朝の逆転|ショートショート
「お姉ちゃんのバカぁ!」
そう叫んだあと、弟はずっと大声で泣いていた。
お母さんが飛んできて「はいはい」と弟の頭を優しく撫でている。お母さんの呆れた目は、あなたお姉ちゃんでしょう、と訴えかけてくる。
泣きたいのは、こっちの方だ。
ゲーム機を片手に、私は涙を堪えて自分の部屋に走った。バタンと扉を閉めて、座り込む。怒りと罪悪感で涙がこぼれた。
もう、ゲームなんて、する気分じゃなかった。
弟がゲームの順番を守らなかった。
それがケンカのきっかけだった。なのに弟が泣き、お母さんに慰められる。こんなの、不公平だ。私が頭にゲンコツしたのも悪いのだけれど。
次の朝、リビングに行くと、弟はまだ起きていなかった。
「おはよう」
お母さんが机の上に視線を落とした。
小さな紙切れが見えた。下手な字で「ごめんね」と書いてある。ぐっと唇を噛む。
「さっちゃんはケンカには勝ったけど、仲直りには負けたわね」
お母さんが近づいてきて、「よしよし」と頭を撫でてくれた。
(410文字)
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「王様のアイディア」にて、掲載されました!
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本作品はamazon kindleで出版される『410字の毎週ショートショート~一周年記念~』へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です。
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