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スキを集めた物語ベスト10

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これまでの物語の中で、読者のみなさまに特にスキを集めたショートショートをセレクトしています。【月毎更新】
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2023年2月の記事一覧

噛ませ犬ごはん|ショートショート

レストランの入り口ドアのベルが鳴った。 「すみません、もう閉店の時間で……」 入り口に立つ男の姿を見て、すぐに口をつぐんだ。この街で一番のお金持ちのご主人が、立っていた。 「まだやってるかね? 腹ペコだが、他はどこも閉店でね。外から君の姿が見えたのだが」 ギャルソンは、チップを弾んでくれそうだ、と頭の中で計算した。しかし、シェフはすでに帰ってしまっていて、料理は出せそうにない。どうしたものか。 「確認いたします」 ギャルソンは急いで厨房に向かう。何か出せる料理はないか。

ヘルプ商店街|ショートショート

「ヘルプ、一丁いかがぁですかぁ〜」 店先の店主の大声に、思わず振り返る。 今さら人の助けなどいらない。そう思っておきながら、声に反応した自分自身に腹が立った。 声の主から無理やり目を逸らして歩き出そうとすると、店主が店を飛び出し追いかけてきた。 「お兄さん、お兄さん、ヘルプ売ってくれませんかねぇ」 「なんだ、急に」 「うちね、ヘルプの買取もしてるんです。よかったら、お兄さんのヘルプを買い取りますよ」 「買い取る?」 「えぇ、お店が人を助けるのがヘルプ販売、お客さんが人を助