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2020年の大宮アルディージャを振り返る(選手編)

チームとしては上積みがないに等しかった2020年シーズンだが、選手個人に焦点を当ててみると、若手の出番も増え、新たな戦術の導入ややむを得ないポジションでの起用等を経て、今までにないような経験をした。最終的には成長が見られた選手が多かったように感じる。本記事では選手ごとの短評で2020年を振り返っていきたい。なお、内容については最終節終了後の契約更新または移籍の動向は反映しない形をとる。

GK(4名)

GK1 笠原昴史
昨年に続き負傷離脱によりフルシーズンの稼働とはいかなかった。スーパーセーブでチームを救うこともあれば安い失点も多く、折角の能力を安定して発揮できなかった感がある。ビルドアップについてはかなり意識している雰囲気があり、まだまだ成長できる。

GK21 加藤有輝
昨年のデビューにより飛躍が期待されたが、チャンスは大いにありながらも出場機会なし。同学年の松本の加入は刺激になったろうが、ベンチ入りの枠も奪われてしまっては厳しい。他の選手にない強みもあるだけに、本業のセービングにより磨きをかけたい。

GK40 フィリップ・クリャイッチ
欧州産GKのJリーグでの成功例は枚挙にいとまがない。スタートは出遅れたが、出場機会を得ると身体の大きさを生かしたダイナミックなセービングとパンチ力のあるキックで能力の高さを示した。しかし中盤戦で毎試合ミドルシュートを決められ続けたのは悪印象。その後の挽回の機会をもっと見たかった。

GK46 松本健太
2代目マツケン。同姓の松本コーチと再会し、指導を経験した柏っ子はベンチ入り回数も確保し、チームに大きな刺激を与えた。練習が年間を通して非公開だったため、プレーを見る機会がなく残念。カップ戦もなかったためチャンスは少なく、もう1年この環境下で見たい。

DF(9名)

DF3 河本裕之
毎年のように負傷を繰り返してきた大宮の長老。今季は怪我人が相次ぐ中試合に出続けたが、同じく怪我がちな渡部とあえなく同時離脱となった。昨年オルンガを抑えたパフォーマンスは衰えず、派手さは無くともメンバーを固定できなかった最終ラインで安定感を見せた。

DF4 ヴィターリス・マクシメンコ
恐らく狙っていたであろうギリシャ人がポシャった代わりにやってきたラトビア代表CB。悪い選手ではないのは間違いないが、左CBを任せるにも対人の強さは今一つで、左WBでのボールの持ち出し方は非凡なものがあったが、組織にアクセントを与えるには至らず契約満了となった。また見てみたい選手。

DF6 河面旺成
2年連続で違うポジションでレギュラーを守り大宮の顔となり、移籍のオファーを蹴ってまさかの残留。しかし彼にとって今季は怪我での離脱を除いても伸び悩みの1年だったに違いない。イージーミスも増え、試合ごとのパフォーマンスのばらつきがあった。こんなものではないと信じている。

DF13 渡部大輔
今季はCBに入ることもあり、貢献度は高かった。例年より離脱期間は短く、出れば攻守において高い強度で厳しいチーム状況の中奮闘した。攻撃力に目が行きがちだが、粘り強い守備も魅力。SBでもWBでも変わらぬプレーができ、かつ左にも対応可能な彼の活躍を来年こそは年間通して見たい。

DF24 西村慧祐
昨年話題となった謎の大学生は、コロナ禍の恩恵を受けレギュラーを確保、まさかのチーム1位の出場時間となった。対人・空中戦のパワーは見た目通りで、長短のパスの出し手としても優れていることを証明した。集中力を切らす場面や駆け引きの不味さも多く見られたが、補えれば個人昇格候補筆頭だろう。

DF25 高山和真
大量の選手の離脱により突然のご帰還。とはいえ駒不足は想定内であり、山形で出場機会もなくローンバックがもう少し早くできれば…以前より左CBとしてのポジションどりの思い切りが見え、堂々とプレーできていたが、他のCBに比べ1対1の対応に劣り、左WBでも肝心の守備の課題は改善されなかった。

DF42 山越康平
今季の成長株のうちの1人。積極果敢なドリブルでボールを前に運び、高精度のフィードを供給。サイドに流れてのクロスと攻撃面だけでなく、守備面でもミスが減り、ポテンシャルに見合った活躍が遂に見られた。左CBでのブレイクは意外だった。ドゥドゥに頭突きした際の人を殺したような目を忘れない。

DF43 山田将之
J2中位クラブで燻っていた選手。チームの相性に左右されやすいのか、CBとしての獲得と思われた中、まさかのWBとして大活躍。身体能力を活かした迫力ある上下動に、サードストライカーとしてのポジション取りも急成長。ヘディングの強さは前評判通り。Twitterでの熱いツイートも好印象。

