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【ライブレポート】2022/7/8 a flood of circle 『Tour 伝説の夜を君と』

a flood of circle『Tour 伝説の夜を君と』LINE CUBE SHIBUYA公演に行ってきた。自身初となるホールライブであり、2月からスタートした半年にわたるツアーのファイナルでもある。

開演時刻、ほぼ予定通りの時間にライブはスタートする。最新アルバム『伝説の夜を君と』を引っ提げたツアーということもあり、オープニングを飾ったのは同アルバム収録の「A」だ。テンポ抑え目の、重量感ある1曲で口火を切ると、2曲目には「Dancing Zombiez」で早くもギアを1段上げていく。

“姐さん”ことHISAYO(Ba)も軽やかなステップでステージに彩りを添える。

カッコいいサビメロにテンション爆上がりの「Blood Red Shoes」では「オンベース!」という佐々木亮介(Vo/Gt)の合図でHISAYOのベースプレイも炸裂。

アオキテツ(Gt)のギターソロも飛び出し、早々に各メンバーの見せ場も飛び出したところで最初のブロックを終えると「おはようございます。a flood of circleです」と佐々木が挨拶。これを聞くと、afocのライブに来た!という実感がわいてくる、不思議なパワーを持つ挨拶だ。

ギターからハンドマイクに持ち替えての「狂乱天国」では、《記念写真を撮りたい》→《戦争やめてくれ》と歌詞の一部をアレンジして歌唱する。本ツアー中に起こったロシアによるウクライナ侵攻を想起させる、そんなパフォーマンスだ。

「Rex Girl」ではHISAYOがボーカルを引き取るという贅沢なシーンもあり、ライブ前半にしてすでに様々な角度から観客を楽しませてくれるa flood of circle。

「だいたいのことはこんなはずじゃなかったって思うんですけど。今日を楽しくするのは俺たちなんで任せてください」

そんなMCと共に歌う「月に吠える」は《俺は呟く こんなはずじゃなかった》という歌詞から始まる一曲だ。渡邊一丘(Dr)によるコーラスとのコンビネーションも美しく、“歌”の魅力が詰まっていた。

歪むギターで幕開けの「ブレインデッド・ジョー」など、随所に彼らの武器が散りばめられたライブアクトに引き込まれていく。

MCブロックで、ツアー、特に対バンライブでの思い出を語る佐々木。WOMCADOLEやDOES、THEイナズマ戦隊らと交流を深めたそうだ。WOMCADOLEについては飲み過ぎ&メンバー全員に対し全身古着購入でその月は生活が苦しかったと吐露し、DOESとの広島でのライブでは、作曲のため公園に出かけ、ホテルに戻るとロビーで姐さんが目、ガンギマリで酒を飲んでたというエピソードで観客を笑わせる。

さらに北海道でのライブでは、空港でコンクリートをぶち破ってたんぽぽが咲き誇っており、それが嬉しかったと語る。

「こいつら、コンクリートって概念知らずにぶち破ってる」
「閉塞感とか、時代が重いというけど、マジ関係ないから。元から閉塞してるだろ。時代が重いっていうんだったら、みなさんロックンロールで空まで飛ばして差し上げますので」

そんな佐々木らしい、切れ味鋭いメッセージが飛び出し、「バタフライソング」へと繋げていく。

《吹けば飛びそうな綿毛》
《舞い上がって》
《こんな可愛いなんてね》
《ギザギザなでる滴》
《きれいさ》

MCと歌が見事なバトンリレーを見せる名場面でもあった。

「春の嵐」を挟み、「R.A.D.I.O.」「テンペスト」といった『伝説の夜を君と』収録曲を投入してレコ発ツアー色を強く打ち出していき、ライブ後半となる15曲目「プシケ」では曲演奏中にメンバー紹介を行う。

ダンダンダンダダン
ダンダンダンダダンダン

のリズムに乗せて、一人ひとりメンバー名を挙げ、その都度ピンスポットに照らされたメンバーが自身の楽器をプレイする。カッコいいのは音楽だけじゃないぜとばかりに、その演出でもファンを魅了していくa flood of circle。

初のホール公演ということで、広い空間に映える色鮮やかな照明を駆使したステージも観る者の心をワクワクさせてくれる。

ライブ終盤、2021年に誕生した彼らの新しいアンセムともいえる「北極星のメロディー」が奏でられる。極上のメロディと力強い歌声はセットリストの中でも柱のひとつになっており、個人的にも今日のライブで浴びたことで「ベストライド」と並ぶ強力な存在として、しっかりと刻まれた。

