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【ライブレポート】2023/1/19 SHELTER pre. “Make waves”@下北沢SHELTER

下北沢SHELTER企画のイベント『Make waves』に行ってきた。贔屓にしているHwylが出演するから、というのがいちばんの理由だが、他にも気になるバンドがいたので、楽しみにしていたこのイベント。

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく』放映終了後のSHELTERは初めてだったが、SNSを騒がせていたような、外観だけ撮影する聖地巡礼組は見当たらず。

ブームの波は落ち着いたのかな、と思いながら中へ入ると、今までSHELTERではあまり見たことがない、海外組ともいえる外国の方々の姿が。しかもかなりの割合(自分が入場したときは会場の3割、いや4割は外国の方だった)

今日の出演者の中に、ワールドワイドでその名を轟かせているバンドがいるのかなとも思ったが、よく見るとライブハウス内を興味深そうにスマホで撮影していたので、おそらくは『ぼっち・ざ・ろっく』のファンなのだろう。

SNSにて「外観撮影するだけじゃなく、せっかくなら中に入ってライブを観てください」といったアナウンスがされているのは目にしていたが、ちゃんとハコの中に入ってライブを楽しむ、そんな海外勢の積極性につい顔がほころんでしまった。

さて、前置きが長くなったが、各出演バンドのライブについて、手短ではあるが振り返ってみようと思う。

ちなみに今日の出演は以下の5組。

peeto
Hwyl
the satellites
健やかなる子ら
コールスロー

peeto

トッパーは、千葉県柏市発のカルチャーロックバンド、peetoだ。2017年に結成とのことで、若手から徐々に中堅へとシフトしていく頃だろうか。

メンバーは松井友哉(Ba)、野田択也(Vo/Gt)、Koto(Dr)、そして鮨朗(Gt)。金髪&タトゥーの鮨朗がビジュアル面で目を引く存在となっている。

「Urban Rock from Town」を掲げているとのことだが、その看板に偽りなし。都会的センス漂う、ブラックミュージックやシティポップといった味わいの音楽を鳴らしていた。また、そんなサウンドに野田の歌声もマッチしているように感じる。

アラフォーやアラフィフ世代にとってのギターヒーローのような、バキバキに歌い上げる鮨朗のギターもキャラが立っている。

バンドのシンクロバロメータともいえる、歌い手ではないメンバー(Koto)のリップシンクもあり、ステージには良いグルーヴが生まれていた。

野田がエレキからアコギに持ち替え、「マジでいい曲だなって思ったんで、心して聴いてください」と告げて披露した新曲「最強の二人」は、どこかアニメのエンディングを思わせる、少し哀愁を感じさせるメロディが印象に残る。

「STREET」ではKotoの爽やかなコーラス、さらには松井と鮨朗がステージ前方でグイグイとアピールするプレイを見せるなど、起伏に富んだアクトが繰り広げられた。

ラストは、彼らのテーマ曲だという「WORLD」。グルーヴィ―な楽曲の肝ともいえる巧みなベースがフロアを揺らし、ステージとフロアが一体となった大きな手拍子による余韻も残しながら、トッパーとしての役目を果たした。

混んできたフロアを見た鮨朗が「前へ詰めてもらえますか。階段で観てる人がいて、可哀そうだなって」といった気遣いを見せたかと思えば、野田は演奏時ではないタイミングで2回もギター(1回は体だったか?)をマイクスタンドにぶつけるなど、SHELTERに慣れているのか慣れていないのか、なんとも掴みどころがない一面も。(ちなみに2~3回出演経験ありとのこと)

サブスクで聴いていいなと思った「WORLD」を目の前で聴けて、個人的にはじゅうぶん満たされたライブ。1月25日に配信されるという新曲「最強の二人」もあらためてチェックしようと思う。

01.Bible
02.Hit&Run
03.最強の二人
04.STREET
05.WORLD

Hwyl


2番手に早くも今日いちばんの目当てであるHwylが登場する。あきたりさ(Vo/Gt)とクマダノドカ(Gt)による二人組ロックバンドで、リズム隊のふたりはサポートメンバーだ。

転換中のサウンドチェックで「オマエアレルギー」「SIREN」を鳴らし、準備を整えていざ本番へ。

いつものようにRYKEY「Baby」に乗せてステージに登場すると、「セカイヘイワ」でライブは幕を開ける。表情にも力が入り、気合いじゅうぶんなあきた。感情をしっかり声に込めて、多国籍な今夜のSHELTERに向けて“セカイヘイワ”を訴える。

続く「SIREN」では、満を持してクマダがピョンピョン跳ねながら、切れ味抜群のギタープレイ。曲をリードする音はもちろん、サビの裏で刻まれる音も耳を惹きつける。

攻撃力の高い楽曲が2曲続いた後は、のどかなリズムで始まる「Flower Moon」。散歩気分でふわふわと音に身を委ねていると、グッとテンポアップで駆け足を促される。展開も豊富で最初から最後まで飽きさせない。

