見出し画像

2023年の大宮アルディージャを振り返る(選手編GK・DF)

屈辱にまみれたクラブ創設25周年降格イヤーを選手短評にて振り返る。個人としては健闘した選手も何人かいたが、総じて合格点以下。相馬監督のもと志向するサッカーを遂行できれば開幕時のメンバーでも勝ち点50前後を狙えると思っていたので、クラブ内部同様にあれよあれよとチームが崩壊し降格まっしぐらとなったのは非常に残念だった。
誰が見てもJ2にふさわしくないクラブ、実りのない1年を過ごした選手たち。選手に向けられた辛辣な横断幕は決して擁護できる内容ではなかった。

一旦個人にフォーカスし、途中退団や期限付き移籍中の選手も含め1年間を振り返る。


GK(5名)


1笠原昂史 33試合(2,970分) 53失点
長崎で思うように出場機会を得られずレンタルバック。契約期間の消化にも見える人事だったが、蓋を開ければ開幕スタメン。加入当時を思わせるスーパーセーブの連続、好不調の波が課題だったがそれも例年よりは安定して継続。チームの流れや体調不良により2度正GKを明け渡したが、出場した試合においてはH磐田戦のように笠原のおかげで拾えた勝点も多かった。来季もスタメン候補となりうる戦力。


35南雄太 3試合(270分) 9失点
結果的に引退することとなった今季、Hいわき戦のように普通のシュートを普通に決められるシーンが頻発。チームの低迷により一度スタメンを託されたが、パフォーマンスの低下とピッチ上のリーダーシップも期待通りにはいかず。最終節の東京V戦も見せ場を作れず終わってしまった。引退後のクラブについての言及もそうだが、酸いも甘いも経験したベテランの経験がクラブを変えるまでには至らず。このクラブで引退した御縁に感謝するとともに、第二の人生でも何らかの形で関わってほしいと思う。


40志村滉 6試合(540分) 9失点
昨年のパフォーマンスから年間通して守護神としての活躍を期待されたが、開幕では笠原とのポジション争いに敗れる。笠原の調子が落ちてきた頃に戦線離脱するタイミングの悪さに、早くメンバー入りしていれば流れを変えられたのではと悔やまれる。現メンバーの中ではセービング・足元・安定感のどれもが唯一合格点といえる。最終盤はことごとく枠内シュートを止め連勝の立役者となったが、時すでに遅し。明るいキャラクターも含め今後も正GKとしての活躍を期待したい。


50若林学歩 0試合
天皇杯ですらチャンスが無かった事実は2年目としては厳しい。ポテンシャルの塊で終わってもらっては困る。J3で同様のスペックのGKは中々いない筈で、GK陣の戦力ダウンと頭数減を追い風にチャンスを掴んでほしい。最後の砦として選んだ背番号50、来季は是非99番に変更して最後の砦に君臨してほしい。


加藤有輝(北九州・期限付き移籍中) 8試合(先発7・676分)
期限付き移籍3年目。開幕スタメンを飾るも早々にスタメン落ち。アクシデントで途中出場にて起用されたかと思うと、次節はメンバー外だったGKが起用されるなど4選手が起用される、最下位のチーム事情らしい取っ替え引っ替えな起用もあり厳しいシーズンを過ごした。高さと足元を兼ね揃えたGKは貴重だが、そう言われ続けて来季は27歳。残るも戻るも楽な道はない。


DF(14名)

3岡庭愁人 ☆42試合(先発32・2,892分)  0ゴール ☆4アシスト
昨年の残留の立役者だったが、今季は消極的な判断ミスから失点に絡むなど低調な滑り出し。終盤戦でようやくプレーの積極性、果敢なオーバーラップが復活。手薄なポジションという要因もあるがチームでただ一人全試合出場を果たした。大森とゴール裏を煽る姿が印象的。FC東京でプレーするためには先方の台所事情も鑑み、J2上位でもう1年修行が必要か。クロス以外の選択肢を増やすか、よりクロスの精度を上げるかもう一つ武器が増えれば持ち前の馬力も生き、二桁アシストも狙える。


