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【ライブレポート】2022/5/12 Jam Fuzz Kid pre.“Homies vol.2”@下北沢SHELTER

出演:Jam Fuzz Kid / 極東飯店 / ジャガーマンズ

Jam Fuzz Kidの自主企画『Homies vol.2』に行ってきた。「俺の友達とか仲間を集めてやっていこうっていうイベント」というRiki(Jam Fuzz Kid)の言葉があったのだが、つまりはJam Fuzz Kidにとってテッペンを取るための茨の道とは別の、文字通りHOMEのようなイベント、という位置づけになるのかもしれない。

でも、そこはJam Fuzz Kid。仲良しイベントで緩く終わるなんてことはなく、各出演者気合の入ったライブを展開していた。

コロナもやや落ち着いた平日夜、立ち位置指定の枠線も取り払われたシェルターのフロアには、若い子らを中心にまずまず埋まっており演者としてもじゅうぶんにモチベーションを上げて臨める状態だったのでは。

極東飯店

トップバッターは極東飯店。2020年結成とバンドとしては若いが最近特に売り出し中で、インディーバンド好きにはもはや有名と言ってもいいかもしれない。

メンバーはいおん(Vo/Gt)を中心に土肥(Gt)、ちょー(Ba)、タチバナヒロカズ(Dr)の4人。

「嫌なことあるでしょみんな」と言いながら「嫌」という曲でライブスタート。早くもフロアは盛り上がりを見せていて、さすが勢いのあるバンドだけあってしっかりファンがついている。

あまり音源に触れたことはなく、ライブを観るのも初めて。率直に言えば、飄々としたボーカル、暑苦しいけど華があるギターという前線のふたりに、、淡々とプレイするごついベースに黙々と叩くドラムの後方ふたり、というのが第一印象。

いおんによる突発的なメンバー紹介時、こってりしたギターソロを繰り出す土肥に対して、ちょっとだけベース弾いたちょー、そしてドラムプレイを一切見せないタチバナ。

いおんいわく、タチバナは「控えめだけど実は熱い男」とのことだ。

土肥はアフロヘアという目立つビジュアルもさることながら、ド派手なギタープレイも強烈。

いおんは、バイク川崎バイクのような風貌で掴みどころのない存在感がちょっと異色。ただ、MCではかなり熱いメッセージを放っていて、Jam Fuzz KidのRikiについて「RikiはSNSで“俺はロックスターだ”とかダサいこと言ってるんだけど、俺は大好きなんだよ。キャラで売ってない。ボーカルだからビッグマウスやってるんじゃない。本気で思ってる。Rikiをダサいと言ってるやつとは友達になれない」と発言するなど、彼の中には明確な軸があるようにも感じる。

しっかり根差すものがあるからこそ、ステージ上で飄々と振る舞えるのかもしれない。

「ブリットボウズ」を標ぼうするRikiに対して「俺たちはアメリカ」「アメリカとイギリスで戦争だ」「パンチキックをお見舞いしてやろうと思います」と言いながら「カンフースクワッド」を披露するあたり、ライブの流れを作るのもうまい。

「向こうがOASISなら俺たちはBlur」「そう、俺らエリートだし」と言い出す極東飯店。先ほどの米英対決からなぜか英国モンスターバンド対決になってみたりとMCまで捉えどころがない。

新曲「Super Fleek」や「92」などを披露してフロアをたっぷり盛り上げる極東飯店。特にラストナンバーとなった「92」での土肥の暑苦しいほどにギラギラしたギターソロの炸裂は、昨今話題になっている「ギターソロ不要論」へのアンチテーゼのようにも思えてきて、心躍ってしまった。

当日は雨模様で気温も低く、薄着だった自分にとって厳しい環境だったのだが、極東飯店のライブを観終えた頃には、体も、そして心も温かくなっていた。

ジャガーマンズ

極東飯店がライブを終えた後、Jam Fuzz Kidのセッティングを経てステージに登場したのは、お笑い芸人のジャガーマンズだ。

リューとライムのコンビ芸人がなぜ『Homies』に呼ばれたのかというと、リューがJam Fuzz KidのRikiと学生時代の同級生という縁からだそうだ。

今日ジャガーマンズが披露したネタは音楽/ライブをモチーフにしており、粗削りな部分も多く見受けられつつ、ちゃんと笑いを取る場面もあった。「友達だから呼ばれた」で終わらない芸を見せてくれたのではないだろうか。

まだまだこれからの芸人さんだと思うので、Jam Fuzz Kidと共にでかいステージを目指して頑張ってほしい!

