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【ライブレポート】2023/11/29 Rhythmic Toy World 10Days TWO-MAN LIVE 「玩具大戦」DAY7 VS. LACCO TOWER

Rhythmic Toy Worldが10本の2マンライブを行う、ファンにはおなじみとなったスタイルの企画。2023年は「玩具大戦」と題し、渋谷CLUB CRAWLにてこれまで9本のライブを行ってきた。


そして今回、メンバーの体調不良で延期となっていた、LACCO TOWERとの2マンがついに開催。裏ファイナルと位置付けられたこのライブを、振り返ってみようと思う。

LACCO TOWER

「狂想序曲」を登場SEに、重田雅俊(Dr)から順に続々とステージに現れるメンバーたち。黒が映えるLACCO TOWERの中でも、特にそのスーツ姿から色気が溢れ出る松川ケイスケ(Vo)の姿が眩しく映る。

重田のハイハットが4カウントを数えると、一定のリズムから混沌へと繋がる短い演奏を経て、ケイスケの「LACCO TOWERです、どうぞよろしく!」という挨拶とともに「化物」でライブスタート。

細川大介(Gt)の研ぎ澄まされたギターサウンドとケイスケの切れ味あるボーカルの相性も抜群だ。レフティギタリストになったことで、ステージ下手の塩﨑啓示(Ba)と上手の大介の構えが左右対称となり、その中央にドンと構えるケイスケを含めた構図が美しすぎる。

1曲終えると、ケイスケが言葉を紡ぐ。「ちょっとお待たせしました…お待たせし過ぎたのかもしれません。図らずも、『玩具大戦』裏ファイナルという役目を仰せつかることになりました」と、ライブが延期になってしまったことに言及しつつの挨拶。

フロア後列から前列まで、それぞれのスタイルで楽しんでほしいとも伝えながら、2曲目「林檎」へ。気づけば早くもジャケットを脱いでいるケイスケ。激情、という表現がしっくりくるような激しい歌とライブパフォーマンスに、CRAWLは大きな盛り上がりを見せる。大介の鮮やかなギターソロも飛び出し、真一ジェット(Key)は椅子の上に立ちながらの演奏。そんなステージを、袖から思いきりはみ出しつつ拳振り上げて楽しんでいる、Rhythmic Toy World・須藤憲太郎(Ba)の姿も。

続く「傷年傷女」は、真一の独壇場だ。ショルキーと共に、ケイスケと入れ替わる形でステージ前方へとポジションを変え、主役へと躍り出る。この曲が始まると会場は毎度、お祭りのような賑やかさに覆われる。暴れまわりすぎてマイクスタンド(?)を倒しケイスケを驚かせたり、左手を左右に振るワイパーでフロアを煽りながら右手ではしっかりショルキーで音を奏でる器用さを見せたり。果ては、謎のVRゴーグルを装着してのパフォーマンスにフロアもざわめく。

4曲目の「雨後晴」では、先ほどのお祭りが嘘のように、真一が奏でる美しい鍵盤や雄々しい《OH OH OH OH》のシンガロングが響き渡る。「もっといけるやろ!」というケイスケの求めに応えるフロアの勢いとともに流れる、スケール感たっぷりで清らかなメロディに思わず酔いしれてしまう。

大介は、ライトハンドならぬレフトハンド奏法を駆使してより豊かなギターサウンドを表現していた。

「リズミックにとって、長い『玩具大戦』、俺のせいやけどごめんね、ようやく千秋楽。この素晴らしい日に、みんなの喝采をもらっていいですか?」

こんなケイスケのコメントから、「喝采」へ。まさしくリズミックへの想いを込めたかのような選曲。そしてそのタイトルに違わぬ、晴れやかな曲が『玩具大戦』最終日を祝っているかのよう。

《愛おしいあなたは》のフレーズを歌いながら、ケイスケが大介の髪を撫でる場面は極上のファンサービスだ。

LACCO TOWERのライブは、あっという間にラスト1曲。最後の曲を演奏する前に、ケイスケは語る。

「玩具大戦、僕のせいで今日がファイナル」
「リズミックには迷惑かけっぱなしで、会わす顔がない」
「リズミック好きのみなさん、ラッコ好きの皆さんと同じ空間にいれてホントに幸せに思います」

「ちょっと前に喉やってしまったとき、一番最初に、啓示に連絡くれたのはリズミックのマネージャーでした」
「僕の代わりにうっちーが歌ってくれた時、後ろで聴いてくれたのは、すーちゃんでした」
「リズミックはバンドに愛されるバンドです。リズミックを好きになったあなたに、間違いはないと思う」

