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恥ずかしがり屋の立方体|ショートショート
「ユミちゃんは恥ずかしがり屋さんなんだから」
周囲の大人たちは、いつもこう言って笑っていた。たぶん、これが私の一番最初の記憶だ。
ある程度の年齢になると、「恥ずかしがり屋さん」では済まされなくなった。「人見知り」に昇格になり、それがあたかも悪いことのように、周囲の大人たちが顔をしかめるようになった。
それでも、人間の性質はそう簡単には変わらない。
また年齢が上がると、「奥ゆかしい女性」に変身を遂げた。
「照れ屋さんで、奥ゆかしいユミちゃんが好きなんだ」
ある男性がそう言って、プロポーズしてくれた。幸せだった。あの時までは。
あぁ、でも、自分のことをこんなに語るなんて……
✳︎
「ダメですね」
白衣の男性が、ガラスの立方体に浮かぶ脳を見つめた。脳からは触手のような電極が伸びている。
「うまく脳波を読み取れません」
「そうか、生前の性格が影響しているのかもしれん。もう、事故で体は失っているというのに」
(391文字)
こちらの企画に参加させていただいています。
そして、へいたさんとの企画も同時進行中です。
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