見出し画像

DSP2022を終えて

【まえがき】

眼視ファンの集いDSP2022、
参加するのは初めてでしたが多くの刺激と感動を得られました。
1晩目は朝まで快晴で、多くの方と歓談しながら様々な望遠鏡で様々な天体を眼視することができました。
2晩目は終始薄曇りでみんなでワイワイと望遠鏡を覗くという雰囲気ではありませんでしたが、懇親会やおふざけの写真撮影で盛り上がり、
快晴はもちろん曇天でも非常に楽しい時間が過ごせることがわかりました。
あっという間に終わってしまいましたが、ここはまさに桃源郷、今後も毎年参加するぞと決意しました。

今回のDSP2022、私個人の備忘録も兼ねて少々細かくまとめておきます。
Deep Star Party 2022 in スターフォーレスト御園
開催日時:2022/5/27 17:00(開会式) ~ 5/29 10:30(閉会式)
開催地:愛知県東栄町森林体験交流センタースターフォーレスト御園

【1日目 日中】

~10:00 ルート確認

自宅の塩尻市から開催地の愛知県東栄町スターフォーレスト御園まではGoogle Mapによると片道2時間30分、165kmの道のりです。
長野県内の観望地しか行ったことのない自分には長距離でした。
普段はせいぜい片道80km1時間以内の運転で済んでいるので。
塩尻北ICから飯田山本ICまで高速道路でその後はひたすら山道、特に後半の山道はストリートビューで周囲の風景や道の状態などを念入りに確認しました。
私は車のナビをあまり信用していないので、変な細い道に案内されたときに早めに気づけるようにするためです。

飯田山本IC (画面上部) を降りてからはひたすら山道

10:00~15:00 食品買い出しと移動

当日午前は近くのスーパーで食品の買い出し、お酒とカップ麺とおつまみを購入しました。このとき買ったお酒はラム酒・バカルディゴールド1本のみです。
この時すでに参加者掲示板では出発された方、会場で準備をしてる実行委員の方、大雨で足止めを食らっている方などの書き込みがあり、ワクワク感が伝わってきました。
15:30に受付開始なので12:00に出ました。初めて行く場所なので運転は緊張していました。
途中国道151号で通行止め区間があり、迂回を余儀なくされましたが大きな時間ロスはなく、15:15ころに会場のスターフォーレスト御園に到着できました。
既に多くの方が機材を展開されており、あれであの天体はどんな風に見えるんだろうなと想像し、夜が楽しみになりました。
私が持ち込んだ望遠鏡は2つ、
13cmアポクロマート(TOA130)と25cmドブソニアン(FRP25cm)です。

会場 芝生広場の様子
13cm屈折と25chドブ、左奥にあるのは津村さんの50cm

【1日目 夜間】

16:30~ 開会式と観望会

既に多くの望遠鏡が組み立てられた芝生広場で開会式です。
実行委員の方たちの自己紹介と簡単な諸連絡がありました。

薄明終了は20:46でしたが、アークトゥルスが見え始めたころからみなさん望遠鏡を覗き始めていました。
この時期のメインはやはりM13、M51、M57、M81&82ではないでしょうか。
いままで同様のイベントは10月に開催されていたようですが、春に開催するのも口径力が試される天体が多くて良いなと感じます。

たまたま隣に陣取っていた津村さん自作の50cmF3.7ドブでさっそく大口径の威力を実感します。
M51の腕はもちろん、M81の腕やM82の中心部の複雑な模様が直視で見えていました。
ほかにフォーマルハウトさんのNinja 400、ヒロノさんの66cm、ほそさんの50cmでこれらメジャー天体を眼視し、
あれが見たいあれも見えそうだと時間を忘れて観望と交流を楽しみました。


・M51

大口径でこれを見たい、そんな筆頭の天体です。
今までは手持ちの25cmドブソニアンでかろうじて腕が見えていましたが、40cm以上では苦労することなく簡単に見ることができました。
ヒロノさんの66cmでは300倍で視野いっぱいにM51を見ることができ、筆で描いたような腕の様子や、銀河と重なっている微光星など詳細に見ることができました。
大口径でM51を見たいというのはみんなそうらしく、66cmには長い行列ができていました。

余談:
50cmで津村さんがM51の導入にてこずっていましたが、
これは手動導入する方にとってはあるあるのようで、
梢さん(Twitter @treetop_star)もそのようでした。
M51は北斗七星のアルカイドの南西側にある三角形の星の1辺にありますが、これが北斗七星の回転によってたまに分からなくなるんです。
十分暗い空ならファインダーでM51が見えるのでいいですが、薄明時に導入しようとすると案外てこずります。
星図で位置を確認しても導入できないときもあります。

