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【ライブレポート】2024/5/11 ナギサワカリン presents「young buds,never have time Vol.1」@池袋Adm

ナギサワカリン主催のライブイベントに行ってきた。会場は、池袋Adm。バックドロップシンデレラのメンバーが2024年よりオーナーを務めるライブハウスだ。(ちなみにこれまでは店長を務めていた)

今回、『young buds,never have time』は2部制となっており、昼公演となる「Vol.1」はツーマンで、ゲストに広瀬彩海(ex.こぶしファクトリー)を迎えて開催。夜公演の「Vol.2」はバンド編成でのライブとなる。

今回私は「Vol.1」に参加。強い日差しが降り注ぎ、多くの人たちで賑わう土曜・池袋の地下。地上とは対照的な、薄暗い光りの中で行われた特別なイベントを簡単に振り返ろう。


広瀬彩海

今日のライブに備えて早寝するつもりが、突然アニメ『賭ケグルイ』の続きが気になりすぎて、コミックス最新刊まで一気読みして夜更かししてしまったという広瀬がトップバッター。

楽屋までまったく緊張しておらず、それが逆に不安だったものの、ステージに登場してようやく緊張してきたと少し安心したように語る彼女。これまでナギサワカリンとスリーマンは何度も行ってきたが、ツーマンは3年ぶりだそうだ。

初めて拝見・拝聴する彼女のライブの率直な感想としては、その歌声の美しさを挙げたい。ナギサワカリンがある種対照的(とにかくパワフル)であることもその印象を強くしているかもしれないが、とにかく広瀬の優しくて美しい歌声が心地よかったし、またその歌を会場にいる皆に届けようという丁寧なパフォーマンスも素晴らしかった。

「歌を歌う」という行為は、きっとテクニカルな“歌のうまさ”だけでは足りなくて。その歌を通じて何を、誰に届けたいのか、という部分もまた大切な要素ではないか、と思う。
※もちろん、圧倒的過ぎる超絶テクに感動することもある

表現の場で長く活動しているからこそにじみ出る、広瀬の“伝える力”を感じながら、じっくりと聴き入った。

今回はつっちー(Gt)、光(Key)というふたりのサポートを従えた、初編成でのライブとのこと。ふたりの温かい演奏が、広瀬と彼女の歌がもつ情緒的な部分をより増幅していたような気がする。

最後の曲を演奏する前に「パッと明るくしてカリンちゃんにバトンタッチしたい」と告げると、光が作曲したというアップテンポな「好きにしちゃっておくれ」を披露。つっちーもアコギからエレキにギターを持ち替え、会場からの手拍子もあって、優しく美しく、そして楽しいライブな幕を下ろした。

1.風になれたら
2.霖 -リン-
3.鏡花水月
4.桜
5.好きにしちゃっておくれ

ナギサワカリン

続いて登場したのは本日のメインアクト、ナギサワカリンだ。白い衣装が暗闇に映える。

広瀬の朗らかでふわふわした空気から一転、ややピリついた空気を帯びつつ「どうか最後まで楽しんでいってください」と挨拶すると、彼女が紡ぐ重く強いアコギの音色とともに「僕の街まで」でライブスタート。

何度か彼女のライブに足を運んだことがあるが、観客と一緒に楽しい振り付けで盛り上がる明るいナギサワカリンや、とにかく歌を本気でぶつけてくるシリアスなナギサワカリンなど、いろいろな表情を観てきた。

どうやら今日は後者モードが中心のようで、歌い出しからどこかヒリヒリするような感覚を覚える、そんなライブ。

MCでは彼女らしい、笑いも生まれる明るくて楽しい時間となっていた。人間的にも音楽的にもリスペクトしているという広瀬との関係性に触れるなどして、あらためて今日のイベントの解像度を高めていく。

歌パートのシリアス具合が強いため、MCはいいインターミッションになっていたように思う。

大学時代の親友が結婚することになり、その披露宴で歌うために書き下ろした曲という「メテオ」での《メテオ その手を握ろう》という何気ない韻の気持ちよさ。「黎明」での、リズミカルな伴奏に乗せた柔らかな歌唱からラストで一気にブチ上がって終わる余韻。

その歌唱力はもちろん、多彩な表現でも歌の面白さ、素晴らしさを伝えてくれる。

傷つき、折れて枕を濡らす夜があっても、日々の見えないくらい小さな喜びにもスポットを当ててほしい。そう告げて最後の一曲「スポット」を演奏。

バンド編成とは異なる、アコースティックの弾き語り。バンドサウンドがない分、よりその歌唱に“スポット”が当たるわけだが、これに加えて、アコースティックギターの音色もまた、より強度を持ってリスナーに届く。

ナギサワカリンが弾くギターの音色には、彼女の魂が込められているような感覚を味わった。歌だけじゃない、その力強さ。音がデカいということではなく、音に意思を感じるといったらいいだろうか。

きっと彼女より上手くギターを弾く人はたくさんいるのだろうが、彼女のギターにしか出せない味がある。これが圧倒的な歌唱力と組み合わさることで、とんでもない魅力を生み出すのだ。

約30分のパフォーマンス、歌う側も聴く側も真剣という、清々しいライブに心は充実。昼下がりの池袋で最高の体験となった。

1.僕の街まで
2.パレード
3.メテオ
4.優しい夜を探して
5.黎明
6.スポット

ふたりそれぞれのライブが終わると、ナギサワカリン&広瀬彩海による延長線。ふたりの仲の良さが滲み出るトークを経て、LADY BABY「LADY BABY BLUE」、そして宇多田ヒカルと椎名林檎のコラボ曲「二時間だけのバカンス」の2曲を披露する。

メインパートをふたりが交互に担いながら、時にユニゾン歌唱やコーラスも交えながらのパフォーマンス。確かな歌唱力をもつふたりの、聴く者の耳も潤う濃密コラボにて「young buds,never have time Vol.1」は無事、終演となった。

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