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【ライブレポート】2023/4/23 CONNECT歌舞伎町

歌舞伎町の音楽シーンを盛り上げようという目的で、2014年に第1回を開催した『CONNECT歌舞伎町』。あれから9年が経ち、Zepp Shinjukuという、旗艦とも呼べるようなライブハウスが歌舞伎町のど真ん中に登場。当初掲げていた役目は終わったとして、今回で最後の開催となる。

そんな記念すべきラスト『CONNECT歌舞伎町』に参加して、多くのライブを存分に楽しんできたので、備忘録代わりの簡単なメモで振り返ろうと思う。

■水曜日のカンパネラ

@新宿BLAZE

13時過ぎに会場着。正面出入口付近はかなりパンパン。フロア前方上手側出入口から入場し、無事ゆったり見ることができた。

入場規制も発生するほどの観客を相手に、ひとりステージで堂々パフォーマンスを披露する詩羽に圧倒される。

着ぐるみキャラや小道具も登場するライブでは、水カンといえば、のバルーンを使った演出も。バルーンの中に入った詩羽を上手に前方から後方へ運び、折り返してステージへと戻すフロアのチームプレイも見事だ。

野太い歓声に本日の客層を把握すると、そんな年齢層高め男性客に対し「オジオジ」と呼びかけ、掌の上で転がすように彼らを楽しませつつ、財布のひもも緩めんとするMCまで含めて完璧。

「赤ずきん」「ディアブロ」「桃太郎」「エジソン」「招き猫」といった、先代ボーカル曲も含めての名曲セットリスト。一流のアーティストであり、エンターテイナーでもある彼女の素晴らしさを目の当たりするライブとなった。終演後は物販に立って直接サインするサービスっぷりも凄い。

■ザ・シスターズハイ

@Zepp Shinjuku

できたてホヤホヤのZepp Shinjukuで観たのはザ・シスターズハイ。初めて観るバンドだな、と思いながら足を運んだが…。シャツのボタンを締めず、前面ボディむき出しでステージに立つベーシストを見て、1年半前に新宿SAMURAIにてNIYOCOや板歯目との対バンで観ていたことを思い出した。

オープニングアクトではあったが、フロアにはしっかり観客が集っている。シスハイの熱いライブをガッツリと受け止め、楽しんでいるのが伝わるような盛り上がりを見せた。

小さいハコでも大きなステージでも変わらず、目の前にいる人に向けて全身全霊で音楽を届けようとするその姿が最高にカッコよかった。

■YAJICO GIRL

@新宿MARZ

初見。「FIVE」という曲が特に印象に残ったが、軽やかでとてもポップな音、そして耳に優しい四方颯人(Vo)の綺麗な歌声。ドロドロの歌舞伎町に咲く可憐な一輪の花のよう。

また、爽やかな笑顔を浮かべる吉見和起(Gt)のプレイも清涼剤のように清々しく響いてくる。

一方で何度かローディが登場してステージを整える場面もあり、各楽器隊にはアグレッシブな一面も。

ザチャレを転換からチェックすべく途中で切り上げたが、最後まで観たいと思わせてくれるステージだった。

■ザ・チャレンジ&ONIGAWARA

@新宿BLAZE

ザ・チャレンジとONIGAWARAのよるスペシャルユニットの初陣ライブ。転換時はやや不安な動員も、ライブが進むにつれてどんどん人が増えていき、最後はたくさんの人が手を上げて盛り上がるという、確かな腕とエンタメ性を持つ2組ならではのライブ。

ONIGAWARAの竹内サティフォは終始キュート。そして最高の笑顔で楽しんでいたのが印象的。また、沢田チャレンジのMCに細かくツッコミを入れていく斉藤伸也、という構図も面白い。

水カンやMOROHAの名前を出す沢チャレに「他のアーティストをイジるのやめなさい」

また、沢チャレがこのあとのMOROHAのライブに出ちゃおう、と言いつつ、そんな自分たちを「レンタルなんもしないおじさん」と自称すると「古い」と一刀両断。

ザチャレのライブでは沢チャレが基本ひとりでMCを担っているので、こういうやり取りは新鮮だ。

序盤はユニットによる新曲を披露し、その後はそれぞれのオリジナル曲をパフォーマンス。前半は緊張していたようだが、自身の曲パートへ入ると「手癖でできる」と安心感を滲ませながらライブは進行。

メンバーとファンがオリジナルのサイリウムを振ったり、撮影OKのライブということで、シャッターチャンスで観客が一斉に撮影したりと、「曲を歌い、演奏する」だけではない楽しさ満載。

このユニットの活動は今回限りではないので、見逃した方はぜひ次回ライブをチェック!

