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【ライブレポート】2021/12/24 下北沢近松企画"anti pops"

下北沢近松による企画、「anti pops」に行ってきた。世の中はクリスマスイブだが、イブ感ゼロのロックなイベントのほうが性に合っている。これまで何度も下北のライブハウスに足を運んできたが、近松は初めて。

地図を確認しながら迷うことなく(方向音痴な自分には奇跡)無事到着し、開演10分前にイン。フロアには3人程度のお客さんがいたが、開演時間には20人近くに増えていただろうか。

FEED BACK CYCLONE

トップバッターはFEED BACK CYCLONEだ。初めてサブスクでその音源に触れたとき、90年代後半に活躍したWINOを思い出した。UKロックの影響を受けたサウンドと、吉村潤のように少しざらついていながら豊かでスケールを感じさせるSeito(Vo/Gt)の日本語詞での歌声。当時を知る音楽好きならきっとわかってもらえるのではないだろうか。

簡単に紹介しておくと、FEED BACK CYCLONEは中学時代に結成したという、鹿児島出身の4人組ロックバンド。今は拠点を東京に移し、主に下北沢を中心に活動中とのこと。

Iori(Ba)の高速ベースが印象的な「U.F.O. TONIGHT」や、前半はゆったり進みながら終盤畳みかけるようにペースアップする構成が面白い「ブレックファスト」など、一口に「UKロックの影響」とは言ってもアウトプットのバリエーションはいろいろありそうだ。

MCではSeitoの「冬っぽいですね」という言葉にJunpei(Gt)が「冬だよ!」とツッコミを入れたり、クリスマスの思い出というテーマから、今日ガストでパフェを食べたが、ロボットが給仕してくれてそれが怖かった、といったトークを展開。

なんとものんびりしていて、少しとぼけたキャラクターがにじみ出ている、そんなMC。Seitoがやや天然を発揮し、Junpeiがしっかりと仕切る、そんな関係性が見えてきた。

ライブを観て改めて感じたのは、90年代UKロックを彷彿とさせる雄大なメロディとJunpeiのギターサウンド、そして何よりSeitoの歌声が持つ大きな可能性だ。MCやライブでのパフォーマンスでもまだまだたくさんの伸びしろがあるようにも思う。

これからのさらなる飛躍を期待したくなるバンドだ。

ちなみに物販でCDを買った際に少し話したところ、WINOについては詳しく知らないようだった(別のライブ時にも同じようなことを言われたとのこと)。WINOを通らずに今のFEED BACK CYCLONEに至っている、というのもまた面白い。ますます惹かれてしまう。
※記事初出時、メンバー名に誤りがありました。Kenjiro(Ba)→Iori(Ba)に訂正します。

1.スローモーション
2.U.F.O. TONIGHT
3.ブレックファスト
4.ムービースター
5.Vow To Beer
6.オレンジドロップ
7.サンライズブルー

pavilion

2番手に登場したのはpavilion。彼らのライブはこの1ヵ月ほどで3回目の観賞となる。フロアにはノリのいい外国人観客の姿もあり、ステージ側としてやりやすい空気になっていたのではないだろうか。

個人的2021年ヒット曲のひとつである「Yumeji Over Drive」から始まり、「エンタイトルツーベース」、さらには新曲も織り交ぜながら、森(Vo/Gt)が顔をゆがませて熱唱。熱いパフォーマンスを披露する。

5曲目を終えたところでMCブロックへ入り、森は「一般的に特別とされている日に集まっていただいてありがとうございます」と挨拶をする。2nd EPやグッズなどの告知もそつなくこなして終盤の演奏に突入するかと思いきや、森がギターのチューニングに手間取り、なかなか曲にいけず、微妙な間が生まれてしまう。他のメンバーが話を繋いでなんとか場を持たせて、無事ラスト2曲を披露し、出番終了。

彼らのライブの勢いに呼応するように、飛び跳ねて盛り上がる外国人観客たちが印象的だった。コロナの脅威が去り、ライブハウスが本当の自由を取り戻したときには、人で埋め尽くされたフロアに向かって演奏する、そんなシーンが訪れるかもしれない。

FEED BACK CYCLONEのメンバーもその熱を感じていたのか、pavilionのライブを観て「すごかったな」と話しており、さらに「悔しいね」と付け加えていたことも書いておきたい。他のバンドのライブを観て、悔しいと感じるならまだまだ伸びる。こうして若いバンドたちが切磋琢磨していくことでシーンもさらに盛り上がることだろう。