アルカイドからM51


・NGC6229

ヘルクレス座の球状星団といえばM13、
しかし他にも眼視可能な球状星団が2つあります。
1つはM92、そしてNGC6229です。
津村さんの50cmでM81を楽しんでいたとき、
梢さんの「3つのうちお前だけちがうだろ」という声が聞こえました。
ほそさんの50cmの周りに人が集まっていて、鏡筒の向きと梢さんの言葉からNGC6229だ!とわかりました。
NGC6229のおおよその位置はここで、M13と比べると小さく暗い球状星団です。

NGC6229のおおよその位置 

同じ倍率でみたときのM13との比較を載せておきます。

156倍見かけ視界60°のM13
156倍見かけ視界60°のNGC6229


望遠鏡で覗くと2つの8等星ときれいな三角形を形成していますが、6229だけぼんやりと星雲状に見えます。
これを発見したのはウィリアムハーシェルですが、彼はこれを惑星状星雲と分類し、その後の多くの天文学者も長らくこれが球状星団と気付くことはなかったようです。
それくらい暗く典型的な惑星状星雲に見える天体で、50cmで覗かせてもらいましたがそれでも球状星団らしくは見えませんでした。
もう少し長時間、高倍率で覗くと球状星団らしい粒状感が出るはずです。
6229のようなマイナーな天体、特にメジャー天体の陰に隠れて注目されないような天体が私は大好きなのですが、
そんなマイナー天体で盛り上がれる仲間がいることに感動を覚えました。

NGC6229のDSS画像 近くの2つの8等星ときれいな三角形を形成している


・M13

自分の25cmと13cm(屈折)、40cm、50cm、66cmでM13を見ました。
40cm以上で見るM13は壮観で、はっきりと中心部分の星々が直視で分離して見えていました。
画像は戸隠高原で撮影したM13ですが、これをそのままモノクロにしたような見え方でした。

M13 2022/5/5 長野県戸隠より撮影

13cm屈折はほかの大口径と比べると暗いですが、自動追尾の赤道儀に載せていることもあり高倍率でじっくり観察ができます。
暗いですが中心部の星ははっきり見えており、屈折独特のコントラストの高さは覗いてくださった方々に感動してもらえ、反射とは違う屈折の良さを感じて頂けました。

・M57

津村さんの50cm、ヒロノさんの66cmでドーナツの形が濃く見えていました。
66cmでは色情報のようなものも若干見え、モノクロではなく緑に近い色が見えました。
そしてM57の中心星、15.7等級の星は66cmなら見えるかなと思っていましたが見えませんでした。もっと長時間の観察が必要のようです。
114中野さんのBorg双眼望遠鏡ではこと座β星とγ星の間にM57があるという星図のような見え方が体験でき、ポツンと宇宙に浮かんでいるM57の様子が新鮮でしたし双眼RFTの魅力も知ることができました。

114中野さんの双眼で見たM57のイメージ、まさにこんな感じで見えていた


・M60 & NGC4647 & SN2022hrs

SN2022hrsは2022/4/16に板垣さんがNGC4647(M60の伴銀河)に発見した超新星で、既に爆発から1か月以上経過していて14等級と暗くなっていました。
14等級といえば衝の冥王星と同じくらいの暗さ、しかし御園の星空なら見えるかもと思い自分の25cmで挑戦しました。
すると100倍で既に2つの銀河のバルジの間に光源が見えており、倍率を上げるとよりはっきり見えました。
NGC4647の広がりも微かに見え、御園が確かにいい空であることを実感できました。

NGC4647の超新星 2022/5/3に撮影 このときで約12等級


・土星

30cm屈折での土星
大口径ドブに並ぶ今回の注目望遠鏡、眠り猫さんの30cmフローライト屈折望遠鏡です。
組み立てから注目を集めていましたが、
SHOWA機械の大きな赤道儀にクレーンを使って組み立てる、組み立てるというより建設のようでした。
2時~3時に土星が見えるので、みなさんこの望遠鏡で土星を見るまでは眠れないとの思いだったはずです。
長い行列に並んで見た土星はまだ低空だったせいかユラユラで、真の実力を味わえなかったことが少々残念でした。
しかし明るさは別格であんなにまぶしい土星を見たのは初めてでした。
今後また覗く機会があってほしいです。模様の複雑な木星がどのように見えるかが楽しみです。

眠り猫さんの30cmフローライト屈折望遠鏡 組み立ててる様子

13cm屈折での土星
土星の高度が上がるのを待って自分の13cm屈折でも土星を見てみました。
高度が上がりシーイングも落ち着いたお陰か、とてもくっきりはっきりコントラストの高い土星が見えました。
この望遠鏡で初めて覗いたころから毎年変わっていく環の傾きが印象的でした。
200倍でカミソリのように鋭く、そして立体的に見える環は何度見ても素敵です。
惑星はアポ屈折にはかなわないと津村さんにも感動していただけましたし、眼視を始めたばかりという亮さんもアポ屈折の土星の見え方に非常に感動してもらえたようでうれしかったです。

