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九月の星々(140字小説コンテスト第3期)応募作 part5

part1 part2 part3 part4 part5 結果速報

月ごとに定められた文字を使った140字小説コンテスト。

九月の文字「実」は9月30日をもって締め切りました!
(part1~のリンクも文頭・文末にありますので、作品の未掲載などがありましたらお知らせください)

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そして十月の文字「着」です!
応募方法や賞品、過去のコンテストなどは下記をご覧ください。

応募作(9月27日〜30日・投稿順)

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
ある日感情そのものが相手に伝わるようになった。意思疎通信とでもいうのだろうか。当然のように世界から会話や文字が消えていった。風の噂によるとこの現象は「ペットと会話したいという願いを叶える実験が成功しすぎた結果らしい」確かにペットとの関係は良好になったが世界はずいぶん静かになった。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
「さあ今すぐこの実を食べるかここで撃たれて死ぬか、選べ」僕は今銃を向けられている。ここで死にたくはないが、この実を食べることもしたくない。どうにかしてこの実を食べることなく生きて帰る方法はないだろうか。そうだ、この実であの銃口を塞いでしまえばいい。「わかった、食べるよ。……プッ」

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
「ふぅ。今日はちょっと食べすぎちゃった」「寝るの?」「目を閉じるだけ」そう言って私は席を立った。いつものように読みかけの本をベッドで開いた。すぐにまぶたが重くなり続きが気になったがどうにもこうにも抗えない。明日また続きを読めばいい。楽しみだな。……本がドサッと落ち現実が停止した。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
一年に一度の特別な月が昇った夜、よたよたと走る私を見つけた運転手さんは速度を落としてバス停に止まってくれた。おかげで最終のバスに間に合ったのです。終点に着いた時私はバスの中に幸せが実っていることに気が付きました。運転手さんに伝わるのを願いながらバスを降りたら月も頷いていました。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
「実り」という言葉が付く季節は秋。確かに秋は実るモノが多い。それに合わせて食べたいという欲求も高まり、実りのおかげで身体は充実する。でも他の3つの季節に実る野菜や果実もあるので常に食欲は満たされている。実りへの感謝は秋だけでは不公平。毎日の頂きますとご馳走様でお礼を伝えたい。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
積み重ねた練習の結果を皆に披露する発表会。たどたどしい指使いで弾くピアノ。ダンスなら何度も繰り返したのに忘れる振り付け。でも当日を迎えるまでにかけた時間は決して無駄ではないはず。実を結ぶために使った時間は輝いている。帰り道に見えた一番星がその証。星が実る夜を経て新しい時が始まる。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
こういうの待ってた! という新製品が出るたびに身体中からエネルギーが湧いてくる。欲望は生きる原動力になる。と同時に手に入れることが叶わない現実が絶望をつれてくる。人生は退屈との戦いだ。迷わず買いができる層を目にするたびに私は死にたくなる。全部まとめてミルフィーユにして食べてやる。

吉岡幸一(サイトからの投稿)
実さんはとっても太っていましたので、痩せたいと思っていました。努力に努力を重ねて、やっと痩せた実さんは好きだった女の子に告白しました。その結果、恋は実りましたが、大切な何かを無くしてしまいました。実さんは再び太りました。すると、すぐに振られましたが、実さんはなんだか幸せでした。

吉岡幸一(サイトからの投稿)
地球という果実がよく実ってきましたので、宇宙人は地球をもぎ取ることにしました。絞って地球ジュースにして飲むつもりだったのです。きっと美味に違いない、と思いジュースにして飲みましたが、口に入れた途端、吐いてしまいました。人間という虫に冒されて、とても飲めたものではなかったのです。

吉岡幸一(サイトからの投稿)
満月の夜。実った柿の実を子供がもいで空に投げました。すると柿の実は弾けて種を子供に向けて発射しました。子供がバットで打ち返すと、種は月まで飛んでいきぶつかりました。途端に月は爆発して、隕石を地球に降らせました。宇宙空間を漂いながら子供は柿の実なんてもぐんじゃなかったと思いました。

さちこ(サイトからの投稿)
蝶々ひらひら。人間の想いは蝶に移る。男と女が結婚した時の想いが蝶に移る。
男女が結婚するという事は、蝶の粉と花の粉が受粉されるという事だ。
女の想いが鱗粉となり、花粉と共に受粉される。
蝶が蜜を吸う度、女の想いが花に移り受粉され、想いが実となる現実となる。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
毎日いろんなことに興味や疑問が湧いてくる。知的好奇心は底なしだ。興味の赴くままに読書して、なるほどと思う瞬間は快感。溜まった知識にホコリがかぶることもあれば、読みたい本ばかりで埋め尽くされてどれから読もうか迷う日もある。あともう少しだけと気付けば朝になることも。実に幸せな本棚だ。

ヒトシ(サイトからの投稿)
夏の終わりの田舎道は、高く青くなる空と軽やかになる風。あちこちの道端でチラチラと水引が咲く。まっすぐ伸びた細い茎に赤い小花を順々に並べて。里の田畑は、それぞれに春に芽吹いて夏に育った黄金の実り。その喜びの季節の訪れをみんなと分かち合うように。控えめに、でも艶やかに水引の花は咲く。

ルート(サイトからの投稿)
年が明けると校長先生は必ず言う。実りある一年にしましょう。僕は斜めに構えてわざとらしく欠伸してみたりした。
あれから三十年。俺の中身は空っぽだった。殻だけが頑丈で中身は何も入っていない面白みのない大人になっていた。栄養を蓄えて青い果実を作る期間をすっ飛ばした「僕」が恨めしかった。

なつ(サイトからの投稿)
降り立った土地を足は覚えていた。鍵を回す手も同じだ。冷えた空気だけが迎える、今は主人の居ない家。踏みしめる一歩は恐る恐るで奥へ分け入る毎に胸が軋む。曽て留まった部屋に長居は出来なかった。窓からの景色と想い出の品をひとつ持って家を後にした。ふわりと香る橙の花も実も変わらずに在った。

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