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下剋上部|ショートショート

「お疲れさまでしたぁ!」

高く上げたコーラの缶が空中でぶつかった。
部室での打ち上げだった。下剋上クラブのメンバーが数人集まっている。

下剋上クラブ。言葉の響きほど、物騒な部活ではない。
成績下位の生徒が学年1位を取るのを手伝ったり、弱小クラブの練習に付き合ったりする何でも屋だった。周囲からは「お人好しクラブ」と呼ばれていた。

今回は、生徒会の書記担当だった生徒を生徒会長にするべく、部員総出で選挙運動を実施した。おかげでその生徒は当選し、コーラで祝杯を上げているところだった。

「次の活動はどうする?」
部長はお菓子を口に放り込みながら聞いた。
「次の依頼はまだ来てないですね」

俺は次の部長の言葉を慎重に待った。
「ま、一旦休みかな」
テストも近いし、と部長は付け足した。

俺はポーカーフェイスを保ったまま、心の中でガッツポーズした。
部長に気づかれないように、後輩に目配せする。

次の下剋上の相手は、もう、決まっていた。


#ショートショートnote杯

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