「俺たちとあなたたちの明日に捧げます!」との言葉から「シーガル」を披露し、本編ラスト前のMCでは、ステージに設置されたピアノについて「LINE CUBE SHIBUYAでピアノ弾きたいと思ってる人。超安いです。2万円で借りれます」と話しながら、ピアノの前にスタンバイ。

そして、「明後日選挙、今まで1回も自民党に投票したことはない。でも安倍さんが死んでほしいとは思わない。思わない」と力強く2度、否定する。

さらに続けて、自身がガンジーと同じ誕生日であることに触れながら「非暴力不服従でしょって、俺は思ってます」と話す。

ショッキングな出来事があった日の夜に、a flood of circleのライブ予定が入っていたことに少しホッとしていた自分。その感覚は間違っていなかった…そう感じる時間でもあった。何もかも忘れて楽しい時間を、というバンドではないと思っている。現実の世界とリンクし、しんどいことやつらいことも受け止めながらそれでも泥臭く、それでも音楽を楽しみながら進んでいく。

悲しいことを忘れるのではなく、それを踏まえたうえでも楽しいと思える強さを貰える、そんなライブなのだ。

「何が正しいかわかんなくても、俺はこれが好きだってことを世界中に自慢したい。俺のバンドと友達、スタッフ、ここに来てくれた人たちのことを。来てくれてありがとう!」

「きれいごと言っても仕方ないけど、きれいごと言えなくなったらおしまいだよ」

「もしあなたの中に俺と似てる部分があったら、たぶん疲れてるはず。そういう人の心のために歌います」

そんな佐々木の、気持ちのこもったメッセージの後で彼のソロピアノ演奏と共に「白状」が披露される。優しい旋律に心の棘が少しずつ抜けていくような感覚。《愛も夢も(平和も)続くものだと思ってたなんて》と、本来の歌詞にはない「平和も」の言葉を入れるのが佐々木らしさ。現実と地続きだからこそ、自分自身ともリンクしてくる。

ピアノでワンコーラス歌い終えると、今度はギターにチェンジしてバンドサウンドで曲の最後まで駆け抜け、アルバムタイトル曲でもある「伝説の夜を君と」で本編ラストを〆、ステージを去っていくメンバーたち。

その後、スタッフたちによってステージ後ろの幕が開き、アンコールの手拍子に応えて再び登場する4人。

「時間過ぎると、延長料金かかっちゃうから」との佐々木のコメントで笑いを誘うと、アコースティックギターを手に、最新曲「花火を見に行こう」を披露する。

冒頭部分はマイクから離れ、アカペラで歌い上げる。そしてギターをかき鳴らし、バンドも加わりa flood of circleとしての演奏が始まる。同時にリリックがスクリーンに映し出されるという演出で、ドラマティックに展開していった。

最後に佐々木がひと言「バイバイ!」と告げると、「I LOVE YOU」を演奏。ラスサビ前の歌詞《新宿東口》を《渋谷ハチ公口で》とご当地バージョンにアレンジする遊び心が憎らしい。

2曲を終えて再びステージから去ると、スクリーンに告知映像が流れる。

本日のライブ映像作品化決定の報、さらには『a flood of circle"Tour FUCK FOREVER & I’M FREE"』の開催と、10月の代々木公園野外音楽堂でのフリーライブ開催という大きな発表に会場からは大拍手が沸き起こる。

告知の余韻も冷めやらぬなか、ダブルアンコールとして4人がステージに戻ってくると、正真正銘本日最後の一曲となる「Beast Mode」を投入。曲が終わる瞬間、佐々木が持っていたギターを床に叩きつけるパフォーマンスをド派手に決めて、a flood of circle『Tour 伝説の夜を君と』は幕を閉じた。

恐ろしい出来事があった今日、この夜にa flood of circleのライブに触れることができて、救われたような気がした。今日のことはきっと忘れないだろう。

2022年後半に向けて新たな発表を行い、さらにバンドとして加速していく彼らのこれからがますます楽しみだ。

なお、10月20日開催の代々木公園野外音楽堂フリーライブについてはクラウドファンディングを実施中。興味ある方はぜひ、チェックしてほしい。
https://wefan.jp/crowdfunding/projects/afoc_imfree2022/


セットリスト
01.A
02.Dancing Zombiez
03.クレイジー・ギャンブラーズ
04.Blood Red Shoes
05.狂乱天国
06.Rex Girl
07.Welcome To Wonderland
08.月に吠える
09.世界が変わる日
10.ブレインデッド・ジョー
11.バタフライソング
12.春の嵐
13.R.A.D.I.O.
14.テンペスト
15.プシケ
16.北極星のメロディー
17.シーガル
18.白状
19.伝説の夜を君と
EN1.
20.花火を見に行こう
21.I LOVE YOU

EN2.
22.Beast Mode

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