【漫画レコメン!】『子供はわかってあげない』
個人的おススメ漫画を紹介する企画「漫画レコメン!」の第2回は『子供はわかってあげない』です。2021年夏には映画公開も予定されている作品で、連載当時から漫画好きの間で話題になった名作。すでにご存じの方も多いとは思いますが、好きなものは好き!ということでさっそく紹介していきましょう。
『子供はわかってあげない』
作者:田島列島
「読むとうっかり元気になる、お気楽ハードボイルド・ボーイミーツガール、開幕なんです!」という書誌に偽りなしのの傑作。
新興宗教に父探し、性転換した家族と探偵、そして超能力…非日常を象徴するようなキーワードで組み立てられているのに、日常と地続きな物語として輝いて見えるのは、登場人物たちの機微を丁寧に、しかもコメディタッチで描いているからだと思う。
各章のタイトルをはじめ、カルチャー好きな30~40代のツボを刺激する秀逸なワードの数々。さりげない会話の中に散りばめられたクスッとするボケとツッコミ。あまりに自然なため油断するとスッと流してしまいそうになる、人生の真理を突く切れ味鋭いセリフたち。
これらの言葉と、読む者に心の隙を与えてくれる柔らかい絵のバランスも抜群で、劇薬レベルの大傑作エンターテインメントが優しい顔をして自分の中に入り込んでくるのだ。
ごくごく一部を除けば登場人物すべてがいい人たちで、彼らが自由に動き回る一コマ一コマが宝物のように愛おしくなる。
何といっても素晴らしいのが、ボーイミーツガール漫画の歴史に残るであろう、笑いながらも涙がこぼれてしまう最高のクライマックスシーン。幸せな気持ちで満たされると同時に、学生時代にこんな瞬間を自分も味わいたかったとちょっぴり切なくなる。
「子供はわかってあげない」の登場人物たちは、自分が受け取った“何か”をしまうでも返すでもなく、誰かに渡しながら生きている。
自分も誰かから何かを受け取ったなら、それを別の相手に渡してみるのも悪くないんじゃないか…そんな気持ちにさせてくれるこの作品は殺伐としがちな今の世の中に必要な漫画かもしれない。
とりあえずは、この物語から受け取った「面白かった!最高!」という感情を、今ブログを読んでくれているあなたに渡せたら、と思うのだ。
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