そんなふうにリズミックへの感謝を述べてから、ケイスケが一つひとつの言葉を噛みしめるように頭サビを歌い出す。そして一呼吸置くと、「最後は、うっちーが俺の代わりに歌ってくれた『遥』という曲を」と告げる。

※参考
【ライブレポート】2023/3/19 LACCO TOWER「独想演奏会~四人囃子編~」@渋谷WWW X

ライブは本来、それ一本で完結する。その日その場所で披露される楽曲やパフォーマンスが全てで、それ以上でもそれ以下でもない。しかし、その一本とは別に、これまでに紡いできた物語がライブに宿るときがある。

今日のLACCO TOWERのライブは、まさにRhythmic Toy Worldとの物語と共に作り上げられたものだったのではないだろうか。

気合いが入っているのは当たり前で、そのうえで「楽しい!」という気持ちがステージから溢れ、啓示や大介を筆頭に笑顔がこぼれまくっていた、そんな『玩具大戦』最後を飾る対バン。

裏ファイナルとはなったものの、LACCO TOWERは最終日にふさわしい堂々たるライブを披露してくれた。

1.化物
2.林檎
3.傷年傷女
4.雨後晴
5.喝采
6.遥

Rhythmic Toy World

続いてはリズミックの出番だ。『玩具大戦』正真正銘、最後のライブとなる。

いつものようにBOOM BOOM SATELLITESの「Kick it Out」をバックに登場するメンバーたちは、それぞれがRhythmic Toy WorldやLACCO TOWERのタオルをフロアに向けて掲げる。それはまるで合戦時の幟(のぼり)のようでもあった。

「Rhythmic Toy Worldへようこそ! まずはこの曲、青と、踊れぇ!」

こんな内田直孝(Vo/Gt)の挨拶から「青と踊れ」。ハンドマイクを手に、その喉を自在に操りながら軽やかに歌い上げる。アンセムと言っても差し支えないこの名曲に、1曲目からフロアからはたくさんの手が上がり、物販にいたLACCO TOWERのスタッフもノリノリで楽しんでいる、そんな『玩具大戦』ラストステージの幕開け。

2曲目は、アルバム『HEY』から「あなたに出会えて」。ハンドマイクからギターに切り替えた内田が曲を引っ張り、佐藤ユウスケ(Dr)の怒涛のドラミングと須藤のベース&雄叫び、そしてこれを聴けば曲がわかるという、看板のひとつともいえる岸明平(Gt)のギターリフが強く激しく、曲を彩っていく。

「心に灯す青い炎、青炎」の言葉と、鮮やかに光る青の照明と共に「青炎」へ。この曲は、絶対王者・青森山田高校サッカー部に挑み続ける、同じ青森県の八戸学院野辺地西高校サッカー部に密着した“ポカリスエット”コラボショートムービー提供曲だ。

鼓動を思わせる効果音。耳が惹きつけられるベースラインやタイトなドラムをはじめとするリズム隊の見事な演奏も印象的。そして挑戦を後押しするような開けたサビが、心の解放をもたらしてくれる。

MCで内田は、まずLACCO TOWERへの感謝を述べ、さらに「玩具大戦においては」と前置きしたうえで、「ケイスケさんおかえりなさい」とその復活を労う。ここまでは美しい先輩後輩の図だ。しかし小さな穢れが、美談を異なる方向へと誘う。

全ての元凶は、真一ジェット。先ほどのLACCO TOWERのライブ、「傷年傷女」にてVRゴーグルを装着しながらのパフォーマンスを披露していたが、これに内田は「あの中身はHな動画が流れていた」と暴露する。

悲しいかな真一は、『玩具大戦』の“玩具”から “おとなのおもちゃ”をイメージしてしまったらしい。本当はもっと過激なアイテムを持参する予定だったらしいが、それはさすがに、とラッコのメンバーに止められたんだとか。

そんなエピソードにフロアからは笑い声に交じって、不穏なざわつきも…笑。ステージ袖から、真一が何やらクレームを入れていたようだが、残念ながらその声は、ステージまで届かず。

冒頭3曲の骨太な構成から一転、真一ジェット由来の下ネタによって場が荒れかけた(?)ところで、次のブロックへと突入。透明感のあるギターリフと勢いよく飛び跳ねる須藤と岸の両翼が目印ともいえる名曲「s.m.p」だ。

