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【ライブレポート】2023/6/4 Never Ending Homies T.K.H.R.NIW 20th anniv. feat.FIVE ON THE MOVE@下北沢SHELTER

まさか令和の時代に『FIVE ON THE MOVE』のフレーズを冠するイベントが行われるとは。そしてそこに、かつて同名イベントに出演していたメンバーが駆けつけるとは。イベント発表を目にして即チケットを申し込んだ、今回のNiw! Records、TKHRNIWのアニバーサリーイベント。

レーベル発足してから20年。音源制作、ライヴ制作、アーティストマネージメント、宣伝業務。はたまたDJとして、数々の音楽業界に携わってきたTKHRNIWのアニバーサリーとして開催される『Never Ending Homies』が、5/21新代田FEVERに続いて、6/4下北沢SHELTERにて行われる。
今回は、2007年から3年間行われ、全国ツアーも行った『FIVE ON THE MOVE』をフィーチャー。その中心バンドであった、Fed MUSIC、Riddim Saunterからは、Keishi Tanaka、KONSCOS、Masamichi Hamadaがそれぞれ参戦。ala、asphalt frustration、heからは、新井祐樹、佐藤誠士、高梨竜也、重信貴俊が、Fed MUSIC 秋元雄介と共にこの日のためにBOYLEKUWAIというバンドを結成し参加する。当時来ていた皆様で、ライブハウスから遠のいている方々にも10数年振りに集合してもらいたい。そして、当時を知らないそれぞれのファンの方々にも00年後半のシーンを垣間見てほしい。

下北沢シェルターサイトより引用(https://www.loft-prj.co.jp/schedule/shelter/248939

出演アーティストは下記の通り。

Fed Music
Keishi Tanaka
KONCOS
Masamichi Hamada
BOYLEKUWAI【新井祐樹/佐藤誠士/重信貴俊(brute in forest 、ex:he)/高梨竜也(ex:asphalt frustration)/秋元雄介(Fed MUSIC)】

懐かしい名前ばかりが集いながら、それぞれの今を鳴らした素晴らしいライブを振り返ろう。


Masamichi Hamada

Riddim Saunter時代はベースで活躍した濱田将充(今のアーティスト表記はMasamichi Hamada)は、ドラム・堀田明成(chris van cornell)との2人体制でのパフォーマンスだ。

ボーカル曲もありつつ、歌詞は同じフレーズを繰り返すような構成。じっくりとサウンドを聴かせるスタイルで、弦とドラム、この2音によるライブは音数が少なくシンプルであるゆえに、聴く側の集中力が研ぎ澄まされていくような感覚を味わった。

MCでも多くは語らず、音で今の自分を表現する。シューゲイザーの香り漂う、独特の浮遊感。『FIVE ON THE MOVE』時代の、パーティ味溢れるダンサブルなロックチューンとは一線を画す音楽に、あらためて時間の経過を感じさせてくれるステージとなった。

BOYLEKUWAI

2番手に登場したのは、謎バンド。しかしメンツは豪華だ。alaのツインボーカル、新井祐樹と佐藤誠士。さらにはheの重信貴俊(Ba)、そしてasphalt frustrationの高梨竜也(Gt)、さらにはFed MUSICの秋元雄介(Dr)。

ライブハウス入場時の受付で、観客たちが次々に彼らの名を口にしようとするが、読み方がわからずにごにょごにょしたり、ストレートに「読み方がわからないんですが…」と告げたり。カンのいい受付スタッフが「はいはい!」と理解する、その流れが面白い。(と言いつつ自分もスタッフに「ボーイなんちゃら」と告げたが)

今日のライブのため、4ヵ月前に結成されたバンドとのことで、オール新曲で臨むライブ。ちなみにバンド名の読み方は「ボイルクワイ」だそうだ。

新井と佐藤、ふたりの声が耳に届いた瞬間にalaが脳裏を駆け巡る。当時の英語詞とは違い、日本語詞で歌われているが、それでも声質は変わらない。ふたりの美しいハーモニーは、まったく色褪せていなかった。

この声を活かすという意味でもBOYLEKUWAIの音楽は爽やかで優しく、キャッチーに整えられており、めちゃくちゃ聴きやすく、そして何より楽しい。

MCでは『FIVE ON THE MOVE』について新井が「僕たち(新井と佐藤)、1年目しか参加してないんで笑、2年目以降の話をされると入っていけないんです。その辺気を遣ってほしいと思います」

