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心静かな時間を愉しむ 『今宵も湖のほとりで』という特別なプロジェクト

『今宵も湖のほとりで』は、コロナ禍という時間がなければ生まれなかったプロジェクトです。非日常的な時間が日常となってしまった日々を過ごすこの1年半。この時間に作り手として向き合うことで生まれたプロジェクトが『今宵も湖のほとりで』です。
このプロジェクトはアートディレクター関戸貴美子さん、コピーライター有元沙矢香さん、という二人のクリエイターの想いから始まりました。
彼女たち二人を突き動かしたのは、コロナ禍という時間と向き合い感じたこと。それを作り手として何か形したい、しなければ、という想いだったのだと思います。
その思いに共鳴して、共に形にしていきました。

二人は、このコロナと共にある生活の中で、『月を眺めて静かに過ごす時間』のように今まで気に留めなかった、でも自分たちにとってとても大事な時間があることに気付いたと言いました。
宇治の窯元の周りには、日々変化する月の灯り、夕焼けとそれが作り出すシルエット、朝の小鳥や虫のさえずり、自分たちの生活に潤いを与えてくれる自然がたくさんあります。そんな宇治に過ごす豊斎でさえ、コロナの中で、そういったものに目を向ける時間が今までよりも増えました。
きっと、同じように今までよりも、身の回りにある豊かなものに気を留める機会が増えた方は多いのではないでしょうか。
もちろん、コロナは嬉しいことよりも、そうでない感情を多くもたらしたと思います。人によっては辛く苦しいことばかりかもしれません。それでも、そんなコロナの時間もずっと続くわけではない。その時間に自分たちが感じたこと、考えたこと。

そういった心をモノに託す。

二人は、互いにこの一年半の間に去来した自分の心の中にある気持ち。モヤモヤや、儚く美しい日常の一コマをヴィジュアルブックという形にしました。このブックは、何か大きなことを伝えるためにあるのではありません。それを手に取って頂く方が、そのブックにある感情と自分の心の中にある近い感情に出会って、少しその感情をいとおしく思うような、そんなブックです。
そのブックを眺めながら、私、朝日焼十六世松林豊斎の作った酒呑でお酒を飲んで頂く。月を見ながら、今の時間を忘れるでもなく、そこにとらわれるでもなく静かな時間を過ごして頂く。

また、時間が経って、いつの日か、この時間を振り返ることがあるならば、この器やヴィジュアルブックをともに紐解きながら、このモヤモヤとした感情をいたわるように思い出してお酒を飲みたい。
そんなことを考えて作ったプロジェクトです。
お月見をテーマにした、「月見盃」を作りたい。というのはお二人のアイディアでした。
中秋の名月、十五夜ももちろん良いのですが、名残の月見。十三夜にこそ、この器は相応しいのではないか。
静かな器です。銀彩は時を経て変化していきます。
この時間は嬉しく楽しいものではないかもしれないけれど、そんな時間も自分たちにとってやはり大切な人生の一部。
そういう思いを共感して頂ける方に、ぜひ手に取ってもらいたく思います。


7つの器
心静かに月と、ビジュアルブックを愛でながらお酒を飲む時間。
このコロナの中で感じたことを器に託す。
そんな思いを持って、7つの器を作りました。
すべて月白釉という淡いブルーの釉薬。その色は、心躍るときはその嬉しさに輝くような、そして、心静かな夜には、その月灯りをやさしく受け止めて儚く光るような魅力的な色です。
そこに、銀彩を施しました。金が太陽とするならば、銀は月。その光もまた静かな時間に相応しく、また、輝きを永続する金に対して、銀は時間を追うごとに、渋く、いぶし銀の色へと変化していきます。これから5年、10年と経った時に、今を思い出す。時間によって変化したものを感じて頂けるのではないかと思います。

コピーライター有元沙矢香さんに、7つの器に異なる銘をつけてもらいました。銘は、器に意味を与えるモノ。彼女に出来上がった器に向き合って頂いて、それぞれに月に因んだ素敵な銘をつけて頂きました。

淡月 https://asahiyaki.com/detail.php?p=2865
黄昏月 https://asahiyaki.com/detail.php?p=2874
残月 https://asahiyaki.com/detail.php?p=2878
孤月 https://asahiyaki.com/detail.php?p=2882
雨月 https://asahiyaki.com/detail.php?p=2886
朗月 https://asahiyaki.com/detail.php?p=2887
青月 https://asahiyaki.com/detail.php?p=2896

それぞれの箱には、豊斎の箱書に加えて、アートディレクター関戸貴美子さんが自筆にて遊び心溢れる絵を入れて頂きました。

また、お届けするのにビジュアルブックと酒呑を包んでくれるのは佐賀の名尾手すき和紙さんの栗の葉の入った和紙です。名残の月見を別名で栗名月と呼ぶことに由来してご準備頂きました。一度の使用ではもったいない素晴らしい紙ですので、ぜひ、お手元に残して、何かのデコレーションや、包み紙としてお使いください。
名尾手すき和紙さんは、この夏の豪雨にて被災され、土砂崩れで工房が大変な状況からやっと復旧へと歩みを進められている状況で、ご準備頂いてとても感謝しております。

様々な思いのこもった『今宵も湖のほとりで』
ぜひ、手に取って、長く愛でて頂きますことを願っております。

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