■サバシスター

@新宿Loft

巷で話題のサバシスター。昨秋の『JUNE ROCK FES』におけるオープニングアクトを観て以来となるが、勢いはそのまま動員数に表れていたように思う。すでに肉眼でメンバーを捉えるのに苦労するほどの入り。

人の隙間からチラリ見える彼女たちのステージに目を凝らしながら「スケボー泥棒!」「アイリー」、そしてごうけ(Dr)が幼いころから大事にしているというぬいぐるみを歌った「しげちゃん」など数曲を味わったところで移動。

フロアの印象としては、それこそ冒頭に書いた「巷で噂の」サバシスターを観ておこう、というサーキットイベントならではの集客が中心だったかもしれない。人はたくさん、でもホームという感じまではいかない、そんな難しい状況でも臆することなくハツラツとプレイしていたサバシスターは、めちゃくちゃ頼もしかった。

■chelmico

@Zepp Shinjuku

続いては再びZepp Shinjukuへ。初観賞となるchelmicoのステージ。アニメ『映像研には手を出すな!』主題歌となった「Easy Breezy」に触れて衝撃を受けてから早数年。ようやく彼女たちのライブを観ることができたのだが、結論から言ってめちゃくちゃ楽しかった。

まず、なにより彼女たちのキャラクターが魅力的過ぎた。フロアに向かって気さくに声をかけながら、飾らない言葉で会場の温度をゆるく楽しく上げていく。

タイテが被っている、同じRAPな二人組・MOROHAを引き合いに出しつつ、アフロがchelmicoのことを好きだと言ってくれたというエピソードを披露。二組迷ってchelmicoを選んだ観客に向けて、「アフロが好きなchelmico」と思ってもらえれば気持ちが同居できるね、と独特の表現で和ませた。

また、新曲を披露する際には、Rachelが「入るの難しいんだ」と不安を露わにすると、Mamikoが「何回かやり直す可能性あり」とフォロー。そんな前フリを経ての曲冒頭、無事順調なスタートを切ると、その瞬間Rachelが「入れたっ!」と小さく叫ぶ。本当に自然体で自分自身がライブを楽しんでいる、そんな姿が伝わってくる。

さすがの「Easy Breezy」では会場の盛り上がりも最高潮。個人的にもついに生でこの曲を味わえて至福の時間。

熱心なファンはもちろん、興味本位で覗いた人たちをもグイグイ取り込んでしまう、chelmicoのとんでもないポテンシャルにある意味衝撃を受けたライブとなった。

■FILTER

@新宿SAMURAI

サブスクで何度か曲を聴いていて、その時に「好みだなあ」という思いを抱いた淡い記憶を頼りにチラっと覗き見。それくらいの気分だったのだが、ライブは激熱。メロディも強く、フロアを踊らせるタイプのライブバンド。

新宿には人の繋がりを感じず、あまりいい印象を持っていなかったという彼らだが、以前『CONNECT歌舞伎町』に出たことで、イメージがガラリと変わったんだとか。このイベントはライブハウスによるブッキングで成立しており、今回も新宿SAMURAIの馬場店長から声をかけてもらったそうだ。

そういう一つひとつの繋がりを感じながら楽しむライブというのもまたおつなもの。もちろんシンプルにその場で鳴らされる音だけに身をゆだねるのもOKだ。

FILTERは、「人」や「縁」を大事にする、体温を感じるバンドだった。ライブ後半にはモッシュも飛び出すなど、激しさも右肩上がり。汗まみれな観客たちの、心地よい疲れと共に浮かぶ笑顔が、ライブの充実度を物語っていたように思う。

