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【ライブレポート】2022/7/29 "SKA BRAVO meets EASY PUNK PARK"@柏PALOOZA

KEMURI VS. TENDOUJIのツーマンライブに行ってきた。松戸出身のTENDOUJIにとって柏は隣町、お膝元みたいな場所。個人的に初めて訪れる柏PALOOZAは、自宅から柏駅までは距離がありつつ、柏駅からは徒歩5分程度と好アクセス。趣のある入り口、階段を上がって受付を済ませると、バーカンでペットボトルをゲットし、階段を下りていざフロアへ。

天井が高く、面積の割に空間自体は大きく感じる、良い雰囲気のライブハウスだなというのが柏PALOOZAの第一印象。

KEMURIを迎え撃つかたちでまずはTENDOUJIのライブからスタートだ。「Kids in the dark」をオープニングナンバーに、自由に、そして楽しそうにライブを展開していく。

彼らのライブは撮影OKというのがファンに浸透しており、フロアにはスマホを片手にステージを撮影しながら体を揺らすファンたちの姿もたくさん。時代の変化を感じさせる景色でもある。

ライブ前半では「Stupid!!」「FIREBALL」、そして「HEARTBEAT」とアッパーチューンを畳みかけ、ガツンとフロアを盛り上げるTENDOUJI。行動の制限はあっても心までは縛れない、とばかりに身体を揺らし、心躍らせる観客たちのなかに自分もいる。

“好き”“楽しい”をストレートに表現するフロアがとにかく眩しい、そんなライブが続く。

MCでは、バンドを組んだのが28歳の頃ですでに東京に出てきており、地元である千葉であまりライブをやったことがないと語るモリタナオヒコ(Vo/Gt)。そして「学生時代から知ってるKEMURIと僕らの地元に近い柏でツーマンするなんて、面白いことも起きるもんですね」と感慨深げに話していた。

また、サッカー好きだという彼らには柏レイソルとコラボしたグッズも展開しているという。次々とそのコラボグッズを紹介するも、ことごとく今日のライブには持ってきておらず、ヨシダタカマサ(Ba)による通販サイトへの誘導にとどまるという、なんとも機会損失なTENDOUJIなのだが、そんなところが憎めない存在だ。

なお、彼らは現在全国40ヵ所を回るツアーの真っ最中。ファイナルは8月下旬、ここ柏PALOOZAにてバックドロップシンデレラと対バンだそう(※ファイナル後に振替公演も予定)。バクシンは柏レイソルの応援歌を歌っているそうで、同じレイソルコラボバンド同士、バチバチの対決だと息巻くTENDOUJIだった。

そんなMCを挟んでのライブ後半では「I don't need another life」「Young Love」といった、ちょっと切なさを漂わせるセンチメンタル曲を披露する。TENDOUJIはひたすらに楽しく、踊りたくなるような曲だけでなく、こういった沁みる楽曲も多数あり、そんな押し引きのバランスが優れたバンドでもあることがライブを観ているとよくわかる。

感情がより露わになるライブでこのセットリストを喰らうと、一発でファンになってしまうほどの破壊力があるのだ。

冒頭ブロックでのコーラスパートにグッと心掴まれる「Killing Heads」やこってり中華テイスなイントロにやられてしまう「COCO」など、ライブだけでなく楽曲面でも自由に楽しく、そして恐ろしいまでにキャッチーなスタイルを貫くTENDOUJI。

最後の曲を前にしたMCでモリタは、メンバー全員が同じ中学のサッカー部であり、自身レイソルユースを受け続け、そして落ち続けたと話す。その後サッカーを辞めてバンドやり始めるわけだが、まさかレイソルとコラボして柏でKEMURIとライブをする未来など想像していなかったと語った。

20代でフジロックを観たとき、フジロックに出たいと思ったというモリタだが、2021年にTENDOUJIはフジロック出演を果たす。フジロックの一番大きいGREEN STAGEに出ていたKEMURIとの対バンも実現し、「やっていくと何でも叶うなって」と思ったというモリタは同時に「まだまだたくさんやりたいことあるんで」とこれからの未来にも思いを馳せる。