4カイケ 12試合(先発7・725分) 0ゴール0アシスト
2022H長崎戦でスタンドをざわつかせた空中戦兵器。御愛嬌とは言えないくらいのカードコレクターではあるが、見た目通りの身体の強さと空中戦の跳ね返す能力、そして意外な速さ。それでも勿体無いのはヘディングの精度が今一つで、強烈に見えるキックは意外に威力はそうでもない様子。まだまだロマン枠の域を出ない素材で、長崎には戻らず修行が必要だが、日本人にはまねのできない素質を持った選手。戦術的な面も含めてフィットした状態でもう1年見たい。


5浦上仁騎 29試合(先発27・2,432分) 2ゴール0アシスト
ACLを捨ててまで泥船の古巣へ戻ってきた大宮愛の塊。プロデビューの長野では4バックで活躍しており、開幕当初は決勝ゴールや粘り強い守備で成長が伺えたが、次第に個で負けるシーンも散見。チームの低迷とともに低調な出来のままシーズン終了。慣れ親しんだ3バックでも活躍できず。チームを想うあまり気負いすぎなイップス感もあり、熱いコメントと対象的に横パスバックパスの多さに代表される消極的なプレーが多く、もっと楔のパスとか出せると思うので、本来の姿が見られず残念。生で見ると写真以上にかっこいい。


17新里亮 25試合(先発19・1,734分) 0ゴール0アシスト
インテリジェンスなコメント師。言い回しから物の見方までこれまで見てきた大宮の選手で一番好きかもしれない。高さとカバーリングは大きな武器であったが、今のチームの象徴である、あと一歩や一瞬の集中が欠けるシーンも昨年同様見受けられた。A磐田戦の交代からフェードアウトしてしまったが、4バックも5バックもそつなくこなしていただけに、そこまで序列を下げたのには疑問があった。


22茂木力也 41試合(☆先発37・☆3,235分) 2ゴール2アシスト
今季大きな飛躍を遂げた鉄人。無尽蔵のスタミナに、いつも何故ここにいるのかわからない逆サイドからのクロスへの飛び込み。辛辣な評価を受けた2022年から一転、足を向けて寝られない大活躍で最多先発と最多出場時間。クラブの無責任な左SB不在問題を個の力で解決。戦術理解の高さを活かし、終盤はまさかの左SHでも岡庭のとりあえず上げとけ感のクロスにガンガン飛び込む特攻役に。ボールを持っていないときのポジショニングが本当に俊逸。まだまだ伸びしろ十分で、もう1年頑張ってほしい。


25袴田裕太郎 32試合(先発30・2,595分) 3ゴール3アシスト
昨年より得点は減らしたが、セットプレーでのファーサイドからの折り返しはアシストマシーンとして攻撃の形のないチームにとって大きな武器となった。守備面では強度や他のDF同様の集中切れが発生し、4バックのCBとして年間通して戦うには少々物足りなかった。ピッチ上では副キャプテンとして多くの試合でキャプテンマークを巻いた。時には左SBとしてチームの泣き所をフォローしたが、昨年嵌った新里とのコンビがあまり見られず残念だった。左足からのフィードは健在で、右利きと組む左CBとしてはより効果的だった。


34大森理生 9試合(先発7・628分) 0ゴール0アシスト
一番下の序列からのスタートで、低迷期に何試合か起用されたがチャンスを掴めず。長身を売りに特徴的には起用の余地があったが、カイケの加入もあり需要減。経験も浅く4バックでの起用も多少不安あり。期限付き移籍なので来季はわからないが、今の大宮の序列だとカテゴリーを下げるようか。