ステージに負けじとフロアも多くの観客が飛び跳ねている。歌詞に合わせて灯る赤い照明もまたこの曲の代名詞のひとつ。青が鮮やかに光った「青炎」との対比も面白い構成だ。

続く「バーサーカーステップ」は、個人的にライブで初めて聴いた曲。途中、わずかな間に挟み込まれる裏打ちのリズム含めて、実に踊りたくなる一曲だ。赤の照明とも相まって、情熱的なステージが繰り広げられていた。須藤のベースソロを挟んでからの間奏も見せ場たっぷり。バンドとしての演奏力を見せつける展開だ。

曲が終わっても音は止めず、そのまま「とおりゃんせ」へとなだれ込む。リズム隊がグッと盛り上げるイントロ、サビで勢いよく拳を振り下ろす岸、四つ打ちリズムに合わせて頭を振りまくる両翼のふたり。そして「かかって来い!」とフロアを煽りながらライブの温度を高めていくフロントマン内田。10年以上前に作られた曲だが、個々のスキルを磨き上げ、ライブ鉄板のアッパーチューンとして今もなお堂々君臨する「とおりゃんせ」は圧倒的だった。

次の曲「いろはにほへと」では、LACCO TOWERからケイスケがゲストボーカルとして登場。『玩具大戦』では毎回、こうしたコラボが実現していたが、まさかケイスケ×「いろはにほへと」とは…!

ケイスケと内田、ふたりが代わる代わるメインボーカルを務めたり、あるいはユニゾンで歌ってみたりと、その歌声と絵面が豪華&華やか。同曲での名物ともいえる「は?」と言い放つ場面で、ケイスケが小首をかしげる仕草を披露。恐ろしいまでの可愛さに、思わず心臓がドキドキしてしまう。

また、これも名物のひとつである曲中での須藤の叫び。今回は「LACCO TOWER LOVE!!」。まさに須藤、心の叫びであった。

ラストはロングトーンまでふたり一緒に歌いきり、豪華コラボはあっという間に終わってしまった。もっと、もっと欲しい…これは癖になる…。またの機会を楽しみにしたいところだ。

演奏が終わった後のふたりのトークでは、先ほどの内田によるVRネタ暴露時、袖から真一が叫んだ言葉が、ケイスケによって明らかに。

「ダメだって、それはダメだって!」

須藤とは対照的だが、それもまごうことなき、真一、心の叫び。

また、LACCO TOWERとRhythmic Toy Worldは肉体関係をもったようなものだ、と内田。体調不良のケイスケに代わって内田が歌う、そんな場面が何度かあった2023年。これに内田は、頼ってもらえて嬉しかったと話す。

さらに「リズミックだけでなくラッコが好きな“ラッ子(ラッコファンの呼称)”ですね。『ラ』に、小さい『ッ』に子供の『子』…子供って年齢?」と爆弾発言で場内騒然。ケイスケからも「40超えとんねん!本厄!」とツッコミが入る。

そんな笑いを挟みながら、I ROCKS BASEでの弾き語り体験を振り返る内田。その現場で照明を担当した真一のエピソードでひと笑い生んだ内田だったが、ケイスケが退場した後に「まさかここまでLACCO TOWERをイジれるようになるとは思いませんでした笑」とコメントしていた。

ここからまたスイッチを切り替え、真摯なMCを届けていく。「世の中、コミュニケーション。自分がうまくできたことは、キミだけが凄いんじゃない。受け止めてくれる相手がいる。ヘンなイジりも、受け止めてくれる人がいるから笑える」

「キミには、キミの言動を受け止めてくれる相手がいることに、ありがとうという気持ちを。たまにはごめんねっていう気持ちを忘れないことを大事にしたい」

「バンドとファンの関係性も似てるように思う。俺たちが放つ音や言葉を受け止めてくれるキミがいる。だから少しでもキミに、キミの心の1センチ向こうまで近くに言葉を音を届けたいと思えるのは、キミがいるから。ホントに感謝してます」

再び4人に戻ったステージで、そんなメッセージと共に披露されたのは、「消えてなくなるその前に」。こちらも「とおりゃんせ」同様、10年以上前に作られた曲。『軌道上に不備は無し』という、Rhythmic Toy Worldにとって初の全国流通盤となる1stミニアルバムに収録されている。

