【ライブレポート】2020/8/23 LACCO TOWER 再燃 ~ライブハウスと電波にのって編 心臓文庫は再燃の果てに~
※アーカイブ視聴は2020/8/30まで可能ですので未視聴の方はぜひ。1000円です!
既発のアルバムとライブハウスをフィーチャーしたオンラインのリバイバルツアー「再燃 ~ライブハウスと電波にのって編」もとうとうファイナル。本来であれば各ライブハウスにて開催していたはずのこのイベントも、コロナ禍における情勢変化によりオンラインでの開催となりました。
正直言えば、最初は配信ライブにそこまで期待値が高かったわけではありません。でも実際に体験してみると、音のひとつひとつをよりクリアに捉えることができたり、各メンバーのアクションをしっかり追えたりと、配信ならではの楽しさがあることに気づきました。
さらにLACCO TOWERらしい創意工夫も随所に見られ、これはこれでひとつの音楽エンターテインメントだなと思えるようになったんです。
そして迎えた、ツアーファイナル。自分がLACCO TOWERと出会えたアルバム『心臓文庫』が主役の日です。ライブでは久々に再会することになる曲もあり、わくわくしながら配信画面にアクセスしました。
「狂想序曲」が爆音で鳴り響き、重田さんをトップバッターに次々とメンバーが登場。ラッコのリモート配信ライブではお馴染み、メンバーごとのウィンドウがひとつずつ順番に出現していきます。心臓文庫当時の衣装でバッチリ決めている5人。
今日はケイスケさん(&真一さん)のみ某所にてパフォーマンスとのこと。自宅ではない広い空間で存分に歌い、演奏することができます。画面上でも全体をケイスケさんカメラが占拠しており、他のメンバーウィンドウがケイスケさんカメラを背景にするかたちで四隅に配置。
「リバイバルツアー再燃ファイナル 大阪Music Club JANUS 心臓文庫は再燃の果てに~ LACCO TOWER参ります、どうぞよろしくお願いいたします」
ライブ前の口上を終えるとさっそく演奏スタート!1曲目は『心臓文庫』でもトップを飾る、「罪之罰」。青、赤、オレンジ…様々な色合いを惜しげもなく使う鮮やかな照明が印象的です。今までは自宅で歌っていたケイスケさんが光の演出でより華やかに変身。ある程度制約から解放され、より一層彼の魅力が画面を通じて伝わってきます。そして曲終盤に炸裂する真一さんの(誰が悪者だ)コーラスも強烈な印象を残します。
歌い終わったケイスケさん、思わず「ひろーい!」と叫ぶ。ひとり広いステージで歌うこの状況に「ソロデビューしたみたい」とのコメントも。今回はシステムの関係上、ケイスケさんと真一さんは同じ場所にいることも伝えられます。とはいえ、ふたりの距離はしっかりと取られている模様。
口達者なケイスケさんが中心となったトークで空気を温めながら、手元のスマホで視聴者からのコメントをチェックしたり投げ銭の途中経過を知らせたり。
こうしてライブ中にも関わらず、観ている人たちとのコミュニケーションを取っていくスタイルも配信ならでは。ラッコのオンラインライブではお馴染みの光景にもなりました。
トークにかなりの時間を割いてからの2曲目「楽団奇譚」では、ケイスケさんがハンドマイクで熱唱。疾走感たっぷりでグルーヴもビンビンなバンドサウンドがたまらない。
たとえ目の前にいなくても、画面の向こうにいるファンがちゃんと見えている。照れも躊躇もなくまっすぐにこちらを見て拳を上げろと煽るケイスケさんの姿に、そんなことを思う。
「後夜」でのパワフルかつ高速なドラムにテンションが上がる。ライブハウスにいなくても、ヘッドホンを通じて腹までズンズン響いてくる。さすが重田さん。
曲が終わると再び「ひろーい!」とはしゃぐケイスケさん。このタイミングでジャケットを脱ぎましたが、暑いから、というよりも今日は動ける範囲が広いのでより動きやすくしたかったのかなと思ったり。カメラの前で顔アップ状態ばかりでなく、全身もしっかり映し出されるので、裸足でパフォーマンスしていることもしっかり確認できます。
さて、本日のライブは大阪Music Club JANUSとの共催ということでJANUSに関するトークも。本来のツアーでは4年ぶりにお邪魔するはずだったということで、たとえ配信になってもライブハウスと一緒にやっていることに意味があるライブ。今回のツアーでも各地でライブハウス関係者がリモートや手紙で登場してきました。今日もJANUSの店長である吉田浩二氏がリモートにて出演。
