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2020年の大宮アルディージャを振り返る(チーム編)

12月20日、Jリーグ史上最も遅い日に2020年のJ2リーグは全日程を終えた。
まさかのコロナ禍による長期の中断や日程の再編成等により、本来起こりうる結果順位とは全く異なるものとなったことと思われる。

我らが大宮アルディージャはクラブ史上最低の15位、高木監督の下成熟のシーズンを迎えるはずだったクラブは、誰もが予想できない次元の不振に陥り、名将は契約非更新となった。

前代未聞の大量の負傷者が発生し、18名のメンバーを揃えることもままならない時期もあり、チームの完成形が披露されることなく終了した2020シーズン。8月投稿の「2020 J2リーグ 3分の1を終えた大宮アルディージャを振り返る」の検証を含め、今季の振り返りを行う。


1.怪我で苦しんだクラブの現在地


14勝11分17敗の15位という成績は、クラブワーストの成績である。シーズン当初は2チーム作れる選手層であるように見えたが、最多で15人ほどの怪我人が発生。18人のメンバーを組むのに苦慮したクラブは多かったが、実際数試合にわたってメンバーを減らすなどしたクラブは大宮ぐらい。高木監督の強みであるスカウティングをしようにも、紅白戦をする人数も揃わなければ、そもそも過密日程で落としこむ時間もない。

FPは長期離脱の藤沼を除き全員が出場することとなった。山形時代の高山もそうだったが、他のクラブには羨ましいことに、怪我をしていないにも関わらず出場機会がなかった選手がこの過密日程下にも関わらずざらにいる。大宮の選手は怪我さえしていなければ試合に出られており、実戦経験が積めるとはいえ競争のない環境で成長を求めるのは難しい。こうした状況下では若手が多くの出場機会を得るのがせめてもの収穫だが、恩恵を受けたのは西村と小野ぐらい。選手層の薄い時期に離脱してしまった若手は千載一遇のチャンスを逃してしまい、本当に残念であった。

主力が軒並み離脱したということがわかりやすいデータとして、チームの顔である今シーズンのポスターの掲載選手3選手の出場試合数を昨年と比較すると、昨年フル稼働した石川俊輝は40試合から7試合、河面旺成は41試合から18試合と共に長期離脱で大きく数字を落とした。渡部大輔は10試合から24試合に伸ばしたものの、怪我がちな彼の離脱期間が例年より短くなっただけ。他にも笠原、奥抜、三門、河本、イッペイ、大山などレギュラークラスが軒並み1か月単位で長期離脱し、1年間通して一時もフルメンバーが揃うことはなかった。今季の結果の要因は過密日程と怪我に尽きる。

これまでのオフは比較的選手の獲得も優勢に動けたが、現在大宮はJ2で15位のクラブ、J1経験クラブでは最下位である。千葉や京都は低迷続きながらも資金力でいい選手を獲得できているが、大宮は育成路線を標榜し以前のような目立った補強は望めない。今のJ2カースト内では主力がJ2の他のクラブに引き抜かれても当たり前と覚悟した方がいい。昇格に失敗したとしても、少しでも上の順位で終えることでリーグ内での地位を少しでも保ちたかった。


2.年間を通した試合運び


時期によって常に何かしらの大きな弱点を露呈したのが今季の大宮であった。

序盤戦はまだ怪我人が少なかったが得点の形が見えず、先制できれば守りを固めて守りきれるが、先制されると守りを固められて崩せない状況が続き、悪いなりに勝ち点は稼いだものの、我慢の時期にチームとして上積みはあまり見られなかった。

夏場は大きく成績を落とす。毎試合増え続ける怪我人、後半15分以内に食らうゴラッソ、勝てず課題を次節以降に持ち越すことが常態化した。監督選手のコメントを見ても試合をこなすのが精一杯で、絶対に勝つという意欲の弱さを感じた。

秋口以降は一進一退のチームの成長。執念を感じる大逆転や、終盤戦のように着実に複数得点を重ねる姿もあれば、立て続けの複数失点も多く、2点取られると3点取られてしまうように落ちるところまで落ちないと歯止めが効かなかった。

年間通した安定感は皆無であり、2020年の大宮はどんなチームだったか、という総括については一言で言い表せないほど色々な顔を見せた。怪我人に起因する部分が多かったとはいえ、他のクラブは苦しいなりに1年間をこなしただけに、全てはこのクラブの力不足である。実際問題サッカー自体は昨年できていたカウンターに加え、更なるバリエーションの増加に着手するはずが、幅を広げることが出来ずに1年が終わった。