内田と岸、ふたりのギターが重なり、リズム隊が加わるイントロからグッと引き込まれる。情熱的な曲や情景が浮かぶようなファイトソングだけでなく、こうして静かに心の奥深くへと入り込んでくる曲もまた、Rhythmic Toy Worldの真骨頂と言えるだろう。後半、拍子が変わるダイナミックな展開が曲をよりドラマチックに仕立て上げていく。

「いつまでも一緒にいよう。そのための今日、そのための明日。一緒に重ねていこう」という内田の言葉から、本日9曲目は「CHAMPION ROAD」。この曲は不思議と、音源とライブで聴こえ方が違ってくる。具体的にどう、とは言いづらいのだが、現場での生歌と生演奏を浴びることで、胸に迫るものがあるというか。ライブで聴いたのはまだ2回目だが、前回よりもさらに曲に入りこめたような気がする。

そして、「今日も俺たちはさ、キミを暗闇から連れ出しに来たんだよ!」という内田のメッセージから、配信解禁済みの最新曲「命の絵」へと続く。彼らにとって記念すべき100曲目となるこの曲は、常にリスナーに寄り添いながら進んできたRhythmic Toy Worldらしい、生きることを鼓舞し、その人の人生を肯定してくれるような歌だ。

《キミを暗闇から連れ出したいのさ》と歌っているが、明るい場所にいるリズミックが暗闇にいるキミを連れ出そうとしている、というよりも、自ら光りを灯して暗闇の中で一歩先を照らしながら進んでいく、そんな光景が思い浮かぶ。俺たちと一緒に暗闇から抜け出そう、そのための力になりたいんだ――。

今までと少し違うとしたら、この一歩先、という感覚かもしれない。前を走るでもなく、後ろから押すでもなく、いつも隣にいるのがリズミック。しかし、コロナ禍からの様々な状況を乗り越えてたくましくなった彼らが、その頼もしい背中を見せてくれたような。

細部にわたる音へのこだわりも見せたというこの曲。今日はギターを弾いていた岸だが、インタビュー記事によれば鍵盤を弾く、あるいはギターと鍵盤を切り替えながら演奏する可能性もあるらしい。ライブごとに異なる「命の絵」が披露されるかもしれない。

本編の最後は「僕の声」だ。こちらも堂々たるアンセムとして会場に一体感を生む名曲。フロア中の拳が上がり、オーラスにふさわしい盛り上がりを見せる。

そしてアンコールでは、まず須藤がステージに再登場し、LACCO TOWERをはじめ、『玩具大戦』に出てくれた対バンへの感謝、そして啓示へのゆるぎない信頼の気持ちを示す。さらに、バンドもいろいろあるが、続けていくことが大事で、辞めなければまたみんなに会えるからみんなで一緒に頑張ろう、と告げる。続けて佐藤が、観客への感謝を届け、須藤がCLUB CRAWLへの感謝を語った。

そして内田は「たった1回のライブでは人生を変えられないかもしれない。でもこの後の数時間、30分でもいい。いつもより強くなった気持ちになってくれたら嬉しいなと思って今日もステージで歌っていました」と話す。

さらに、自分のペースで会いに来てくれればいい、とも語り、そのために未来への約束を残していくと告げると、「『玩具大戦2024』とかで会いましょうよ」と、来年もまた対バン企画を行うことを宣言した。

そんな静かで熱い語りの後で「フレフレ」の頭サビを歌い上げると、「今日も今日とて、キミの心のど真ん中、そしてキミの一番を狙いに来たぜ!」という内田の絶叫から『玩具大戦』ラストソングを演奏。

終幕を惜しむかのようにフロアからシンガロングも巻き起こって、『玩具大戦』は盛大なフィナーレを迎えた。

楽曲制作のアプローチや、音作りへのこだわり、歌詞の内容などRhythmic Toy Worldもキャリアを重ねるなかで変化を遂げていく。でも、ずっと変わらないものがある。それは、いつだってライブハウスで音を鳴らし続けているということ。そして、その歌を通じてすぐそばにいてくれるということ。

ライブはその日限りだけれど、Rhythmic Toy Worldはリスナーの人生と共にある。今日の『玩具大戦』は、そんな気持ちにさせてくれる時間だった。

01.青と踊れ
02.あなたに出会えて
03.青炎
04.s.m.p
05.バーサーカーステップ
06.とおりゃんせ
07.いろはにほへと(feat.松川ケイスケ)
08.消えてなくなるその前に
09.CHAMPION ROAD
10.命の絵
11.僕の声
EN.
12.フレフレ

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