楽器隊が奏でる音は可愛らしいのに歌詞は強烈な棘を持つ「オマエアレルギー」では、あきたの大声量がSHELTERに轟いた。

あきたは、今日のライブが2023年のライブ初めであり、かつ自身にとって初のSHELTERでのライブであることを明かす。

そんなMCを挟んで披露した、華のあるクマダのギターとライブアレンジとなるあきたの絶唱が光る「暮らし」は、TikTokにとどまらず、Twitterでもバズりを見せた、まさに今、Hwylにとっての代表曲だ。

続いては演奏したのは、「現在地」という新曲。ギターを降ろし、ボーカリストとして曲と向き合うあきた。そっと支えるように歌を引き立たせるクマダのギターを横に、《たまりにたまったストレス 腫れがちな扁桃腺》という、一定層への共感度高めなフレーズを入れ込んで歌う。

また、《お前に出会えて良かったと 思うけど口が裂けても言わない》という愛らしい意地っぱりを表現した歌詞を、茶目っ気ある笑顔で歌うりさちが素晴らしい。

ライブ終盤にはクマダがステージ前方で躍動する「i don't know」や、手拍子を求めて観客との呼吸を合わせる「戯れ言」を演奏する。

そして最後を飾ったのは、Hwylにはちょっと珍しい、テンポの速いアグレッシブな楽曲だ。Hwyl印ともいえる歌詞にも注目の、本日2曲目となる新曲でライブを締めくくる。

「暮らし」を大切に育てながら、さらにその次を模索する彼女たちの、新たなステップが楽しめることを予感させる、2023年初ライブとなった。

1.セカイヘイワ
2.SIREN
3.Flower Moon
4.オマエアレルギー
5.暮らし
6.現在地(新曲)
7.i don't know
8.戯れ言
9.新曲

the satellites


本日3番手となるのは、長崎発東京在住ロックバンド、the satellitesだ。白石亮太(Vo/Gt)、レイ(Gt)、yasu(Ba)、佐藤康平(Dr)の4人組ロックバンド。

これぞロックな荒々しいサウンドをぶちかますと、白石の「ロックバンドやりにきました! やるぞ下北!」の絶叫でライブが始まった。

白石の、ビブラート強めでちょっとクセの強い歌唱がやたらと耳に残る。アーバンなオシャレサウンドのpeeto、感情たっぷりの歌に、歌詞を引き立たせつつ華やかなギターがカッコイイHwylときての、the satellitesのピュアなロックミュージックは強烈だ。

目まぐるしい点滅の照明が目を引く「From DEADEND」では、グッと腰を落としてのyasuのベースプレイや、yasuとレイの《Oh Oh Oh》という雄々しいコーラスも含めて、まさしくド直球なロックをこれでもかと放つ。

「誰が目当て、何が目当てとか、今日はそういうの多種多様なんだろうなっていう日ですけど。せっかくライブハウス、遊びに来たなら、適当に酒飲んで、適当に音浴びて、好きなように楽しんで帰ってください」

そんな白石のMCから、彼のギターと歌で始まる「まじない」や、ピアノの同期音が加わることで、これまで披露してきた曲とはまた違った味わいを提供する「生活の全て」など、ロックの中にも様々なテイストを散りばめてthe satellitesとしての色を出していく。

「ロックスターが助けに来てくれるって!」と叫びながら始まった、その名も「ロックスター」では、白石の「拳!」の合図にフロアも反応、日本語があまりわからない人もいたかもしれないが、まさに音楽に国境はないとばかりに、手が上がる。

さらにラストナンバーとなった「命の唄」でも、「ラスト全員、拳上げてくれ! 命を歌え!」という叫びに反応して、会場は前のめりに。

白石の「ライブハウスは、希望で溢れている。そうあってほしい!」という思いがそのまま目の前の景色に表れているようで、これを証明するかのように、ライブ後にはフロアから大きな歓声があがっていた。

健やかなる子ら

4番手として登場したのは、吉祥寺発の5人組ロックバンド、健やかなる子ら。

ハヤシネオ(MAIN Vo/Gt)、ヨシダフミヤ(Vo/Gt)、スズキカイト(Vo/Gt)、キョウオカタカノリ(Vo/Ba)、ナオイカンタ(Dr)と、メンバー5人中4人に「Vo」の肩書がついていることからわかるように、とにかくみんなが歌う。コーラス的に歌う場面もあれば、ユニゾンやメインボーカルとしてガツンと歌うこともある。