37関口凱心 3試合(先発1・80分) 0ゴール0アシスト
ジュニアユース以来7年ぶりにオレンジに袖を通した、完全ノーマークだった特別指定選手。山梨学院大学にアカデミー出身がいるイメージがなかった。清水戦で乾とマッチアップするというハードルの高いJデビューとなり、失点に絡んだのも一つの経験。相手選手に食らいつく泥臭い守備も好感が持て、来季はボランチかSBかわからないが、プロとして活躍が期待される。


38鈴木俊也 1試合(先発0・11分) 0ゴール0アシスト
特別指定含むと3年目の在籍となり、いよいよプロ契約となった。契約時の監督は岩瀬さんで、結果的にルーキーイヤーで3人目と4人目の監督に仕えることに。左利きの長身SBはどの監督も欲しがるが、怪我が多くては使いようがない。茂木が良かったとはいえ大卒でこの結果となると、来季は今後のプロ人生を懸けた1年になる。


41飯田貴敬 12試合(先発9・750分) 0ゴール0アシスト
京都のJ2卒業の立役者であったが、今季は明らかな構想外のスタートとなり、結果ローンで加入することに。持ち味の攻撃性能は岡庭不調時に飯田のサイドでの思い切りのよい仕掛けが良いアクセントとなったが、数字には結びつかず。逆にピンチでのジョグのような緩慢な守備意識と不必要なカードの多さばかりが目についた。衰えるような年齢ではないが、実戦感覚なのか、加入直後に語った決意の強さがプレーから感じられず残念。


43市原吏音 17試合(先発17・1,430分) 0ゴール0アシスト
原崎さんの唯一の功績と言っていいクラブ史初の大抜擢は、高校3年生がJ2を十分戦えることを証明した。1対1での強さ、空中戦、正確なロングフィードと万能さを発揮。おまけに誰よりも声を出して鼓舞する頼もしさで、CBのファーストチョイスに。また消極的なDFの選手たちの各駅停車横パス祭りに対して、市原は一つ飛ばしのパスを出せる。屈強な長崎の選手やテクニシャン揃いの清水の選手ら、失点に絡むシーンはありながらも同年代では得られぬ経験を得られたはず。ネクスト冨安と呼んでも大袈裟ではない逸材、いつかまた御縁があることを願う。


46貫真郷 8試合(先発4・355分) 0ゴール0アシスト
個人的にポスト酒井宏樹と呼ぶほどのポテンシャルと思っているが、強度・状況判断・技術と経験と一言で片付けられないくらいまだ足りないものが多く、特に1対1の対応。過去大宮ユース出身のSBは少なく、全体的に長身選手が少ない上になかなかものにならない。恐らくオフシーズンでレンタル先が見つからなかったものと思えるが、来季は自力で出番を掴んでほしい。


西村慧祐(モンテディオ山形・期限付き移籍) 30試合(先発29・2,668分) 0ゴール1アシスト
高さ、意外な速さ・縦パスに謎の攻撃参加と必要な能力はほとんど兼ね揃えているがポカが多くポテンシャルを生かしきれず、現状ピークは加入前のPSM松本戦の練習生時代だった。プレーは終えていないが出場記録や評判を見るに、ようやく実力を発揮できているよう。このまま完全移籍に移行が濃厚だが、現状の大宮でこれ以上の伸び代を期待できないのが悲しい。


吉永昇偉(愛媛FC・期限付き移籍) 8試合(先発1・113分) 0ゴール
2失点してHTに下げられた開幕戦が唯一のスタメン出場となってしまった。高校3年次はストライカーとして活躍したが、SBとして出番を得られず高卒5年目での契約満了となった。プロ入り後は大宮の4年間でCF・SH・WB・SB・3バックのCBとたらい回すだけたらい回され、本職でのチャンスは僅か。ルーキーイヤーで右WBとして大外から飛び込んでのゴールを決めたときは最後のゴールになるとは誰も思わなかっただろう。適正なポジションを見つけてキャリアを挽回してほしい。


MF・FW編に続く。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?