミカ」でも、花菜らしさと岸田らしさを融合したような歌唱が素晴らしいコピーだった。

自分たちの曲ではない分、いつもと勝手が違うからか「マジで一番緊張する」と語る花菜。もしかしたら今日もっともプレッシャーを感じる場面だったのかもしれない。

大きなヤマ場を越えて、あとはひたすら楽しむだけ。続く「君と夕焼け」では今日唯一の撮影OKタイム発動で、オーディエンスもそれぞれにスマホを掲げて動画・写真撮影しながらライブを楽しんでいた。

本日11曲目となる「グッドマイマイタウン」を最後に、3人はライブを終えてステージから退場。もちろん、まだまだ欲しがるフロアからはアンコールを求める手拍子が沸き起こる。

これに応えて真っ先に再登場したのは、ひらおかだ。「レトロマイガール!!のお客さん、前のふたりが人気だから、みんな可愛い女の子観に来るじゃないですか。なのに男が出てくるってやつをやってるんですけど笑」と観客の期待(?)を裏切って男子が出てくるという、レトマイのアンコール定番ネタでひと笑い獲得したのち、残りのメンバーもステージに。

花菜は「レトロマイガール!!のお客さんあったかすぎ」ととても嬉しそうだ。その言葉通り、今日のフロアには終始アットホームな空気が充満していた。大阪のバンドだが、まるでホームグラウンドのよう。

ライブや物販など、ひととおりの告知も終えて、アンコールでラスト2曲、曲の途中でテンポが上がるドラマチックな展開にドキドキする「それだけで」と、パンクロックテイストな1分曲「焦点を合わせて」で颯爽と駆け抜けて、レトマイのレコ発ライブ東京編は幕を閉じた。

東京のイベントライブ初見参とは思えないほどたくさんの手が上がる盛り上がりっぷり。また、物語性のある歌詞にライブ中、歌の世界へと引き込まれる瞬間もあった。

記念すべき東京初企画、存分に楽しませてもらった。今後のさらなる飛躍に期待しかない!

セットリスト
01.バンジー!
02.never
03.逃避行
04.映画で会いましょう
05.my hobbies
06.カトレア
07.ふたり
08.dingdong jungle(板歯目コピー)
09.グレミカ(梨炭酸コピー)
10.君と夕焼け
11.グッドマイマイタウン
EN.
12.それだけで
13.焦点を合わせて

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