LACCO TOWERのメンバーとは、吉田氏がバンドマン時代に接点があったというエピソードも披露してくれました。(啓示さんや真一さんと挨拶をしたそうです)
個人的に嬉しかったのは、今日の配信ライブについて吉田氏が「すごいクオリティでびっくり」と発言したことです。自分が何をしたわけでもないのになんだか鼻が高くなる感じ、きっとラッ子のみなさんならわかりますよね?目の前で何百というライブを観てきたであろうライブハウスの店長さんから出た言葉ですから、なおさら誇らしい。
今回の再燃ツアーでこうしてライブハウスのスタッフさんたちの声が聞けたというのも、すごく嬉しいことでした。普段なかなか触れる機会もないですからね。ライブはもちろんバンドやアーティストが主役です。でも主役を支える裏方さん、スタッフさんの存在にも光を当てることで、そのライブやイベントの持つ意味が観ている我々にとって大きくなってくる気がします。
ブッキングライブだったら、どういう意図をもってこのメンツを呼んだのかをアピールしてもいいと思いますし。そういうライブハウス側のポリシーやコンセプトなんかをアピールし続けることもライブハウスが個性を発揮していくうえで大事なことなんだよなあ、と。
…ちょっと話が逸れました。
えーと、次が4曲目ですね。大好きな「蜂蜜」。ゆったりと始まりサビから加速する展開にカタルシスを感じますし、1番が終わったあとのザ・大介サウンドともいえるギターもたまらない。
間奏時、ケイスケさんの顔が照明の影で覆われる演出もいいですね。くるくると指、いや手を大きくまわすケイスケさん。身振り手振り、広いゆえに可能になったアクション。ライブハウスでもよくやってくれていました。
ここでケイスケさん、ネクタイを緩めます。いよいよ動きやすくなって今日のステージを有効活用する準備が整ってきました。
「世界分之一人」の冒頭、真一さんのピアノがゆったり、やさしく響きます。重田さんのドラムが続き、大介さんのギター、そしてケイスケさんの歌が加わる。最後に啓示さんのベースが繋がって5人のハーモニーが完成。少しずつ増えていく1番のAメロと、最初から全員揃った2番のAメロ。その違いを味わえるのもまた楽しいです。
この曲でも間奏でケイスケさんが影になる。残像を生む重田さんのスティックさばきも見事。大介さんのギターソロもカッコいい。せっかくなら、大介専用エフェクターカメラが欲しいな…。どのタイミングでどう操作しているのかを観察したい。
ここから長めのMCタイム。先ほど緩めたネクタイをついに外したケイスケさんです。ファイナルだけに感慨深いと大介さんが言えば、ツアー開始当初は手探りだったけれど、みんなが観てくれて、ついてきてくれたからなんとかできたと感謝の言葉を告げるケイスケさん。
投げ銭では
サンキュージェッツください
サンキューロッキューください
の2つがそれぞれ1つ、2つと売れているとのことで、リクエストに応えてのパフォーマンスも。
「今日はファイナルだ!みんなありがとな!サンキュージェッツ!」
「今日は今日しかねえからな!サンキューロッキュー!」
いずれも照明を伴っての演出で、なかなか派手に決まりました。
※LACCO TOWERの投げ銭は金額表示のみではなく、個別のメニュー名が設定されているのです。余談ですが、先日のフジロック配信において、井上陽水のパフォーマンスに対して「傘代」と書いてスパチャしている方がいてセンスあるなあと笑ったんですけど、投げ銭もひとつのエンタメになりうるなあと思った次第です
ライブはすでに中盤戦突入。LACCO TOWERには珍しいタイプのギターから始まる「珈琲」。BLANKEY JET CITYやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを彷彿とさせるような、どこかアウトロー感の漂うギターが好きです。
マイクスタンドを使って歌うケイスケさんは歌詞に出てくる「数センチ」「隙間」「香」「ゆらり」をジェスチャーで表現しながらのパフォーマンス。長く深くラッコを観ているファンなら、音を消してもケイスケさんのアクションを観ればどの曲を歌っているのかわかるかもしれない…。
間奏前に“お砂糖みたーーい!!”と真一さんが絶叫コーラスブッ込んできて思わず笑ってしまったら他のメンバーも全員にやけていましたね。あれはアドリブ??