1.Yumeji Over Drive
2.エンタイトルツーベース
3.funny
4.Monday mornin' flavor
5.新曲
6.最後の夏
7.RACE TO THE BOTTOM

Jam Fuzz Kid

本日3番手は、Jam Fuzz Kid。すでにある種の貫禄すらまとったバンドであり、今村(Vo)不在のままメンバーがオープニングを飾るインストナンバー「Untitled」の演奏を始める。曲途中でジャージ&キャップスタイルの今村がゆっくりとステージに登場し、2曲目となる「Fringe」へと突入。続く3曲目の「Welcome to me」と合わせて早くもここ下北沢をマンチェスター色に染め上げていく。

ジャケット&キャップの黒木徹(Gt)が奏でる90年代UKロックなギターのスケールの大きさは、今は小さなライブハウスだがいずれは大きなステージで鳴り響くのを今か今かと待っているかのようだ。

観客のノリも絶好調で、pavilionのライブで楽しんでいた外国人たちに加え、日本人の観客たちも感情をアクションに変えて表に出していく。そんな光景に今村もついつい笑顔がこぼれてしまう。

MCで今村は「東京のロックンロールバンド・Jam Fuzz Kidです、よろしく」と挨拶。客はふたりくらいしかいないんじゃないかと思っていたそうだが、そんなクリスマスイブに集まってくれたことへの感謝を伝える。

イブにライブやってる自分たちを疑問にも思いながら、今日ここに来ている人のほうが変だ、と観客をイジリつつ中盤ブロックへ。

「Where we goona go」では小畠舜也(Ba)のコーラスが響き、5曲目の「consequences」ではサビでひとり、またひとりと次々にフロアから手が上がり、最後は場内半数近くが手を上げているくらいの盛り上がりを見せる。

6曲目に入った際、サポートドラムが1曲飛ばして次の曲を叩き始めてしまったようだが、仕切り直して本来のセットリスト順だと思われる「601」を演奏。慌てることもなく堂々とした振る舞いはさすが。黒木とヤマザキタイキ(Gt)のツインギターの見せ場にも注目の一曲だ。

続いての曲は「Tyler」。さすが、今のJam Fuzz Kidにとっての圧倒的キラーチューンだけあって、少しずつではなく最初からフロアも全開で拳を上げ、ステージと共にライブを作っていた。気のせいとは思うが、過去に観たライブよりコーラスワークも光っているように感じ、盛り上がるだけでなく聴いていても楽しくなるステージだった。

あまりにも熱量たっぷりなフロアを見て「オミクロン流行ってるとは思えんな」と苦笑する今村。コロナが収束すれば、この何倍も激しいフロアを前にライブができるはずだ。

以前の近松では、ステージとフロアを仕切るアクリル板が設置されていたそうで、バンド側はアクリル板に映った自分たちの姿を見ながらライブをしていたんだとか。「クソつまんなかった」(今村)というそんな状況も解消され、最高だと話す。

残りの持ち時間もわずかとなり、予定していたセットリストでは難しいかもしれない、という空気になるが、「転換2分でやろう」というメンバーの言葉で「全部やりまーす!」と今村はライブハウススタッフに合図を送る。

そしてラストブロックへ。

OASISへのオマージュを感じさせる「Parade」、豊作な2021年リリース曲のひとつである「Afterglow」、そして彼らのライブを締めくくる役目を担うことが多い(と思われる)「Sunshine Highway」を投入。

勢いそのままに最後はキャップをステージ袖へと投げ、大物感たっぷりのパフォーマンスでフロアを大いに沸かし、Jam Fuzz Kidのライブは終演となった。

ライブ中ずっと楽しそうな笑顔を浮かべ、ライブを楽しむ余裕もあり、フロアとの呼吸もバッチリだった彼ら。いずれはもっと大きなステージでのプレイも観てみたい。ここ最近は注目株との対バンも多く、90年代UKロックの潮流を今に受け継ぐシーンの中心として、どんどん世に出ていってほしい。

01.Untitled
02.Fringe
03.Welcome to me
04.Where we goona go
05.consequences
06.601
07.Tyler
08.Parade
09.Afterglow
10.Sunshine Highway

この日のトリはTransit My Youthだったのだが、ここで自分は近松を飛び出して、年内閉店が発表されたばかりの下北沢GARAGEで開催されている、ザ・チャレンジのライブへと急ぎ移動。ということで本日のライブレポートはここまで。

Transit My Youthのライブは一度観たことがあるが、また別の機会に改めてチェックしよう。


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