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緑の伝言。

一歩庭に足を踏み入れると、真緑の光で溢れていた。
色とりどりの花はいつの間にか姿を消し、足元に散らばる僅かばかりのパンジーが点々と揺れる。
雨が降り出し、緑はすっかり露を纏って、きらきらと輝きを増して。
ひときわ光っていたドクダミを思わず摘み取りそうになってしまった。

葉がいちばん美しいのは、やはり雨の日だろう。
殊にこんな新緑の時期は、水を得た魚ならぬ、水を得た葉とでもいうべきか。

人とそのほかいくつかの生き物以外は感情を持ってはいないのかもしれない。
けれど、生きているものがもっとも美しく見えるのは、感情にすると嬉しさや心地よさ、その生き物がもっともそうありたい瞬間かもしれない。

水を求める葉に降り注ぐ雨。
受け止めた葉の色は、どんなふうに描けばいいかわからないほど美しい。

望むものを得て輝ける瞬間があるように。
そんなことを願いながら、傘についた水滴を払い落とした。








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