限られたメンバーの中でも試合の中での安定感はもう少し必要だった。リーダーシップのある選手ない選手はいても、誰が出ていても安い失点はあったし、立て続けの失点を喫していた。少なくとも、3点立て続けに取られるようなチームはトップカテゴリーには辿り着けない。難しいことは求めていない、当たり前のことが当たり前にできるだけで劇的に改善できるはずだ。そのためにはやはり、精神的な部分と能力的な部分で軸となる選手が必要であり、後者はについては今季は不在であったと言える。


3.各ポジションごとの総評


怪我の多発により振り返っても大きく意味をなさないかもしれないが、各ポジションの編成面を含めて振り返る。

GKについては笠原とクリャイッチの2人が居たことから唯一一定のクオリティを保てたポジションであった。編成面では2種登録や急遽の松本のレンタルがあったことから、クラブが貫いてきたGK4人体制を崩したことの失敗が目に付いた。

CBも昨年の反省を生かせず選手の離脱が相次いだことにより駒不足に陥り、石川や渡部の起用に加え高山をレンタルバック。マクシメンコの序列は高山以下であった。結果WBで使われたが山田の獲得も含め、怪我がちな選手や未知数な選手を抱える中での3バックでCB6枚という陣容は無理があり、強化部のミスである。

WBは5枚でのスタートであったが、やはりここも翁長以外全員が負傷した。イッペイをOHで起用したあたりも含め、奥井を抜かれたのがじわじわと響いた。川田を戻すタイミングについても遅きに失した感があり、こちらも高山や富山ら本職でない選手を何試合か起用した。しかしながらCBの山田が大当たりしたのは想定外であった。
DHは石川の長期離脱により三門離脱後は控え不在となる。このポジションが質量共に充実していたことから、このような事態は予測できなかった。それでも昨年はOH起用だった小野の台頭と小島がチームの軸となったことは非常に大きかった。

OHは想定以上に固定できず、見込んでいた得点力も鳴りを潜めた。開幕当初はレギュラー候補と目された選手たちが何点とれるかが焦点であったが、結果は怪我人により2種登録の柴山君を出場させるほどのやりくりの厳しさで、黒川奥抜中心におそらく15点程度。CFの惨状も影響し、WIN☆WINのスローガンに掲げた試合運びは幻となった。

CFはクラブ史に残る大不振となり、駒不足やハスキッチのタイプの不一致は現実のものとなった。5人の選手が起用され11得点。OHに点をとらせるという意味でも物足りなかった。たとえ怪我人が出なくとも大きく結果は変わらなかっただろう。イバの獲得についてはコンディションの見極めを怠ったと言われても仕方ない。

全体的に怪我がちな選手が多いため、怪我による駒不足は仕方ないと片付けるのは難しい。外国人を4人抱えながら出場可能な選手を全てベンチに並べることもざらであり、全てのクラブが外国人枠をフル活用していたわけではないにしろ、日本人選に足りない部分を全く補えなかった。怪我人の続出がスケープゴートとなり、実はフルメンバー揃っていても昇格できていなかった可能性もある。


4.来季への展望


高木監督の退任によって、来年以降のサッカーの方向性は現状では見えていない。フォーメーションに関わらず、編成面での課題は多い。GK4名の確保をはじめとして、今季不足したポジションについては同じことが起こる想定が必要である。既に河面・三門・髙田・藤沼は開幕に間に合わないことが確実であり、夏の移籍期間での人員整理も視野に入れ、34~35名確保しないと今季の二の舞となる。おそらく現有戦力の優先度の高い選手の引き留めが主軸で補強はそう多くない可能性が高く、入れ替えは少ないのではないか。しかしながら岩瀬監督はかなり研究熱心な方であり、ある程度戦術理解に優れていることが活躍の条件だろう。そして今季最大の弱点であった得点力は、新たなストライカーを2枚確保するか、不振のハスキッチを残した上で得点へのアプローチを変えるしかない。前線が変われば後ろに構える選手の得点力も変わり、守備陣の負担も軽減されるかもしれない。
元々良い選手は揃っており、噛み合わせともう1,2ピース欠けているだけ。来季の新しい大宮アルディージャを楽しみに、まずはオフの移籍期間を過ごしたい。

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