2021 J2リーグ 大宮アルディージャ前半戦の振り返りと後半戦の展望

23試合を終えて3勝9分11敗、21位という結果を誰が予想しただろうか。19試合を残し自動昇格圏の2位との勝ち点差は30、残留圏内の18位との勝ち点差は3である。昇格どころか、J3降格が現実味を帯びるまさかのシーズンとなっている。クラブ最低成績となった2020年の成績に追いつくにしても、残り試合を11勝2分6敗でようやくタイである。岩瀬体制での15試合で2勝5分8敗という無残な結果で、今季の行く末は決まってしまった。

それでも、霜田体制になってからは結果以上に改善が見えている。①練習の強度アップ②選手たちの前向きなコメント③ピッチ上でやるべきことが整理された、この3点でようやく大宮アルディージャはチームとしての体をなしてきた。

泣いても笑っても残り18試合、ここまでの戦いと今後の展望をここで整理する。




1.岩瀬体制末期との比較~西脇元本部長発言の再検証


波紋を呼んだ西脇元本部長発言の後、岩瀬氏と西脇氏は退陣した。前回掲載記事でピックアップした発言を霜田体制と比較し答え合わせをする。

①大枠で見ると守備は整っている
⇒守備の課題は引き継がれている感はあるが、攻撃面が改善された中での話であり、守備の気迫の部分は大きく変わった。
②選手のクリエイティブな部分が少しずつ出るようになっている
⇒選手のクリエイティブな部分は色濃く出るようになってきており、あとは目に見える結果のみ。
③選手をどこに置くのかという選手起用や配置の部分はまだ定まっていない
⇒選手起用や配置はフォーメーションを併用しながらも、選手の固定はされなくともコンセプトに合わせた配置はされている。
④監督交代を考えたことない。現体制でやります
⇒リップサービスで、結果は監督交代。
⑤あと少しをなんとか変えたい
⇒霜田体制の今こそ「あと少し」で勝利を逃している。当時はこれっぽっちもできていなかった。
⑥今、別の監督を招聘したほうがリスクが高い。また一からのスタートで上手くいかなかったらきつい
⇒監督交代のメリットがリスクを上回った。
⑦チームの方向性を作るための岩瀬
⇒何も方向性は作られなかった。
⑧経験のあるコーチもいるのでカバーできる部分もある
⇒何を伝えたかったのかさっぱりわからなかった。
⑨チーム作りに予想以上に時間がかかっており、経験の浅さが影響している
⇒経験の大小は抜きに、有能な指導者はそれなりに時間をかけずにチームを作る。霜田監督は少ない準備期間で立て直しており、⑧と矛盾したまま終わった。




2.ポジションごとに見る展望


GKについては、クリャイッチの長期離脱を受け、南雄太を緊急補強。三門キャプテンの負担軽減、計10年半を共にした盟友北嶋ヘッドとのタッグ、そして何よりも41歳ながらレギュラー争いに食い込める選手であること。特徴をまだ出し切れていないが重用された上田、ベンチからでも大声で鼓舞する姿が印象的だった笠原との三つ巴の戦いが楽しみ。

DFの中でもCBは枚数は揃っている状況。現状は西村と河本がスタメンではあるが、山越と櫛引は実績があり、SBとしても対応できる山田は使い勝手のよい選手。河本が絶対的と言えなくなり、誰が最終盤で出場しているかはわからない。西村をプロテクトできたのは大きい。

SBは馬渡は盤石であったが、他は流動的。怪我さえなければ左利きの河面が最有力。翁長は能力は高いがSBだと守備が弱く、前線だと攻撃力に欠け4バックだと難しい。渡部は総合力は高くサードストライカーとしても長けているが、今季のゴタゴタの被害者となってしまった感が。何より翁長以外は怪我がちなのが不確定要素。適性に疑問が残る松本を鍛える状況が辛い。

