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マニュアル通りにやっているのに、クライアントからクレームが入るのは何故か?

ある一日の出来事。

ある大切なお客さんの依頼で、入居される予定の介護付き有料老人ホームへ荷物を搬送した。

場所は長崎市の早坂町という、高台にある施設で、茂木の海を見渡せるなかなか立派な老人ホーム。

受付で用件を述べると、該当の部屋は4階であるという。エレベーターは一基だけで、それを使えと鍵を渡された。

結構な荷物であり、当初の話よりだいぶ荷物が増えていたので、「これは大変だ!」と思った。

幸い、馬運車にはロープを常備していたので、荷物をロープでまとめ、担ぎながら運んでいた。それでも何往復もしなければならない。

途中で、「目を疑うようなシーン」を目にした。
別の職員が、後から来た家族らしき人たちに、けっこう大きな台車を持ってきたのだ。

後で聞くと、その台車は地下においてあるとのこと。

最初の受付で、私に応対した若い職員は、私が何度も荷物を担いでいる姿を目にしているはずである。

なぜ、「台車があるが?」の言葉が無かったのだろう?
おそらく、わざわざ地下から台車を持ってくるのが、大変で、業務マニュアルには、「台車の必要の有無を尋ねる」は、マニュアルには無かったからだろう。
「引っ越しの予定のある日には、玄関付近に朝、台車を置いておき、夕方地下に収納する」というマニュアルが無かったのは、この施設全体のソリューション能力の低さを表している。

しかし、考えて欲しいのは、「介護付き老人ホーム」というのは、いわば「終の棲家」である。

誰だって、見知らぬ場所なんかで、息を引き取りたくはない。
しかし、世話をしてくれている子どもの負担を考えて、入るのだ。

その時、私はもし、これが自分の親が入居する施設だったら、おそらく激怒していただろう。
「あんたらは、自分の給料さえ手に入れば、目の前のお年寄りが、どんなに困っていても、平気なのか?」と。


その時、私はそういう立場ではなかったので、受付にいた別の職員に、そういう話をして帰った。
その人は、ピンとこないような顔をしていた。
おそらく、何もわからなくて、誰にも伝えなかっただろう。そんな感じがした。



その帰り道、お昼になったので、スーパーに立ち寄り、パンと牛乳を買った。
二階のパーキングには100円ショップがあったので、必要と思っていた物を買った。

その時、お店にいたのは、レジにいた、一人だけだった。
30代くらいの女性で、指輪が見えたので、既婚の方だとわかった。

その時私は、ガラスのコップを4個、カゴに入れていた。
会計を済ませると、その方は「ガラスは、向こうに新聞紙がありますので、どうぞご利用ください」と言われた。
私が財布の中を覗き込んでいると、その方は、「向こうの方(作荷台)に置いておきますね!」と言って、カゴを運んでくれた。
「ソリューション能力のある職業人として」100点である。


前者の受付の若い女性と、100円ショップの女生徒で、何が違うのか?

単に親切かどうか?ではない。
有体に言えば、「気が利くかどうか?」なのだが、その「気が利く」はマニュアルにはない、クライアント側の小さな問題をソリューションできるか、どうか?ということなのだ。

100円ショップの女性は、ただ「コップが割れないように」というマニュアル通りのことだけでなく、「カゴを作荷台に、運ぶ際にも財布を持ったような状態だと運びにくいだろう」という「相手の問題をソリューション」するマインドがあったということなのだ。

つまり「仕事とは、ただマニュアルをそのまま実行する」ということではなく、相手(クライアント)の問題をソリューションして初めて成立するものなのだ」ということです。

残念ながら、最初の若い女性は、そういうことを教えてくれる職場には、めぐり合わなかったということ。

このままでは、当然入所しているお年寄りや家族たちから感謝されることも、信頼されることも無く、ふとしたことでクレームを受けまくることになる。

たとえ、マニュアル通りにやっているのに、クライアントや相手からクレームが入るのは、そういうことなのだ。


従って、前者のように「マニュアルだけあって、ソリューションの無い」職場は、いくら大々的にやっていたとしても職員である若者にとっては苦痛なだけである。
企業側も、続くかもしれないが、伸びてはいかない。


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