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2020年11月の記事一覧
【小説】12月の渡り鳥
紅葉の季節を終えた12月の植物園は、葉を落としてしまった裸木がいくつも立ち並び、春や夏に比べて、少し枯れ色をしていた。コートを着込み、マフラーをぐるぐる巻きにして、小橋と並んで歩いた。
「冬の植物園というのも、なかなか乙なものですな」
小橋の言葉に、私も「そうですなぁ」と言った。
「渡り鳥の池はあっちらしい」
小橋が指さしたほうを私も見た。珍しく晴れた冬空はぴりっとした寒さで、私はあらため
【小説】フルーツ白玉
秋のはじめ、夜中に白玉粉をこねている。あまりつくったことがないから、とりあえず粉が入っていた袋に書いてあるとおりに。ボールに粉を入れ、水を少しずつ加えて、耳たぶくらいの硬さになるまで、こねる。まるめる。
湯をぐらぐら沸かしながら、隣の部屋で寝ている風邪の治らない母のことを思う。もうすぐ誕生日を迎える母は、68歳になる。決して若くない年齢だ。私が今年で40になることを考えたら、なにもおかしくない話