【小説】冬嵐 第17話「見つけてくれた」
第1話「拾い物」
前話「帰ろう」
マガジン「連載小説・冬嵐」
日の出湯の二階で、あたたかいストーブの火がちらちらと燃える中、俺は茉奈と向かい合っている。茉奈にこれから話すのは、俺の過去だ。
「――俺は、恋人だった人を、あの海で亡くした。堤防から夜中、二月の海に飛び込んだんだ。誰も飛び込んだのを見た人はいなくて、事故も疑われたんだけど、部屋に俺宛ての遺書があった。そこには『順ちゃんごめんね、ずっと順ちゃんの幸せを祈っています』としか書かれていなかった」
組んだ手の甲に額