また、場内BGMで『FIVE ON THE MOVE』コンピ曲が流れていたことについても「そこも、入ってないんです笑」と話して笑いを誘う。

BOYLEKUWAIについて「今日で終わり」と言う新井に会場からは「え~~~~!」の声。すかさず「黙れ!」と一喝する新井に盛り上がる観客たち。この「旧知な間柄」な雰囲気についついにやけてしまう。

秋元作曲の曲では佐藤がなんとラップに挑戦。《TU TU TU LU LU》のコーラスにめちゃくちゃNiW感があってグッときた。

秋元が引っ張るMCでは、もともともうひとつバンド名の候補があったとのこと。その名も「She Get No Books」。各単語の頭だけ読めば「し・げ・の・ぶ」となる、重信貴俊をフィーチャーしたバンド名だ。当の重信以外は賛成だったらしいが、「heのあとにsheやるのもやだな」と重信の気持ちを秋元が代弁すると会場大爆笑。今日のMC大賞はまちがいなく秋元だ。

アコースティックスタイルで披露した、「歌詞が書けない」ことをテーマにした楽曲は、その内容とあまりにかけ離れた軽やかなサウンドとのギャップも最高。

最後のMCで新井はこう語った。

「今日出てる人たちと、また同じステージに立てるとは思ってなかった」
「今日だけの約束でこの話に乗った」
「続いていくかどうかはわからない、まあたぶんやらないんですけど」
「今日やれて本当に良かったです」

新曲のうち2曲「Sunny」「日々のまにまに」は無料DL可能という大盤振る舞いも見せながら、たった4ヵ月で立ち上げた即席バンドとは思えぬ素晴らしいパフォーマンスで、SHELTERに集った観客たちを魅了したBOYLEKUWAI。ネガティブワード連発な新井らしさも含めて、楽しすぎる30分だった。

次の出番でステージに登場したFed MUSICの久楽陸が、BOYLEKUWAIのライブを楽屋のモニターで見ていて「alaに見えてきて、泣きそうになった」と発言。またいつかalaの曲をライブで聴けたら…という淡い願いを抱きながら、これからも彼らの活動を楽しみにしたい。

Fed Music

関係者の立話が聞こえ、今日のトリがKONCOSだと言うのは知っていたのだが、次のバンドはkeishiだとばかり思っていた。なぜなら、BOYLEKUWAIのライブに秋元が出演していたので、Fedで連続はないだろう、と。

ところが、転換タイムですぐに秋元が戻ってきた。まさかの連投か。本人はハードだと思うが、そんなラフな感じもこのイベントのファミリー感を表しているような気がする。

ライブは「I fed music(to you)」で幕を開けた。久しぶりにライブハウスで浴びた久楽のスウィートな歌声に酔いしれる。

Fed Musicとしては常に活動しているわけではないので、会うのも久しぶりだったそう。リハーサル時、再会直後はよそよそしくなるも、結局話は尽きなかったというエピソードを披露していたが、そんな関係性がなんだか微笑ましくなる。

また、突然始まった菊池篤(Ba)のモノマネショーに驚く。所ジョージや福山雅治、ジャイアン等次々と披露。ややウケが続くなか、久楽が「お前らふざけんなよ、うちのベースが一生懸命モノマネ披露してんだ」とコメントすれば、菊池も「爆笑取らないと終われない」と発言。最終的には久楽が太鼓判を押す、菊池の母校・墨田工業高校の白川(?)先生のモノマネで無事爆笑をかっさらい、モノマネショーは終幕。

演奏は新曲で再開となるが、入りを間違えてしまう久楽。ライブ冒頭で「まったく緊張してない」と語った久楽だったが「緊張してないとこうなる」。

ライブ終盤、「跳べる?」と声をかけて始まったのは「Let Me Go」。Fedといえば、のライブ鉄板曲にフロアも大興奮だ。ラストはZarigani5時代の「Primaly」でさらにブチ上げて締めくくる。

メンバーそれぞれの活動もあり、ごく稀に集まってライブを行う、そんな今のFed MUSIC。しかし、しっかりと新曲も入れ込み、決して止まっているわけではないことを証明するようなライブが何より嬉しかった。

