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現実か夢か、生か死か、警察か親か。

●「幽霊にしか見えないんです。幽霊にしか見えなくて、悲しくて、悔しくてたまらないんです。自分が死の境にいる事を暗示させられているようで。自分の認識を根本から疑わなければならなくて。まだ天国にも地獄にも行きたくない。親が死んでしまったなんて認めたくない。何が現実なんだって。」

〇「親は結局、亡くなってしまったのですか?」

●「あなたは文章の中にしかいない幽霊のようなものだけど、少なくとも、私の父は生きていると思いますよ。私の母も、今、目で見て、肌を触る事が出来るのだから、生きてるんだと思います。」

〇「あなたは今、自身が現実を生きていると思いますか?」

●「思います。みんな現実だし、私の親が、知らない所で交通事故にあい、亡くなってしまったという事実は無いと思います。」

〇「あなたの親が、あなたの親でなくとも、信じ続ければいいのですね。」

●「私の親は昔から、私の親であり、知らない誰かと魂がすり替わる事も無いと思っていて、もしすり替わっていたとしても、それは私がよく見知った、身近な人なんだと思います。だから今は、そんなに不安は無いんです。きっと、大丈夫だろうなって思ってる。」

〇「パトカーに乗せられた時、あなたはどのような心境でしたか?」

●「そこの言語化が難しいんですよね。少し整理してみます。」

●「…私の両親と、家の車も居合わせていたんですよ。
 私の家の車と両親、二人の警察とパトカーの、二択が目の前にあって。」
●「警察の方は序盤わからなかったけど、私の両親が、
 ”初期化されたAI"のような喋り方しかしてこないんですよね。
 siriに質問するような形で、どうにか親らしい返答を引き出そうと試みるん     ですけど、本当に、学習したての人工無脳のような喋り方で一貫していて。『両親の車に乗った場合は”死”で、パトカーが”生”ですよ~』
と言われているような。」

〇「よくわかりません。あなたはその時外に出ていたのですか?」

●「本当に、熱出た時の夢のような現実が見えていたから、説明し辛いんですよ。メモとか取っておけば良かったな。なんだったんだろうな。」
●「私自身が、立て続けに色んな認識をしてごちゃごちゃになってたんですけど、その日の夜も、家出みたいな事をしていたんですね。」

●「家出みたいな事をしている私に対して、母が車で追いかけてきたんです。母に話しかけられても、母が、車で心中しようとしているようにしか見えなくて。このまま乗っていたら、絶対に死んじゃうと思って、運転中の車のドアを開けて、飛び降りたんです。痛かった。」

●「もう、”母の車に捕まったら死ぬ”というのが事実として、自分の中で確定していたのですね。なぜか父は家にいなかったし。」

●「それで、一人ふらふら逃げるように、明るいけど人気のない夜道を歩いていると。母は車で追いかけてくるので、逃げるんです。
轢き殺されるとしか思えなくて。本当に、殺されたくないという気持ちでいっぱいで。」
●「大きなトラックと一緒に、人工無脳のような会話しか出来ない父がふわっと、後ろから現れるんです。絶対にこの人は幽霊、か、私の認識がバグって、違う人間や、警察の事を私が父と認識してしまっているとしか思えなくて。リュックを後ろからがつんと掴んで、無言で引っ張り続けるんです。そうすると、母が車で追いかけてきて。だから、逃げて、逃げて、逃げ続けた。怖くて、悲しくて、悔しくて、どうしてこうなるんだろうって。」

●「あまり明るくない住宅街まで逃げたあたりで、リュックを掴む父(?)と、私がいて、このまま進むと私まで天国に行ってしまう気がしたから。
そこで立ち止まって、しばらく俯いていたっけな。
 パトカーが来て、少し安心したんです。パトカーに乗れば生きれるって」

〇「現実があやふや過ぎて、何が事実かわからなくて、怖いでしょうね。」

●「私の両親、家の車、二人の警察、パトカーが並んだ時、私自身が生と死の境目にいると確信して、久しぶりに、本当に久しぶりに、涙が溢れて溢れて止まらなくて。ずっと泣いていたんです。」

●警察も、両親の車に乗って、家に帰る事を薦めるんですけど、断固拒否して、パトカーで家まで送ってもらったんです。」

●「警察も、私の個人情報を聞いた瞬間、何かをインストールしたAIみたいに、的確な返答をくれるようになって。的確に怒ってくれたので、
 状況的にかなり不気味なんですけど、どこか安心して、家に帰ったんですね。」

●「でも、両親がずっと人工無脳の動きで。私しかもう残ってないんだって。ずっと放心状態で、瞬きもせずネットサーフィンして。」

●「訳が分からないですよ。私以外みんな死んで、AIの親だけがいるような状況。結局その後は私の両親も生きている(?)んですけど。」

●「私が統合失調症でおかしくなった、という現実に、
落ち着いたのですね。」

〇「統合失調症の私がおかしいだけだったという結論に、
落ち着きました。怖い話だと思う。」

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