Jam Fuzz Kid

メンバーの療養や脱退でドラムとギターにサポートを迎えて活動中の彼ら。今日のサポートは、ドラムに大越卓実、そしてギターにはMADALAのメンバーであるShunを招へい。

大越はシュッとしていてスマートかつ、流れるような心地いいドラミングが印象的。そしてShunは…ふくらはぎまで垂れるほど長いバンダナを巻き、上裸に黒い皮ジャケットを羽織る、まさにアメリカンハードロックスタイルな出で立ちが強烈だ。

あれ、Jam Fuzz KidってOASIS筆頭にUKロックサウンドを打ち出したバンドでは?とその(ビジュアル的な)ミスマッチがライブ前から面白い。

いつものように楽器隊が先行して「Untitled」を演奏を始め、曲の途中からRikiがステージに登場。「ロックンロールしていこうぜ」というRikiの言葉を合図に「consequences」で本格的にライブスタート。

UKサウンドの味わいをたっぷり詰め込んだ「Rovers」「Fringe」「Where we gonna go」といった名曲たちを次々と投下していき、ここまでシェルターを温めてくれた極東飯店とジャガーマンズのパフォーマンスに恩返しして余りあるお釣りが出るライブを繰り広げていく。
少し前のめり過ぎるのか、ややピッチがズレる部分もあるがそれもまたライブの醍醐味だ。

『Homies』についてRikiは「将来的には俺らがでかくなって、フジロックみたいにできたらいいな」と野望を語る。テッペンルートとは別軸のイベントではあっても、結果としてテッペンを極めた先にある景色をイメージしているようだ。

人生いろいろあるが、自分の信じる道をめげずに進んでほしいというメッセージを発信した後に「俺らはお手本やってるんで、ラクしたいなとか逃げたいなと思ったときは俺らのライブ観に来て、考え直してください」と付け加えるRiki。

これぞロックスター。カッコいいとはこういうことだぜ、さすがJam Fuzz Kid。

「Where we gonna go」あたりからフロアの熱量もさらにアップ。最初はおとなしく観ていた観客もどんどん手を上げて盛り上がっていく。この曲では特に小畠舜也のベースがヤバくて、ボーカルはもちろん各楽器隊見せ場十分なのだが、小畠のベースに釘付けとなってしまう場面が何度もあった。

「Where we gonna go」に限らず、小畠のベースが唸りを上げ、また気持ちいいグルーヴを生み出すベースラインを繰り出す瞬間があちこちに散りばめられている。ステージのフロントに陣取るボーカリスト1名にギタリスト2名の後ろにひっそりスタンバイしているが、音の魅力は五分と五分。

ヤマザキタイキのギターもJam Fuzz Kidの魅力を体現する大事なパーツのひとつだ。Rikiの歌声はもちろん、UKロックなサウンドを形作る各メンバーたちのスキルが重なり、Jam Fuzz Kidは下北から世界を見据えている。

「Afterglow」や「Tyler」、そして「601」などライブ鉄板の曲たちを披露して盛り上がりも最高潮。あまりに楽しすぎるため「アンコールはやめよう」と言い出すRiki。

その理由が彼らしくて。

本来自然発生的に生まれるのがアンコールだが、自主企画だとお約束になっている、その状態が嫌なんだと語るRiki。

「俺たちがはけたら終わり!わかった?」とフロアに理解を求めると「はーい」と素直な返事を送る観客たちの姿が微笑ましく感じる。

ライブは残りわずかとなり、「Pluto」を演奏する前にRikiがメッセージを紡ぐ。

「家族でも仲間でも、今大切に思っている人には、恥ずかしがらず“大切にしているよ”“愛しているよ”って今のうちに言っておいたほうがいいです」

ゆっくりと丁寧に、そして壮大に昇っていくようなイントロのギターリフが印象的な「Pluto」が、悲しい出来事が続く今このタイミングでのRikiの言葉と重なって胸が熱くなる。

少しウェットな空気を帯びた時間を経て、本日今この瞬間に解禁扱いとなった、4曲入りEPリリースのニュースがRikiの口から発表された。

「こっからJam Fuzz Kidの時代、始めますか。海外でライブやるときはみんな来てくださいね」とRikiらしい野心溢れるコメントと共に、そのEP収録曲を披露。

Jam Fuzz Kid印のスケール感もありながら、同時に激しさも併せ持つロックンロールナンバーで、ベースもエグい存在感を放つ曲に仕上がっていた。音源より先にライブで味わうという贅沢。そして改めていろいろ整った状態の音源で聴くのも楽しみだ。

「東京のロックンロールバンド、Jam Fuzz Kidでした」という〆の言葉に合わせてラストとなる「Sunshine Highway」をぶちかまし、ボーカルパートが終わるとRikiはステージを去っていく。楽器隊のみによる演奏でライブの余韻を与えながら、『Jam Fuzz Kid pre.“Homies vol.2”』は幕を閉じた。

チケット代が安かったこともあってか、今日のフロアには若い子たちがたくさん来ていたように思う。ロックやバンドがまるで時代遅れのように扱われる風潮もちらほら見かけるが、こうして若い世代がロックを楽しそうに浴びるライブハウスの景色に、ただただ幸せを感じる、そんな夜だった。

01.Untitled
02.consequences
03.Rovers
04.Fringe
05.Where we gonna go
06.When She Leaves the Town
07.Tunmbleweed
08.Afterglow
09.Tyler
10.601
11.Concorde
12.Pluto
13.新曲
14.Sunshine Highway


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