シェア
上田聡子
2022年5月24日 09:24
二〇二〇年、秋の終わり。午後八時が来るのを、私はじっと待っている。一人暮らしの学生アパートのボロ階段を降りると、マスクの中で息があたたかくこもるのがわかった。夜道を歩いて七分ばかり、こうこうと照るスーパーマーケットの明かりを目指す。自動ドアが開くなり、私は早足で歩く。閉店まであと一時間の店内で、私はお惣菜コーナーを一直線に目指した。スーパー店員の白いユニフォームを着たおじさんが、大きな背をかが