DF50 畑尾大翔
今季も持ち前の勝負強さで決勝ゴールを決め、ピッチ内での選手へのフォロー役等彼のタレント性を遺憾なく発揮した。得意ではなさそうなビルドアップに積極的に関与し、ドリブルでの押し上げについてもチャレンジしていた。大宮の畑尾大翔の勇姿は忘れない。

MF(15名)

MF5 石川俊輝
長期離脱のせいで印象に残っているプレーが不用意なPK献上のみ。ターンオーバーによるCB起用もあり、昨年フル稼働した彼の能力を何一つ発揮できなかったのではないか。ピッチ内で周りを助けられる選手が今季は不在だったことから、彼が1年間フル稼働することは補強に等しく、完全復活が待たれる。

MF7 三門雄大
今季も相も変わらずATに全力ダッシュする体力オバケ。得点が見られなかったのは残念だが、チームのために汗をかき続けた。連戦とは思えない34歳のパフォーマンスだった。彼の立ち振舞いを見てキャプテンにふさわしい人物だと改めて実感した。負傷離脱は残念だったが、完璧に直して戻ってきてほしい。

MF9 菊地俊介
怪我がちなためか休み休みの出番となった。OHとしての活躍は見られなかったが、本職ではないCFは攻守にチームを円滑に動かす気の効いたプレーぶりだった。しかしながら求めるのは得点力。終盤は裏抜けも効いており、シュートチャンスも増えていた。来季はより結果を求めたい。

MF10 黒川淳史
本領発揮までは時間がかかった感はあるが、運動量とテクニックを活かし攻撃の中心となった。カウンターの局面では彼のドリブルが効果的で、終盤戦は水戸時代のようなゴール前での積極性と勝負強さも見られ、更なる成長の予感が漂う。CKのキッカーも任されそつなくこなした。来季もチームの顔。

MF11 奥抜侃志
昨年のブレイクから今季は更なる飛躍が期待されたが、ゴールラッシュは終盤までお預けとなった。得意のドリブルでは違いを見せつけたが、得点に関与するプレーがなかなか増えなかった。調子を上げてきた時期に長期離脱となったのが非常に痛かった。終盤のチャンスメイクは視野の広がりを感じた。

MF14 近藤貴司
献身的な守備と相手DFラインを脅かすフリーランニングを見る機会は2度の負傷離脱により僅かだった。前年全試合出場のタフガイの離脱は大誤算で、無得点という結果はチームの低迷の大きな要因であろう。フルシーズン見ないと評価は難しく、年齢的にも来季は真価が問われる1年になる。

MF15 大山啓輔
チームの軸として期待されながらも、レギュラー確保とはならなかった。ボランチ陣の中では攻撃の組み立てに強みがありながらも、オフザボールや守備の強度は他の選手に比べ劣り、アンカー気味のシステムが採用された終盤には離脱で不在と存在感を発揮できず。4番手以降になった来季は正念場である。

MF18 イッペイ・シノヅカ
WBとしてスタートするも、途中OHに移り、最終的にWBに戻る。2度の負傷離脱により昨シーズンの救世主が稼働しなかったのはリスク覚悟で右サイドをストロングポイントにできていたチームとして痛手だった。セットプレーのキッカーとしても不発で、昇格のためには彼のフル稼働は必須だった。

MF20 酒井宣福
ポリバレントさと、出場すれば身体能力を活かしたダイナミックなプレーでチームを助けたが、二季連続の負傷離脱は痛恨。居れば必ずメンバーに食い込むんでいただけに、怪我がちでなければ契約満了は無かった。苦手分野にも積極的に取り組み、WBで新境地を見せた彼は大宮で選手としての価値を上げた。

MF22 翁長聖
三門選手に続く体力オバケ。セットプレーやロングスローはシーズン通しては期待外れな結果に終わったが、試合をこなすほどコンディションを上げ、試合終盤のスプリント能力は圧巻。ドリブルで切り込みシュートに持ち込む積極性も増し、3バックシステムにおけるWBとしての優秀さを存分に見せつけた。

MF26 小島幹敏
今季最も成長した選手。OHやアンカーもそつなくこなし経験を積み、DHとして独り立ちした印象。元々パスセンスだけの選手ではなかったが、守備能力やポジショニングの巧みさ、シュート意識の高まり含め、相互理解も深まったことも相まって実戦で遂に開花。負傷離脱なく戦い抜いた貴重なメンバー。

