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六月の星々(140字小説コンテスト第2期)応募作 part5

part1 part2 part3 part4 part5 結果速報

月ごとに定められた文字を使った140字小説コンテスト。

六月の文字「流」は6月30日をもって締め切りました!
(part1~のリンクも文頭・文末にありますので、作品の未掲載などがありましたらお知らせください)

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そして七月の文字「放」です!
応募方法や賞品、過去のコンテストなどは下記をご覧ください。

応募作(6月27日〜30日・投稿順)

朝本箍(サイトからの投稿)
流れる涙はそのままに、目前の壁を見つめる。照明を消した室内、タオルケットからはみ出た自分の手が真っ黒で少し驚いた。海外の都市伝説に登場する怪人とそう変わらない。いっそ私も彼になれればいい、叶わぬ妄想の間にも涙は止まらない。何があった訳でもない日の夜だ。私は涙を枕に食べさせていた。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
流は花や木には相応しくないのだろうか。琉や竜が使われている植物の名前は沢山ある。琉球だけの、竜のようにとそれぞれプライドをアピール。でも流の字は水を得ると無敵、紅葉は水に流れると文様になる。そしてこれには別の呼び方が、それは竜田川。流れのままに敵を見て見ぬふり、受け入れるだけだ。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
毎日複数回流す行動をする場所がある。さほど手を煩わすことなく流せるとあれば流すものは1つではない、モヤッとしたものも同時に流している。流れ着く先は海、魚たちはすべてを受け止めている。これを嫌って魚たちはこの国から離れてしまったのか。情報を精査して流せば戻ってきてくれるのだろうか。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
「1億円振り込まれてたらどうする?」「それは返さなくてもいい1億円なの?」「ええ。返さなくてもいい1億円よ」「好きに使っていい1億円なの?」「そう、好きに使っていい1億円」「夢みたいだわ。いつ振り込まれるの?」「そうね。1億円だけに1億年後?」歴史的な沈黙が2人の間に流れた。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
ロボットが小説を楽しむようになった頃、魂を込められた登場人物が作家を訴え始めた。いつからか小説に終わりがなくなり、読者だけが死んでいった。やがて作家もいなくなり、ロボットだけが読書を楽しんでいた。流行作品もなくロングセラーだけが時を刻む。ロボットが書く小説はとにかく長かった。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
そのわだかまりは過去に原因があると思っていた。『思い出したくない』『忘れたい』『認めたくない』繰り返し思い出しては、その感情を流すために目を閉じてスーッと息を吐く。少し気持ちが軽くなる。息を吐く、吐く、吐く。吐き続けていると、苦しくなって大きく息を吸う。元の自分に戻る。なるほど。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
他に行くあてもなかった。人生に迷っていた。『時には流れに身を任せてみれば?』とアドバイスされた私は何かに祈った。『僕らには最初から選択肢なんてなかった』どこかへ一緒に流されながら聞かされた。流されている間は、何も考える必要がなかった。最後に私は救われた。「流しそうめん、楽しいね」

ちる(サイトからの投稿)
流星群が降った夜から、みんな悪夢をみるようになった。お医者さんもテレビも原因を考えたけれど、わからなかった。でもぼくは、隣に住んでいた宇宙人から聞いた。あの流星群は、みんなが捨ててきた苦しい思い出だったんだって。この星もまたやられてしまったか、と言って、彼はどこかに行っちゃった。

ちる(サイトからの投稿)
あっしらが子どもの頃、故郷じゃ「地球流しにするぞ!」ってよく言われたんでさぁ。ええ、悪いことしたときの定番の脅し文句でね。みんなふるえあがっていたもんです。実際に地球に来てみてどうだったか、怖い星だと思うか、ってそれ、あっしに聞くんですかい? 想像におまかせしますよ、そんなもん。

ちる(サイトからの投稿)
ある男が罪を犯し島流しにされたが、数日後彼はひょっこり帰ってきた。もっと遠い島に流されたが、何食わぬ顔で帰ってきた。役人たちが困っていると、別の星から来たという者が罪人を連れて行った。数百年後やってきた飛行物体に乗っていた宇宙人の顔は、古文書にあった彼の似顔絵にそっくりであった。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
吹流しはアイディンティティを確立できるのだろうか。吹いてくる風には直感のままなびく。注意報レベルになれば我を忘れてクルクルと回る。垂れ下がりだらりとした姿はやる気が無いとみなされる。それは静穏を伝えているのに。吹流しの行為に意志は入り込めないけれど現場でひたすら安全を祈っている。

葉菜(サイトからの投稿)
世の中には綺麗なモノばかりあるわけではないけれども、流れる星や流れる川、流れる汗、流れる涙…ささやかな事で心が満たされたり必要だと感じることがある。綺麗なモノばかりではないけれども綺麗なモノもひとりひとりの心の中に、きっとある。だから、"明日"もがんばろうと思えるのかもしれない。

sato(サイトからの投稿)
流れ着いたようなこの部屋で、黒い傷痕さするようにして、日々を暮らしている。あまり触ると傷痕が開きそうになるけれど、その開くか開かないかの境目への冒険を、幾度となく繰り返し、いつも終いには激痛になる。水に角砂糖を入れて、溶けながら小さくなっていくように、私は時間の中を流されていく。

西ノ宮あいこ(サイトからの投稿)
流れる涙が鬱陶しく、流れる雨が寂しく、流れる汗が恋しく思う。私の、一つの季節が終わった。きっと、また梅雨になったら思い出すだろう。雨音が響く夜に流れた涙を。けれど、悲しいなんて思わない。橙と紫が混じる朝焼けの空に、寂しく思った雨粒が輝き、雨上がりの澄んだ空気が私みたいだったから。

なつ(サイトからの投稿)
例えば滴る涙が在ったとして。それを洗い流したくなる想いとは何だろう。悲しくて虚しくて。散々に泣いた夜が在って昼が在って。処構わず泣けてくること。止め処なく溢れ出るもの。それもひとしきり過ぎると。シャワーでも浴びるか、とか。腫れた箇所を冷やすか、とか。其処に向かう想いとは何だろう。

なつ(サイトからの投稿)
「好き」の言葉が段々と狭まる。想いの先に発する言葉。考えすぎてしまうんだ、きっと。私が安全だろうと想って紡いだ言葉で在っても、誰かにとっては安全ではない言葉になり得るのだろうという処を。全てがなだらかに向かうのなら其処もふんわりと紡げたらいいのに。そんな処を缶ビールで流し込んだ。

月街夢子(サイトからの投稿)
人に流されるだけの人生だった。孤高の君は美しかった。僕を見向きもしないその瞳から真珠のような涙がこぼれ落ちたとき、僕は初めて立ちどまったんだ。僕に君を励ます資格なんてないね。君のように僕も僕だけの道をゆくと決めたよ。そうすればいつか、強がる君をそっと抱きしめること、許されるかな。

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