1日目 一晩の様子 タイムラプス

亮さん(twitter@EzR7)が会場の様子をタイムラプス撮影してくれました。
会場の雰囲気と、せわしなく動き回る参加者の様子が分かると思います。 


【2日目 日中】

~6:00 起床

昨夜は一晩快晴で明け方まで土星を見ていたので寝る時間はわずかでした。
確か4時に布団に入り、5時に時計を確認した記憶があり6時には起きていました。
7時に外に出て敷地を散策しましたが、夜中はあれほど賑やかで人であふれていたのにこのときは自分以外は誰もいなく、車と機材がずらっと並んでいるだけの不思議な雰囲気でした。


11:00~12:00 フリーマーケット

各種天文機材、自作道具、書籍が販売されました。
私は津村さん自作の書籍を2冊購入しました。この2冊についてはこれだけでブログが1ページ書けるほどですがここでは割愛します。
簡単に触れますが、M42の直北にNGC1981というマニアしか知らない散開星団がありますがなんとこの天体の記述に5行も費やされています。

津村さんから購入した書籍2つ


14:00~16:00 参加者自己紹介&機材紹介

2日目日中のメインイベントです。天リフによるYouTube配信も行われ、アーカイブも視聴できます。
私も開始4人目の出番で、持ってきた2つの望遠鏡について説明を行いました。


16:00~17:00 施設紹介&清水さん講演

YouTube配信用のイベントと御園管理人の清水さんの講演です。
どうやら今年を最後に管理人を私と同世代の後任へ引き継ぐようです。
今までの思い出を紙芝居風に紹介頂きました。


utoさん紹介の書籍

私がマイナー天体に惹かれるきっかけとなった方の一人が自作45cmで有名なutoさんです  (Twitter @light_bucket18)
テレビ愛知の番組でも紹介されたことのある方です。
そんなutoさんが私のマイナー天体好きを知ってこれらの書籍を紹介してくれました。
アメリカの眼視観測者、Alvin HueyさんがHCG、Arp、Abellなどの天体を眼視観察した記録集です。
1時間くらい読ませていただきましたが、撮影でも厳しいような暗く淡い天体を眼視していることが衝撃でした。
utoさん自身の観望記録も付箋で張ってあるページもあり、恥ずかしがっていましたがutoさんの記録も読ませていただきました。
かみのけ座の銀河BOXとして知られるHCG61は、私は自分の25cmでは3つまでで4つ目をはっきりと見た自信がありませんでしたが、
utoさんは45cmで4つともはっきり見えたそうです。40cm以上の口径が欲しくなりました。

Alvin Hueyさんの書籍のページのリンクを貼っておきます。

【2日目 夜間】

19:00~ 懇親会

今夜は薄曇りで空に望遠鏡を向ける方は少数でした。
多くは本館内の食堂で酒盛りをしていました。
私も持ってきたバカルディとおつまみをふるまいましたが、みなさんもお酒とおつまみを大量に持ってこられており、楽しく過ごせました。

バカルディと一升瓶のワインと愛知の日本酒・空

途中、星空がうっすら見えるようになると外に出てM13など明るい天体を眼視して、あとはおふざけの写真撮影で盛り上がりました。


敷地内の池ではutoさんたちがなにやらはしゃいでいましたが、このときはまさかカエルに熱狂していたとは思いもしませんでした。
翌朝撮影したカエルです。モリアオガエルという木の上に産卵する珍しい生態のカエルのようです。

ゲコゲコ

昨晩は明け方まで快晴でほとんど睡眠時間も取っておらず疲労がたまっており、今晩は曇りでお酒も入ったために12時に就寝しました。
ぐっすり朝6時まで眠れました。

2日目 一晩の様子 タイムラプス

こちらも亮さん(Twitter @EzR7)が撮影してくれました。
0:26あたりから後ろにある66cmドブに人だかりができていますが、
まさに上に載せたようなおふざけの写真撮影で盛り上がってるところです。


【3日目】

朝7時には多くの方が外にでられて機材の撤収をしていました。
もうみんなで望遠鏡を覗くことは無いのかと若干の寂しさを感じながら私も帰宅の準備をはじめました。

10:00~ ゴミ拾い

1晩目は快晴でしたが強風がしばし吹いていました。
風でとばされたゴミが敷地に散らばっているのでそれらをみなで拾います。
場所と時間を提供してくれたスターフォーレスト御園を汚すわけにはいきません。

10:30~ 閉会式、帰宅

来年も開催されてほしいという思いはみな同じでした。
最後に全員で写真撮影をし、解散しました。
撮影のために車を移動していたこともあり、他の方の邪魔にならないようにと別れの挨拶がほとんどできずに早々に会場を出てしまいました。
帰りの道中はしばらくそのことが心残りでした。

13:20 塩尻市の自宅に到着
帰りは行きと比べてとても早く感じました。
ついさっきまで隣県の山奥の天文台でみんなでワイワイガヤガヤしていたことが夢の中の出来事のように感じます。
来年も開催されてほしいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?