ラストナンバー「GROUPEEEEE」でライブを締めくくったTENDOUJI。カラっと爽やか、ひたすらに楽しく、そしてちょっと感傷的にもなる彼らのライブは一度味わったらやめられない。

続いて登場したのはKEMURI。衝撃的でもあった複数メンバーの脱退発表を経て、サポートメンバーを入れてのライブも続々開催。新生KEMURIとして順調なスタートを切っている。

前回、自分が観たのは2022年4月10日の『Quattro tour 2022 ~'Cancel Me'~』だが、今回のサポートも宮崎雄斗(Dr)、山縣健太郎(Tp)、永田コーセー(T.Sax)、須賀裕之(Tb)というメンバー。リスタート後はほぼ、この4人をサポートに迎えてライブを行っている模様。

今日の1曲目は「HERE RISE THE SUN AGAIN」。駆け抜けるような同曲はライブの幕開けにピッタリだ。

ライブの冒頭は2曲目「GO!GO!GO!GO! GLOW!」、3曲目「MY HANDS」、5曲目に「SAKURA」と、2012年の再結成後にリリースされた曲を中心に構成されていた。その中に挟み込まれた4曲目「BIRTHDAY」が生み出す独特の空気は、長年愛されている曲ならではのもの。新しい曲たちが持つ溌剌としたエネルギーとは異なる、熟練曲特有のパワーもまた、心地いい。

続くブロックでは
《What's going on? What's going wrong?》
《One drop of tear falls to the ground...》
という出だしの歌詞を、伊藤ふみおさん(Vo)が滑らかに歌う様にうっとりする「ONE DROP」、そしてイントロでのホーン隊によるアンサンブルが最高に痺れる「YELLOW SURVIVORS」、さらには田中“T”幸彦(Gt)さんの軽快なカッティングギターによるSKAサウンドがたまらない「CHERRY PIE」など、序盤から多種多様な楽曲で攻めてフロアを踊らせる。

フロアには、隣の人とのスペースに配慮しながら、観客たちがひたすらスカダンスする光景が広がっていた。

さらに美しいホーンイントロから急加速なスカパンクへと突入する「PRAYER」、そしてKEMURIの代名詞ともいえる一曲「PMA」と、ライブでも中心的存在な楽曲を投入。中だるみするような時間を一瞬も作らず、怒涛の後半戦が始まる。

「PRAYER」では、須賀がトロンボーンをギターに見立ててTさんばりのカッティングパフォーマンスを見せる。前回のレポートでも触れたが、正規メンバーが抜け、サポートのみとなったホーン隊の中でもKEMURI歴の長い須賀が見事にホーン隊を引っ張っている。演奏そのものだけでなく、ステージ上での立ち居振る舞いという部分でも頼もしい存在だ。所狭しと暴れまわり、スカパンクを体現するかのようなプレイに、思わずワクワクしてしまう。

また、山縣もいくつかの曲ではマイクでスカ特有のコーラスを担い、永田は特徴的なビジュアルに加え、時折見せるクールな笑顔も魅力的だ。

そんなホーン隊のサポートを受けながら、ライブは続く。独特のリズムが楽しい「DON'T KNOW」も織り交ぜてメリハリをつけつつ、終盤戦へ。

「FATHER OF THE BRIDE」を演奏する際には、「久しぶりで緊張する…!」と本音が漏れるふみおさん。同曲のMVではKEMURIメンバー時代の平谷庄至さんが花嫁の父役で出演していることもあり、ふみおさんと庄至さんを勝手にクロスオーバーさせてグッときてしまった。

いよいよライブも終わりに近づいた頃、KEMURI初期ナンバーの「ALONG THE LONGEST WAY」「NEW GENERATION」を投入してさらにフロアを熱狂させ、これでもかと盛り上げてくる。

