見出し画像

大増殖天使のキス|ショートショート

「うわ、耳鳴りがする」
「わ、なんか私もー」
「それって天使が近くを通ってる合図じゃなかった?」

コンビニの前で、買ったばかりのお菓子やアイスを食べながらおしゃべりするのが放課後の私たちの日課だった。今日はナツミとリサが二つに割るタイプのアイスを買っていたので、私は棒アイスをかじっていた。

「違うよ、天使と目が合ったら耳鳴りが治るんじゃなかった?」
「私は天使がキスしたら耳鳴りが始まるって聞いたけど」
「じゃあ、天使のキスで耳鳴りが始まって、目が合ったら終わるんじゃない?」
私は二人の会話を整理する。

「じゃあ、天使は目を合わさずにキスしてるってこと?」
「知らないよ。私に聞かないで」
天使と出会えるコンビニの前は、いつも賑わっていた。

「店長、ダメですね。全然効きません」
「あいつらまだいるのか」
店長は自動ドア越しに、騒ぐ女子高生を恨めしげに眺めた。
「ネズミ除けのモスキート音を流してるんですけどね。ネズミ用は人間には効かないか」

(410文字)

こちらに参加しています。


また読みたいなと思ってくださったら、よろしければスキ、コメント、シェア、サポートをお願いします。日々の創作の励みになります。