ステージ上のセット図も独特で、真ん中に位置するキョウオカタカノリのマイクはフロアではなく、ステージ下手に向かってセッティングされていた。

また、メインで歌うことが多いハヤシネオはステージ上手が定位置。彼らのライブを観るのは初めてということもあり、いろいろと新鮮だ。

「ぎぃえええええ!!!!ぎゃあああああ!!!!」という絶叫コーラスのオンパレードに、こちらの耳が破壊されるのが先か、向こうの喉が壊れるのが先か、という恐怖のチキンレースが展開。この絶叫と比例するくらいの、激しすぎるパフォーマンスが繰り広げられるのだが、大きく乱れることなくしっかりと楽曲を演奏しているのはさすがだ。

ハヤシは曲を演奏する際、あるいは演奏のアウトロで右手を細かく動かしながら、ポエトリーリーディングを繰り出している。どうやらこれが健やかなる子らのスタイルらしい。

MCでは、「好きなバンド観に来たでもいいし、アニメでもいいし。なんならアニメ僕大好きだし、そういう人大歓迎! 今日はいろんなお客さんがいてドキドキしますね!」と聖地巡礼組も意識したメッセージ放ちつつ、「期待しない僕ら」へと繋いでいく。

絶叫だけではないコーラスワークも見せながら、とどまることを知らない嵐のようなステージが続く。メンバーは皆汗だくで、そんなライブにフロアも大盛り上がりだ。

ハヤシによる、長めの語りから入った「春暁は弧線を描いて」。その文学的なタイトルや歌詞と、暴れまくるパフォーマンスとのギャップから生まれる魅力が光る。

最後は「僕らずっとポエトリージャンク!」の言葉と共に、「ポエトリージャンク」を投下。大歓声を浴びながらステージを去っていった。

コールスロー

本日のトリは、2009年、山梨県甲府市にて結成。“超全員野球型ライブバンド”というコピーが付いた、ヨシモトアツシ(Vo/Gt)、大石テツヤ(Ba)、蓮沼佑太郎(Dr)によるスリーピース、コールスローだ。

こちらも個人的には初体験バンドとなるが、上裸の蓮沼を見て、なかなかにアツいバンドであることを予想するも、その後、私はアツいだけではないライブを楽しむことになる。

「最後HAPPYに終わりたいと思います!コールスローです!よろしくお願いします!」

そんなヨシモトの挨拶から、1曲目「らみらみ」でライブが始まる。素朴で、飾り気のないむき出しの歌声とキャッチーなメロディの相性もよく、初見でも素直にワクワクしてしまう。

続く「ぐっどばいぶれいしょん」も、気づけば拳を上げたくなってしまうほどノリのいい曲。満面の笑みを浮かべながらプレイする大石を見ているだけで、こちらも笑顔になる。熱量はもちろんだが、何より彼ら自身がライブを思い切り楽しんでいるのが伝わるアクトで、時折ごろんとステージに転がるヨシモトの自由っぷりも面白い。

さらに「HAPPY HELL」も披露するが、言葉は伝わらずとも、彼らの熱さとハピネスは伝わったようで、多国籍な会場からは歓声も。決して勢い任せではなく、楽曲の強度もしっかりしているので、わちゃわちゃしたい派だけでなくじっくり聴きたい派でも楽しむことができる。

中盤のMCでは

「Good evening,we are callthrow from Japan!」
「I love this livehouse and party」
「Do you like party?」

と、多国籍フロアに向けて、決して流暢ではないものの、“言葉を伝えたい”という思いはしっかり届いたであろう英語のスピーチも飛び出す。これにはフロアも大いに沸いた。今日、下北沢SHELTERに来た観客すべてに楽しんでもらいたい、というヨシモトの素晴らしい機転だったのではないだろうか。

この盛り上がりのなか、「ここにいるみなさんが大好き!って歌歌います」と告げて「大好き」という曲を、さらに「夕方の時間の太陽、サンセットの話。あれはめちゃくちゃ綺麗なんだ。俺は去年の今頃くらいに知りました。あの綺麗な夕日の歌」とロマンチックな言葉を添えて「夕映え」を披露する。

言葉を大事にしているのが伝わってくるような、日本語詞がしっかりと聞き取れる歌唱も初見の身には優しく感じる。

「またコールスローと遊んでください!どうもありがとうございました!」と最後に挨拶をして、ラスト2曲「優しくしてよね」「ハートのかけら」を届けるコールスロー。

特に「優しくしてよね」では

《雨はどうやら上がったみたいだ》
《坂を下る自転車の音がする》

《そろそろ外に出かけてもいいかな》
《布団の中はもう十分探検したから》

という、イメージをかき立てられる冒頭の歌詞が秀逸。ライブは激しく熱く、メロディもポップで耳馴染みがいいうえに、歌詞までもが確かな世界観と共に存在感がある。

多様な顔触れが揃ったフロアに向けての心遣いもあり、今日のトリを担うにふさわしいバンドだと、ライブを観終わって改めて感じさせてくれるコールスローだった。

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