ボランチ2枚は三門を中心に俊輝・大山・小島・小野と選び放題。コンディションや相手に合わせて使い分けるべきだが、万能型の俊輝の出番が少ないのが気がかり。チームの中心としての自覚も強くなり、攻守に欠点のない彼の活躍を見たい。マリノスで経験のある三門をはじめ、全員トップ下としても起用可能。トップ下には黒川を推したいところではあるが。

ウイング及びSHは中断前は小野・黒川・松田が起用され、ジョーカー柴山という構図だった。小野は元々個人技で何とかする選手ではなく、黒川は中央で活きる選手。奥抜・髙田が戦列復帰し、1トップならサイドのスペースを陥れられる中野の起用も可能。ドリブラーが全員揃えば、アタッキングサードでのボールの運用がかなり有利になる。ここも怪我さえなければ。

FWは1トップであればイバを主軸にハスキッチ・矢島の順番であったが、河田篤秀を補強。他にも優れたCFが中断期間に個人降格したが、大宮に不足しているピースは決定力に長け明るいタレントの河田であると信じる。2トップであれば黒川・中野・菊地、SH次第ではシュートの上手い奥抜の起用も可能。

3.チーム全体の課題と展望

霜田監督によって大宮アルディージャはチームとして正常化。練習の強度について触れられることが多く、前体制の練習内容は何だったのか。霜田監督はモチベーターの側面もあり、言語化能力も高い。岩瀬前監督のような理論派ではないが、大宮は戦術理解度や応用力に欠けることから、霜田監督のほうが合っている。課題を3点挙げていく。

1点目はクロス問題。中断前はサイドアタックが機能し始めていたものの、クロスの質に難があった。練習でクロスを上達させるのは難しく、クロスを上げるまでの過程を整理するか、PA内のポジショニングや人数を改善するしかない。その中で河面の復帰により左サイドからのクロスは改善され、河田はクロスに合わせるのが得意で、黒川も短期間で成長を見せている。

2点目はセットプレー。今季は非常にセットプレーの得点が少ない。コーナーのキッカーを2人置いたり、キッカーを担当できる選手がピッチ上にいないなどどうやって点を取るかという設計図が見えてこない(ピッチ上にいない現象は昨年からの継続課題)。CKは大山・小野・河面、FKはイバ・翁長も蹴ることができる。怪我人や戦術的な問題もあるが、常時誰かしらピッチに置きたい。CBの高さを活かしたゴールが無く、勿体ない。

3点目は守備の改善。セットプレーにおいても、プレスで空いたスペースを活用されるなど、こちらは霜田監督後も若干の改善にとどまっている。攻撃にリスクを冒せるようになった以上は失点のリスクも孕むが、全体的にヒートマップを前進させ、上田らGK陣のスペースの管理も必要不可欠である。オープンな展開となる終盤は致し方ない部分もあるが、90分の大半は良い守備から良い攻撃に移るという大原則を意識し、整備するしかない。

前体制よりも遥かに改善され、期待できる材料も多い。数名、名前の挙がらなかった選手については余剰人員であり、怪我での人員不足のリスクもあるが、あまり選手の人数が多すぎると各人の練習の質が確保できない(第一、あの前半戦で出場できない選手は、後半戦も戦力にはならない可能性が高い)。J2・21位主導では難しいかもしれないが、人員整理も本当は必要だった。

21位ではあるが、降格圏脱出までは僅かな差である。僅かだが、そこを埋められずに毎年有力なチームが降格していく。松本と北九州はピンポイントで有力な選手を確保し、相模原はとにかく獲得できる選手をかき集め高木監督に託した。厳しい戦いにはなるが、本日の新潟戦から、改めて反撃の狼煙を上げ、何とか来季に繋がる中位でのフィニッシュを目指してほしい。前述の昨年とタイにするための11勝2分6敗、3勝しかしてないチームが困難に近いが決して出来ないことはない。監督解任ブーストで息を吹き返すクラブは、中断期間を挟むと新鮮味と勢いが薄れ、成績を落とす傾向にある。大宮が真の意味で前に進んでいることを成績で証明してくれることを信じている。

最後に、大宮サポーターなら絶対に読むべし。ビジネスマンのヒントにもなる良書。

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