宮崎のドラムはKEMURIにとって大きな刺激になっているようにも感じる。「若さ」というカンフル剤の一面もあるかもしれないが、もちろんそれだけではない。強くて太い音を軽やかに鳴らす彼に負けるわけにはいかない!とTさん、そして津田さんが気合い注入のプレイを披露する、そんなステージは新生KEMURIの可能性を感じさせてくれる。

本編ラストを迎えるタイミングで、ようやく本日最初のMC。バンドを代表して、TENDOUJIと柏PALOOZAのスタッフ、そして観客への感謝を伝えるふみおさん。KEMURIのライブではお馴染みのスタイルだ。

そしてTENDOUJIについては「膝小僧がキレイ」との感想を漏らす。ハーフパンツ着用でライブをする両バンドの決定的な違いが、こんなところに出ていたとは…!

さらに「あんまり人を褒めるの好きじゃないけど」と前置きしつつ、「新しい」「いい加減な感じ(が好き)」「面白い」「アメリカで観たバンドのよう」と言葉を並べていく。そして、まもなくツアーファイナルを迎えるTENDOUJIに対してエールを送っていた。

また、生きることは出会いと別れのふたつがワンセットだと語るふみおさん。「出会ったときの喜びは、別れの悲しみを軽減させてくれるんじゃないかなと今日、心底感じました」と続けるので、てっきりラストナンバーは「Kanasimiyo」かと思いこんでしまった。(実際のラストナンバーは「CANCEL ME」)

そしてMCを切り上げるタイミングで「もうひとつだけ言わせて」とふみおさん。

TENDOUJIのライブをステージ袖から観ていた際に、ファンがスマホで動画撮影してることに気づいたふみおさんは、その光景を「いいなあ」と感じたそうだ。そして、KEMURIのライブも撮影してくれるかなと期待していたが、誰ひとり撮っていなかったと落胆したという。

これに対してKEMURIファンたちが、ライブハウスの壁に貼られた「撮影禁止」の注意書きを指さすと、ここでふみおさんらしいコメントが飛び出した。

「場内撮影禁止って言われたら撮影しないの? なるほどねえ」
「歌っちゃいけないって言われたら歌わないの?」
「踊るなって言われたら踊らないの?」
「…正しい大人の行動だと思います!」

拗ねて煽って、そして肯定する一連の美しい流れを披露すると改めて「撮影OK」を宣言。そんなMCを経て披露された、本編最後となる「CANCEL ME」では、続々とスマホを掲げてライブを撮影するファンの姿があった。

しかし、ここがまたKEMURIファンらしいところなのだが、最初はスマホを掲げて撮影しつつも、徐々にその数は減っていき、最終的にはみんな踊りまくっていた。スカパンクを前にして、踊らずにはいられない。体に染みついた、愛らしい習性ともいえるかもしれない。

アンコールに「Ato-Ichinenn」を用意して最後の最後までフロアをぶち上げ、KEMURI VS. TENDOUJIのツーマンライブは無事終了。

SKAとEASYの違いはあれど、同じPUNKを掲げたバンド同士の対バンは、ステージもフロアもそれぞれの個性を発揮して、楽しい瞬間に溢れていた。

私を初めて柏PALOOZAに連れてきてくれたKEMURIとTENDOUJIに感謝を。新しいライブハウスと出合わせてくれるバンドの存在は、これからも大切にしていきたい。

セットリスト
01.HERE RISE THE SUN AGAIN
02.GO!GO!GO!GO! GLOW!
03.MY HANDS
04.BIRTHDAY
05.SAKURA
06.ONE DROP
07.YELLOW SURVIVORS
08.SIZUKA NI MOERU SEKAI
09.CHERRY PIE
10.PRAYER
11.THUMBS UP!
12.PMA
13.DON'T KNOW
14.FATHER OF THE BRIDE
15.ALONG THE LONGEST WAY
16.NEW GENERATION
17.CANCEL ME
EN.
18.Ato-Ichinenn

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