近くから、そして遠くに
長い旅路でした。
初めて会ってから4年、時が過ぎるのはどうやら早いもので、僕としては短かったような気がしますが、小学6年生から中学3年生まで、ここまで君たちと歩いてきました。君たちの中に「一方的に引きずられただけなんですが…」、っていう人が出てこないか不安なものです。
君たちと初めて会った時のことを思い出すと(すべて思い出せるわけではないのですが)、まぁ、失礼かもしれませんが「素直すぎる子たち」だなぁ、と。こんなどこの誰ともわからないような講師のいうことは全て完璧にやってくるし、小学生とは思えないくらい物分かりはいいし、ちゃんとこっちの話聞いてくれるし……。
こちらとしては、講師始めたて1、2週間程度なのに…。なんて思ったり。ただ、最初4人のクラスが、年を重ねるごとに人数が増えていっていつの間にか9人になって、「あんなに素直だったのに……」って思うほど個性豊かというか、時には「おぉっと~??」と思うような言動が出てきたりとか。
いつのまにか声が低くなっていたり、背が伸びて僕が越されるようになったり、目や耳ですぐにわかる変化ももちろんありましたが、それ以上に君たちの考え方や口調のような精神的な部分の成長も、いつの間にか自分の夢を持って、その目標に向かって歩いていく様は、4年という期間がなければ、気づくことができなかったでしょう。
そんなこんなで、4年間僕も一応成長しながら(?)、むしろ君たちに成長させてもらいながら、ここまでやってこれました。僕が時に自信を無くすようなことがあったり、「なんかやる気でないなぁ」って思ったりすることもありましたが、君たちに授業するのがいつの間にか僕自身を支えるものになっていました。何か嫌なことがあっても、(それはこの仕事をやるうえでもそうですし、私生活内のことでも)このクラスでの授業のために、切り替えたり、時には君たちに励ましてもらったりして、なんとかここまでやってこれました。
途中で担当から外れたこともありましたが、何とかしてこのクラスを持てるように、ちょっと強引な方法も使いながら、交渉して、どうにか君たちの役に立てるように、これまでやってきました。
残念ながらもう君たちに授業をする機会も少ないですし、もう君たちの成長を眺めることはできませんが、これまで君たちがやってきたこと、考えてきたことというのは、これから君たちが成長するうえでの役に立つはずです。
それが受験ってもんですから。
仮にも長く生きている身として、受験で得た知識なんてきっと一生使わないもののほうが多いでしょうし、何より、持っている知識の多さで社会の中を戦える時代ではどうやらなくなってしまいそうです。
ただ君たちは、もう一回大学受験というものがあるので、そこは頑張ってもらわないといけないのですが。
ただ、君たちが、受験を通して得た経験というのは、これから君たちが社会で戦うときの武器になってくれるはずです。もちろん、それは、合否に関わらず、です。
どうやって不安を乗り越えたか、困難にどう立ち向かって克服したか、という経験はもちろんですが、それが叶わなかったときの経験もきっと役に立ちます。世の中、すべて上手くいくことなんてないんですから。
僕はいつか、「なるべく夢や目標への最短距離になるように進路を考えてね」なんて言いましたが、どの進路が最短距離なんて進んでみないと、いや、そんなのは後の後になってみないと分からないものです。何なら、わからないまま、なんてこともあります。僕は、いまだにわかっていません(わかってないのに言うな?いやいや、大変申し訳ない)。
僕は結局、君たちに後悔してほしくないってだけなのかもしれません。僕は中学受験、高校受験とあまり芳しくなかったので。ただその結果を後悔しているかと言えば、それはNoであり、今となっては「あぁ、そんなこともあったなぁ」くらいの出来事ですから。むしろ、そのどちらかかがうまくいっていたらおそらく僕は君たちに会えなかったでしょうから、その点では人生何が起こるかわからないもんです。
ただ、「あの時こうしてれば…」とか、「もっとまじめにやっとけば…」って思ってほしくないんですよね。「自分はすべてやりつくした!うまくいかなかったらそれは塾のせいだ!」って言ってほしいし、そう言えるくらい頑張ろうね、と言ってきたと思います。
だから、たとえ今回うまくいかなかったとしても、胸を張って次のステージに進んでください。急がば回れじゃないですが、その先どうなるかなんて誰にも分らないものです。さらには、一回の失敗でその可能性が消えてしまう夢なんてきっとないのですから。その失敗を糧に前に進んでいってください。きっと大丈夫です。
と、長らく書いてきましたが、ともかくまずはお疲れさまでした。まぁこれを描いているのは、当日の朝4時なんですけれどもね。なので、まずは、これまでの努力に対してです。試験のことは次の授業で話しましょうか。ちゃんと来てね。
あ、あと、しっかり親御さんたちに感謝を伝えること。恥ずかしながらこんな年になってから気付くことですが、改まって親に感謝する機会なんてそうそうないんですよね。親御さんたちもきっとこれまで不安だったでしょうし、きっとそのことを君たちに見せないように神経を遣っていたはずです。僕は誰かの親になった経験はないですし、多分その経験を持つことはおそらくない?かもしれませんが、こうして、受験当日の朝4時にこんな文章書いてるんですから、まぁ眠れなかったわけですよ。君たちの親御さんたちは、この何倍もの不安にさいなまれていると思いますから。
そして、もう一つ、これまでありがとうございました。きっと、君たちが僕よりもっと優秀な先生に教わっていて、今よりもっと成績が上がっていた世界線があるかもしれません。僕は、ただ君たちの選択肢を狭めただけだったかもしれません。4年は長いようで短かったですが、僕のもうどうすることもできない4年と、君たちのこれからを変えていく起点となる4年では、計り知れないほど価値が違います。もしかしたら、僕がその価値を下げてしまったかもしれません。時折、そう思って不安になることがあります。
ですので、いつか君たちが、夢をかなえて、何か目標にたどり着いたときに、ふと「あの時頑張ってよかったなぁ」と思っていただけたら、と思います。別に僕の顔とか何か言った言葉を覚えている必要はもちろんありません。何かの拍子に今この時のことを思い出して、それが自分の糧になった、と感じてくれれば、それだけで僕はこの仕事をしていてよかったと感じられると思います。
まぁ、この文章が君たちに見られることはたぶんないと思うんですけどね。だとしても、何か形で残るものとして、きっと面と向かっては言えないだろうから、こうして文章として残すこととします。
最後に、
受験、お疲れさま。
今まで、本当にありがとう。
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