■LUNKHEAD

@新宿SAMURAI

そのままSAMURAIに居座って、LUNKHEADのライブを観賞。開始予定までまだ時間があったが、すでにある程度観客が集まっている状況を受けて、サービス精神からライブパフォーマンスを披露する。ベテランならではの臨機応変な柔軟さも見せ、開演前から早くもグッと盛り上がったかたちでライブスタート。

キャリアを積んだベテランならではの安定感のあるパフォーマンス、と言いたいところだが、LUNKHEADは長年積み重ねたうえでの、超攻撃的なステージでガンガンにフロアを煽っていった。言葉ではなく、その音とプレイでフロアと正面からぶつかっていく。

安定に背を向けて飛び込んだロックの世界で、存分にそのスピリットを音に乗せ、キレキレのアクトで多くの観客を痺れさせる。それがLUNKHEADだ。

■石野卓球

@シネシティ広場

もはやちょっとした名物になっているのでは、とも思う石野卓球in歌舞伎町パフォーマンス。国籍、年齢、性別問わずたくさんの人が卓球のDJに合わせて怪しくノリまくるこのステージは、歌舞伎町という場所にふさわしいかもしれない。

いまだ危険な香りも漂うこの場所で、小さな子供がはしゃぎながら踊る光景、とても不思議で、混沌としていた。

■DOPING PANDA

@新宿BLAZE

『CONNECT歌舞伎町』、個人的ラストを飾ったのは復活のドーパン。Zepp Hanedaでのライブは生中継で観たのだが、リアルでのライブは正式復活後初。え、タロティってボリューム増えた?とかハヤトってこんなに渋カッコよかったっけ!?など、間近で見ると気づくこともある。

フルカワユタカだけはLOW IQ 01のライブでずっと継続して見続けていたこともあり、ビジュアル面での新鮮な驚きはない。しかし、先輩の隣に立つステージと、自身が「ロックスター」として立つステージではやはり纏っているオーラが違う。

あの頃のヒリヒリした感じとは違うが、それでもフロントマンとしての堂々たる存在感と、彼を支えるリズム隊ふたりの良好な関係性がうかがえるアンサンブルは最高のひと言。

「最後ここに来てくれてどうもありがとう。…ありがとうって言うのこれが最後だから。ここから先は、おまえらが俺たちにありがとうって言う」、そんなライブにすると宣言するフルカワユタカ。

セトリがひと段落してMCに入るも、「あ、こういうタイミングで入れ替わるのね。このあと無限大ダンスタイムなのに。もったいない」と、会場を後にする観客に言葉を投げる。解散直前のドーパンに、去る者追わずではなく、引き留めようとするような空気はあまりなかった気がする。

しかし、「もったいない」の言葉に嘘はない。久々に体感した「無限大ダンスタイム」は、曲のイントロが演奏されるたびに大興奮。かつて踊りまくったあの感覚が瞬時によみがえってきた。さすがに10年経ち、残念ながら体は追いつかないので、無理のない範囲で楽しみつつも鉄板のキラーチューンたちを全身で味わった。

ライブ前半で演奏した「beautiful survivor」、レア曲を、の言葉と共に披露された「the anthem」、そして無限大ダンスタイムでの「The Fire」「Hi-Fi」「Miracle」、再始動後のナンバー「Silhouette」といった名曲たちを続々投下。

そしてアンコールでは「Crazy」を。

《ミラクル起こせなくてさ》の歌詞を《ミラクル起こしちゃってさ》に替えて歌うスタイルは、フルカワユタカの5周年記念イベントで一瞬再集結したライブで披露して以降、お馴染み?

あれから10年。ドーパンも観客もお互い歳を重ねたが、ミュージシャンとリスナー、それぞれが今の立場で音楽をちゃんと楽しめている。なんて感慨深い時間だろうか。

バッキバキの演奏と温かい空気という、一見相反するものが共存した、まさしくミラクルなステージで新宿BLAZEの大トリを務めあげたDOPING PANDA。これで終わりじゃない。むしろ始まったばかりだというのが何より嬉しい。


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