コメディ要素もありつつ、カッコいいところもたっぷり。聴きごたえのあるギターソロも、ムードを演出する真一さんピアノも最高です。
LACCO TOWERは比較的マメに毎回ちゃんと楽曲タイトルを紹介してくれるのでありがたい。同じことをコメントしていたファンの方もいらっしゃいましたが、観ている全員がすべての楽曲を完ぺきに把握しているわけではないので、今の曲がなんていうタイトルなのかを教えてくれる、その行為は必ず次に繋がると思います。特に今はサブスクが浸透してきているので音源に直結しますからね。こういうアクションは若手バンドの良い見本になるなあ。
続いては、画面上に大介さんのウィンドウが大きく映し出され、スロウテンポなギタープレイが始まりました。やがてケイスケさんが再登場し、その後に5人の画面に切り替わる。
演奏された曲は「蛍」です。ベースラインがめちゃくちゃ気持ちいい。ヘッドホンのおかげか、音のひとつひとつが際立ちます。全員の音をしっかり拾えるのが配信ライブの魅力かも。ケイスケさんは手も体もよく動かします。歌うという行為は喉と口を動かすだけじゃない。そういえば、ここファルセットだったっけ?という箇所がありました。音源と聴き比べても面白そうです。
「秘密」は真一さんのピアノソロ始まりで、先ほどの大介さん同様、画面を真一さんが占拠します。後半劇的になる長めの独壇場。
「大阪の皆様、電波の皆様、後半戦準備よろしいでしょうか?いくよー!」とケイスケさんの号令で「秘密」のスイッチオン!大介さんもギターを替えてのプレイ。
一番のサビ部分、歌詞を間違えて(?)少し照れ笑いを浮かべるケイスケさん。サビをエア熱唱していた大介さんは、まるでケイスケさんをフォローしているように見えました。
「林檎」ではカメラに顔を近づけて荒ぶる啓示さんが楽しめます。「大ちゃんいこうか!」の言葉を合図に始まる大介さんギターソロや、啓示さん同様荒ぶった真一さんのスタンディングピアノも飛び出す。同じ場所にいるがゆえ、ケイスケさんを照らす光が真一さんにも降りてきて、淡いピンクの光が妖艶な真一ジェットを演出。見どころたくさんです。
MCでは、メンバーと会わないままツアーが終わるという斬新な状況についての話題や、クーラーのない部屋でライブするのは無理だと気づいたケイスケさんの話で盛り上がります。
そしてメンバーの中で唯一、画面占拠プレイをしていない啓示さんが次はメインを張る番だということで、啓示さんフィーチャーでベースソロがスタート。ベースのソロといえばスラップをイメージすることが多いんですが、今日の啓示さんは丁寧にメロディを弾いてくれました。こういうタイプは珍しい。
ということでこのメロディを受けて「夏ですね、夏やな!夏やなおい!」とケイスケさんが叫びLACCO TOWER×夏=な曲、「藍染」が始まります。
啓示さんと大介さんが笑顔で演奏している姿が目に焼き付いているなあ。大介さんは途中でぴょんぴょん飛び跳ねながらの演奏。カメラに近づいてウィスパーなファルセットを披露するケイスケさんがまたセクシーでした。
「ちょっとはいい夏になりそうですか?」という言葉に、画面の向こうで多くのラッ子さんたちが頷いたことでしょう…!
ケイスケさんが視聴者からの「ベースソロに拍手!」というコメントを拾うと、他のメンバーがそれぞれに拍手する(重田さんはスティックで)。LACCO TOWERのこういうところが、好きです。
真一さん以外は他のメンバーと会えなかったこの数か月。再燃ツアーも終わるしメンバーに会いたいということで告知がありました。
9月5日、6日 伊勢崎市文化会館にてラッコ名物企画「黒白歌合戦」無観客ライブ開催
「次の楽しみ、約束を作るからその日までどうか頑張って」
ケイスケさんの言葉が沁みます。あの電柱まで走り切ろう、そんな目の前の小さな目標を積み重ねてもがいていた昔を思い出す。
「最後ラストスパートいきましょうかみなさん!」
「楽しいことは作ればいい」
「今日が未来の前夜でありますように」
そんなメッセージとともに「未来前夜」。青い照明が鮮やか過ぎて、たまに合成感が出ているケイスケさんが神秘的ですらある。マイクをカメラに向けて我々の声を促すアクションが、配信ライブだけどただ観ているだけじゃなく、ライブに参加している気分にさせてくれる。
「春なんて絶対やってくるから大丈夫やからね」
「笑ってくれよ画面の前で!」
そして「薄紅」へ。何度聴いても飽きることのない名曲。スネア、バスドラが心地いいな。間奏で「会いたいなあ」を連呼するケイスケさん。歌いながらカメラに手を当てて「携帯に、テレビに当ててみて」と促すと「伝わったかい?」と一言。電波を通して繋がっている。真一さんの名言(?)「遠いのは距離だけだから」を思い出す。
本来なら
“さようなら”
と歌うところを
“さようなら(なんかせんよ!)”
