宝石ポケット|ショートショート
「さぁさぁ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。不思議なポケットをお目にかけましょう」
風船の束を持ったピエロが立っていた。胸に大きなポケットのあるエプロンをしている。
すでに数人の人だかりができている。
「さぁ、このポケットは、入れたものは何でも倍になるポケットだよ」
そう言うと、ピエロは大きな飴を胸のポケットに入れた。ポンと叩くとポケットから飴が2つ出てきた。もう一度叩くと4つになった。
4つの飴は集まっていた子供達に配られた。
「次はもっといいものだ」
ピエロは自分の指から宝石のついた指輪を外し、ポケットに入れた。ポンと叩くと、指輪は2つになった。周りから拍手が起こった。
「さぁ、このポケットに何か入れたい人はいるかね?」
皆は我先にとお金をポケットに入れた。ポケットは膨らんでいく。
「あ!」
風船の束が、手から離れて空を舞った。
色とりどりの風船が、高く高く昇っていく。
「あいつはどこだ!」
皆が我に返ると、ピエロは、消えていた。
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