Keishi Tanaka

小宮山純平(Dr)とKeity(Ba from LUCKY TAPES)という、現在進行形な3人編成。Keishiが鍵盤を弾く「雨」でしっとりとライブをスタートさせると、続く「Just A Side Of Love」では一転、弾けるポップで会場は一気にパーティムード。Keityがリードボーカルを担う場面もあり、さらにお祭り感が増していく。

「今日は思ったより同窓会感が強い」と話すKeishiは、メンバー紹介を経て「踊ってってくれよ」と告げると、演奏を再開。

抜群にオシャレサウンドな「The Smoke Is You」、そのブラックミュージックについつい体が揺れてしまう「Let Me Feel It」など、ここ最近のKeishiが色濃く反映された楽曲たちが続く。

「現役だから、どんどん曲やるよ笑」と告げると、盛り上がり必至の名曲「Floatin' Groove」で会場の熱を上昇させる。たくさんの手が上がり、ステージとフロアの息もピッタリ。曲終盤の転調もなんのその、声を張り上げ歌いきるKeishi。さすが現役!

MCでは、色褪せない名曲を披露したFed MUSICや、その新しさが素晴らしかったMasamichi Hamadaのライブに触れつつ、「二つ目の、なんですか選抜オールスターみたいな」とBOYLEKUWAIがターゲットに。

「ちょっと思ったんですけど、FIVE ON THE MOVEって言ってますけど、あのバンドにリディムだけ誰も声かけられてない。あきもだって2ステージやってるし、俺らだって…。今日で終わり、ってあんなやる気ないボーカル…」と新井パイセンをイジって笑いを呼ぶ。

そして「お互い歳を取ったけど、これからも一緒に、歳を取って。そういう“homey”、家族がいてもいいんじゃないかなと思います」と語りかけると、今日最後の楽曲となった「I' m With You」を演奏する。

楽曲とリンクしたコメントにイベントのタイトルまで差し込む達者ぶり。現役感溢れる曲振りと共に、心に沁みる「I' m With You」を“同窓生”たちに届けて、Keishiのライブは幕を閉じた。

1.雨
2.Just A Side Of Love
3.Like Her
4.The Smoke Is You
5.Let Me Feel It
6.Floatin' Groove
7.I' m With You

KONCOS

本日のトリを務めるのは、Keishi Tanakaと現役アーティストの双璧を成すと言ってもいい、KONCOSだ。

結成当初は鍵盤サウンドならではのキラキラポップチューンが印象的だったが、やがて激しいゴリゴリなロックサウンドも生み出しながら、ライブでは混沌の文字が頭をよぎるほど激しすぎるパフォーマンスが強烈なバンドだ。

今日もカオスなKONCOSを存分に発揮。ポップナンバーから怒涛のロックサウンドまで幅広い楽曲群をこれでもかと繰り出していく。太一は何度もステージダイブでフロアへ突撃したかと思えば、今度は定位置を離れて、柵に足を駆けながらの鍵盤プレイも見せる。その鍵盤を両手で支えていたのは、タカヒロだ。

KONCOSの、というか太一の凄いところは、どれだけぐちゃぐちゃになろうとも、適当な演奏をしない点だ。いつもライブが始まって早々に汗だくになる太一は、鍵盤に大量の汗を垂らしながらも、グルーヴのある演奏で楽曲をドライブさせていく。

彼がライブで解き放つ、抑えられない衝動はそれだけで圧倒されるし、尊敬と畏怖の念すら生まれてくる。もしKONCOS未体験の方がいたら、ぜひその目で目撃してほしい。それはきっと衝撃体験となるだろう。

MCで太一は、「FIVE ON THE MOVEと言えば」という入りでこんなエピソードを。昨年行われた息子の入学式で、asphalt frustrationのボーカル・宝満玲央に声を掛けられたのだとか。隣のクラスに彼の子どもがいるらしい。「そこでFIVE ON THE MOVE始まってました」と嬉しそうに語る太一だ。ちなみに今日の会場に、玲央が来ているらしい。

さらに太一は、佐藤がベースを弾き、ドラムだった自分がドラムを叩いてないことに触れ、「これが年数というものです」と話す。このテーマを引き取って、佐藤は自身の子供について「太一の子供と同じ、小学校2年生です」と話すと、そんな息子が生まれる3ヵ月前に作った曲だという「Bluebell」を、佐藤のベースボーカルにて披露した。

