60分即興小説お題「布」

某所で書いた即興小説です。

ルール

・文字数無制限
・構想30分、執筆60分

作品

 夜の校庭、彼女と二人。太陽の光が照らす時はここでは二人とも学生として青春を謳歌する。
 同じ教室、隣の机、部活も食堂もずっと共に過ごしていた。

 それはお互いにとって表の姿、学校から世界を変えようと目論む者もいれば、それを阻止し世界を守ろうとする者。あるいはその両方に当てはまらない、それこそ心の隙間を埋めるために夜の闇に身を投じる者さえもいる。
 私がどれに当てはまるのかは自分でもよくわからない。気付けば自分の身丈ほどもある鋏を持ち、切り刻んでいく。それしか知らない、それが家庭科部、部長の役目だから。役目だから戦っていた。

 今夜、そこに立っていたのはマントを目深に被り仮面で顔を隠した人物だった。昼間は小道具、夜は真剣。

「ねえ、真夏でしょ、そこに立っているのは」
「いいや、僕は違うさ。君の知っている誰でもない」
「隠せないわよ、私には声でわかる身の運びでわかる。だって――――」

 親友じゃないの私たち、そう言おうとさせてはくれない。それを拒否するかのように彼女は斬りかかってくる。私は鋏で受け止める。戦利品で構成された私の衣服もひらりと風を受けて舞った。

「僕は君なんて知らないからね、筋書き通りに倒されてくれないかなあ?」
「またそうやって、隠すのね。衣装であなたの心を」

 グラウンドを目一杯使って行われる部活。端から端まで走り回り。刀を避けつつ校舎の壁を駆け上がる。3階まで駆け上がればそこから脚に力を目一杯こめて空中に飛び魚のように跳ねる。ガラスを割ろうものなら、厳罰は避けられない昼も夜もそれは同じで。

「ああ、僕は美しい君が大好きさ。その大きな鋏で私たちの心を仕立てあげるその力が大好き。君のマントのおかげで僕は真夏になれるんだ感謝しかないよ」
 気付けばフェンス越しまで追い詰められる私。体力の差がありすぎるのよねこの競技。実質運動部には敵わないわ。もちろん体力の差ではだけど。

「あなたは、真夏じゃないわ。真夏の演じる何かよ、そうでしかないわ」
「違うね、僕が真夏さ」
「真夏は私が大好きなんて言わないもの、真夏の太陽を濾過するカーテンなんていらないのよ」
 ポケットに入っていた小さな待ち針を飛ばし隙を作る、彼女が避けた先には巻尺。
「……!」
「無策でグラウンド、走り回ってないの、おあいにく様ね」
 鋏を大きく広げてマントを切り刻む。
「あなたを真夏にしてあげる、照らしてよ大きな光で」
 焦がしてよ私の心を。

「やめて、ぼくは、わたしになりたくない。あんたが好きな僕でいさせて」
「いやよ、私はあなたのこと嫌い。演じる為に自分を変える真夏なんて。その為に仕立てたマントじゃないの返してね?」
 大鋏に反射する太陽は、月明かりのように青白くなっていた。

 全てが終わって現場復帰させるために巻尺や待ち針を回収。血溜まりは拭き取る。最後に切り刻んだマントを一つ一つ拾い集め、縫い合わせる。本当にこの衣装大事にしてくれていたんだな、ほつれが無い。ごめんね、真夏。
 朝日が校庭を照らす頃にはマントはほぼ元通りになっていた。
「大好きよ、真夏」
 マントを羽織り嘘をつく。これからは元のまま部活、出来ないのかもしれない。役目だからとかじゃなくて、わたしが演じるの。カーテンが覆い隠す太陽を。

書いた感想

めちゃくちゃレヴュースタァライトに引っ張られてる文章になった。バトルも初めて書く。
構想30分だったけど、そんな毎度都合良くアイデアって降ってこない。ひらめかないんだよねえ。というわけで苦肉の策みたいになった。
今回はお題一個だけだったんだけども、これ三題噺で三つになったらどうなっちゃうんですか!?
井上心葉先輩毎日これやってたんですか!?えぐすぎ!!!!

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