と付け加えて歌うパフォーマンスも嬉しい。
充実感いっぱいな啓示さんの表情も良かったなあ。
歌い終わると、ケイスケさんが「ホントは薄紅で終わる予定だったけど」と前置きしてアンコールを宣言…するも画面右下のウィンドウでは大介さんが慌てて違う違うと手でバツ印を出している。気づかないケイスケさんは「やるかもって言ってたあの曲いける?やるよ!」とメンバーに確認。誰も流れを止めようとせず、ただニヤニヤしている…。
ここでようやく「アンコールちゃうわ!」と我に返ったケイスケさん。たかぶりすぎて「薄紅」がラストナンバーだと思ってしまったんだそう。思わぬハプニングでしたが、ここまでド派手にトチるなんて珍しい。よっぽど興奮状態にあったんだろうなと、むしろ嬉しくなります。
本編最後となる曲をやる前に、ケイスケさんからのメッセージ。
「再燃をずっとやってきていろいろわかったことがあります」
「これは、あなたたちの目の前でやるライブの代わりにはなりません」
「別の俺たちの表現方法だと思ってます」
「画面の前だから伝わることもあると思う」
「これからも俺らはこういうことを続けていく」
「時代が変わってもやり方が変わっても」
「なんとかできることを見出して」
「そこから新しいLACCO TOWERを伝えられたらと思う」
「これをやるにあたり、チームのみんなが苦労していました」
「僕ら5人は楽しそうかもしれないけど」
「嫌なこともたくさんあった」
「こういうふうにジャニスと一緒にできてることが嬉しい」
「ホントに大事な人っているはずです」
「それは俺らじゃないと思う」
「隣にいる人、頭に浮かんだその人を大切にしてください」
「こういうふうになって会えなくなって」
「当たり前のものが当たり前じゃなくなって」
「大切な人が、大好きな人が身にしみてわかったと思う」
「俺はチームのみんな、LACCO TOWERを大事にしたい」
「みんなは俺らじゃない」
「俺らは場所であり、きっかけだから」
「隣にいる人、頭に浮かんだ人を愛して、大事にしてください」
「それに気づけただけでも」
「この期間は無駄じゃないと思う」
「改めていい時間を作れてよかった」
「俺らはただの場所だから」
「大事な人を大事にして」
「愛している人を愛して、またここに集まってください」
「いちばん大事な人を愛せるように」
「いちばん大切な人を大切にできるように」
「愛している人を愛せるように」
「相手もそう思っているように」
「あなたもそう思うように」
最後はそう締めくくってラストの「相思相逢」へと繋げていく。この歌もホントに好きなんでめちゃくちゃ嬉しかった。本編最後という大事な場所に配してくれたことも。
結果的に予告されたかたちになったアンコールでは「喝采」を披露。目の前が開けていく、終わりではなく始まりを示唆するような希望にあふれる、そんな「喝采」だったような気がします。
「素晴らしき明日に手を叩けるように」
「明日からまた頑張ろうぜ一緒に」
「死ぬなよ生きろよ美味しいごはん食べろよよく寝ろよ笑えよ!」
すべての思いが詰まったメッセージを叫んで【再燃 ~ライブハウスと電波にのって編 心臓文庫は再燃の果てに~】が無事、終幕となりました。
冒頭でも触れたように、『心臓文庫』というアルバムは自分がLACCO TOWERとちゃんと出会えた、その象徴ともいえる作品なので思い入れが強いです。未来前夜や薄紅はライブの主軸曲として今もなお、セットリストの常連になっていますが、楽団奇譚や世界分之一人、珈琲、相思相逢等、そう頻繁に聴くことができない曲も当然ながらあるわけで。
精力的に新しい曲を生み出しているLACCO TOWERだからこその贅沢な悩みですが、そんな久しぶりな名曲たちとの再会を果たせて、個人的にはとても満たされたツアーファイナルとなりました。思わぬハプニングもあり、また各自のソロフィーチャーもあり、盛りだくさんな2時間。
リモートでこれだけのクオリティを作り出せるなら、実際に5人揃ったらどうなっちゃうんでしょう!? コロナ前までは当たり前だったことが今ではレア感満載な、全員集合ライブ。観客はまだ集まれませんが、少なくとも俺たちのヒーロー5人は集結しますからね。集まれなかった時間をエネルギーに変えて、思いきり爆発させてほしいです。
ヒーローでふと思いましたが、勝手なイメージ(戦隊モノ王道5色)でカラー設定すると、自分的にはこうなります。
赤:ケイスケ
青:啓示
ピンク:大介
黄:重田
緑:真一
既に設定されているメンバーカラーを無視して考えてみましたが、みなさんなら、どうでしょう?
セットリスト
01.罪之罰
02.楽団奇譚
03.後夜
04.蜂蜜
05.世界分之一人
06.珈琲
07.蛍
08.秘密
09.林檎
10.藍染
11.未来前夜
12.薄紅
13.相思相逢
EN.
14.喝采