まさに父親目線の歌詞が温かく、先ほどの太一の「これが年数というものです」というフレーズが重なった。

「お客さんも、元気でいきましょう。何があるかわからないんで」

そんな太一の言葉を締めに、ラストは「I like it」で『Never Ending Homies T.K.H.R.NIW 20th anniv. feat.FIVE ON THE MOVE』は終わりを迎えた…ように思えたが、誰もいなくなったステージに、酔ったTGMXが登場。「今日はもしかしてリディムさん…!? どうなんですか? やんねえならすぐ帰るし」とフロアの期待を煽る。

この発言に、再登場した太一が、真摯に応えた。

「未だにオファーを貰うこともあって、嬉しいです。あの時にはあの時の音楽がフィットして、あの時作んなきゃダメな曲もあったり、あの時歌わなきゃダメな曲もあって。今から(リディムを)やるのは、全員いるから簡単ですけど…先なくね? 観たらさ、大切なあの時のことが、僕は崩れるというか…」

「遊びじゃないんで。音楽作って絵を描いて、ずっとキープしているものがある。あの時を振り返るのは、音源聴けばできる。音楽を作っている以上、今歌わなきゃダメなことがあって、今の世界に、今の世の中に。あの時のことをやるのは簡単なんですけど、そういう思いでやってるんですよ」

ここでTGMXが「そうだ!そうだ!」と手のひら返しのチャーミングな合いの手を入れる。

「TGMXさんがずっと言ってくれるのは嬉しいし、泣きそうになるんです」と感謝する太一は、こう続ける。

「昔のことでこうしてみんなが集まってくれるのも嬉しいです。でも、真面目な話、そういうの言わないとアレじゃん。今年もオファーきて…、まだ?まだ??って。大切なことに留めておいたほうがよくない? 今歌うことじゃないし、あの時のことは。今じゃなくない? 今みんな歌ってることもあるし」

ここで再びTGMXが話の流れを変えるべく、言葉を差し込んだ。

「太一くん、1曲くらいKONCOSの最高なやつ聴かせてもらっていいですか? Riddim Saunterは、わかった! 僕、SCAFULL KINGってバンドやってたんだけど、責任もって対バンするから。責任感ないけど」

このコメントに「ありがとうございます」と笑顔で返すと、「それぞれの音楽表現を、あの時と照らし合わせながら楽しんでもらえたらと思ってます」と語った太一。

Riddim Saunterをやらない、という彼の発言は、決してRiddim Saunterを否定しているわけではない。むしろ、どれほどあの時間、あの活動、そしてRiddim Saunter自体を大切に思っているのかが伝わってきて胸が熱くなってしまった。Riddim Saunterのメンバーたちが今、それぞれに活動を続けていることも重要で。今の活動をもっと見てほしい、という想いもあったのではないだろうか。

太一の口からしっかりと本音を聴くことができた、という点でも、酔ったTGMXの「リディムやらないの」発言は結果オーライだったのでは、と思う。

最後のパフォーマンス前に、帯広の音楽仲間だったというKONCOSのドラム・紺野清志を紹介。そして太一らにとって懐メロ第一世代が「Music by.」や「Dear Joyce」だといい、懐メロ第二世代にあたるという、この10年歌い続けてきたKONCOSの「月待つ島まで」をアンコールで披露することに。

せっかくだからとタカヒロをステージに呼び、KONCOSとタカヒロによるライブとなっていたのだが、途中でミラクルが起きた。

ステージ袖からKeishiや濱田が登場し、共に歌い始めたのだ。さらに「兄貴は?」の声に反応し、フロアにいた本間までもがステージに。KONCOSの曲を、Riddim Saunterのメンバーたちが全員揃って、楽しそうに歌い演奏している。この光景がどれだけ美しく、そして素晴らしいものだったか。

最後の最後に、Riddim Saunterの5人が躍動する、まさに『FIVE ON THE MOVE』な瞬間が訪れ、ある者は笑顔満開で、またある者は涙で視界を歪ませながら、最高の時間を存分に味わったのだった。

1.Palette
2.All This Love
3.Citrus
4.Parallel World
5.Whistle Song
6.Bluebell
7.Waltz fo April
8.I like it
EN.
9.月待つ島まで

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