MF29 川田拳登
長きにわたる武者修行から待望の帰還。生粋のストライカーはサイドプレーヤーとして経験を積み、昇格争い真っ只中の長野からの復帰ということで期待されたが、苦いNACKデビューとなった愛媛戦以降出番はなく、本職でない選手にベンチ枠を奪われる厳しい日々を過ごした。この経験が今後の糧となれば。

MF39 嶋田慎太郎
SHとしてJ2最高クラスのタレントは、OHのポジションで苦闘中。大分でのローン移籍の経験を活かし昨シーズンよりはフィットしたものの、コンディションを上げたところで負傷離脱。左利きの純粋なアタッカーは彼一人だけに、持ち前の巧みな個人技に加え、よりゴールに直結するプレーが見たい。

MF41 小野雅史
明治大学の10番が遂に本領発揮。年始のオレアルでサポーターに名刺代わりのアピール。精度の高いキックとパンチ力のあるシュートを持ち合わせ、セットプレーのキッカーも務めたレフティーは離脱なく1年を通してプレーし、飛躍の年となった。攻守に運動量豊富であり、DHでもOHでも活躍した。

MF45 青木亮太
名古屋でJ1昇格に貢献したアタッカーは、出番を失い覚悟のレンタル移籍。大宮でも欠場が多く、得点にも絡めず助っ人としての役割は果たせなかったが、独特のドリブルとパス、居てほしい所に居てくれるポジショニング、意外に強いヘディングと能力の高さに疑いはない。是非1年間見てみたい選手。

FW(7名)

FW17 ネルミン・ハスキッチ
ワントップ向きではなく、守備のタスクもこなせなさそうな選手を何故連れてきたのか。得点王らしいプレーを見ることはなかった。本人も適応しようという気持ちが薄く、前半途中で交代となった試合はその象徴。全然活躍してないのに寝ても大宮ではしゃいでた姿を見て、憎めないキャラだなと思った。

FW19 イバ
J2での実績を引っ提げて鳴り物入りで加入したが、蓋を開ければ半分の期間は離脱しており、名前だけで連れてきてしまった感は否めない。最初の数試合は可能性を感じたが、チームの一番底のタイミングと重なったことが災いし、良い場面でなかなかシュートチャンスが来ないうちにシーズンを終えた。

FW27 戸島章
町田時代も見ていたので得点力については大きな期待はしづらかったが、それ以外については器用さを遺憾無く発揮し、周りに点を取らせると言う意味では貢献度が高かった。しかし単騎での決定力も求めたいところ。伸びしろは見られたが、29歳という年齢を考えるともう少し結果が欲しい。

FW28 富山貴光
こぼれ球や無理な体勢からのシュートなど、かつてのストライカーらしさは昨シーズンより見られたものの、4得点は戸島同様CFとしては寂しい結果。WBまで任されチームにとっては助かる存在ではあったが、今の立ち位置で満足はしていないはず。よりゴールに貪欲な富山貴光を見たい。

FW30 藤沼拓夢
今季は絶対に戦力になる大チャンスだっただけに、怪我の再発でそれをふいにしてしまったツキの無さにはかける言葉がない。他のアタッカーにない特徴を持ち、実戦でこそ生きるタイプ。個人的には本当に試合で見たい選手。来季はリハビリに終わってほしくはない。

FW36 吉永昇偉
開幕前に奥井が引き抜かれたことから、今期はWBとしてさらにチャンスを掴むはずだった。ほとんどのポジションをこなせる彼は過密日程下で最も恩恵を受けられた選手で、WBは離脱者が多かっただけに尚更。サードストライカーとしての能力も光るものがあり、足りないのはとにかく実戦経験。

FW37 髙田颯也
守備のタスクも多く本領発揮とはいかなかったが、奥抜とはまた違った一癖あるドリブルで希望を見せてくれた。まさかの来季開幕アウトの長期離脱となったが、藤沼の例があるためじっくり治してほしい。チャンスメークではいい場面を作っていたが、もう少しフィニッシュに絡めれば。

監督 高木琢也
過密日程と負傷離脱に祟られ続けた1年。得意のスカウティングを発揮しようにも紅白戦ができず、怪我から復帰した選手のテストに練習試合もできず。昨シーズンあった、非公開練習や奇襲でのスタメンのような絶対にこの試合は勝つという試合のマネジメントもできなかったが、反面試合後のコメントを見ると勝ちにこだわる気持ちが若干薄れているようにも見えた。試合をこなすことに精一杯になっていたのはわかるが、老け込んだ感もあり見ていて辛い1年であった。次のステージでも活躍を期待しています。


ただただ厳しい2020シーズンではあったが、この経験を次に生かすことが出来れば、クラブは高みへ行くことができるはず。希望に満ち溢れた2021年シーズンを過ごせることを心から願っている。

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