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子ども日本風土記 (福島) 「 ちちしぼり 」


ちちしぼり

わたしの 家には、大きい牛が 四とうと、小さいのが 二とう います。
おかあさんと おねえさんが、ちちを しぼります。
おとうさんが、早く 山から かえって来た時は、おかあさんたちに てつだいます。
おとうさんと おかあさんが 山に 行って おそい時には、わたしが てつだ
います。
今 おとうさんと おかあさんは、びょういんへ 行って います。
だから わたしは おねえさんに てつだって、ちちを しぼりました。
わたしが 長い ちちかんを もって うしごやヘいった時、おねえさんは、バケツに おゆくんで、きれをぬらして、りょう手で つかむようにして、ちちくびを あらって いました。
おねえさんが あらって ふいたので、そこにいって しばりました。ちちくびをつかんで ひっぱって かんのそとに ちちを なげました。
足を 上げるから 一かいなげるのです。
それからしばりました。
ちちかんを 足と足のまん中においてりょう手で ぎっとつかんで ひっぱりながら しばりました。
ぎゅっぎゅっと ひっぱりました。
そして じゅっじゅっとでました。
おねえさんは、ちちを あらって いました。
わたしは ひがしの方を しばっていました。
うんとでるからずっと しばっていたら、ながい バケツに 半分ぐらいに なりました。
おねえさんは まだ あらって いました。
おねえさんも しぼりました。
一ばんうしろのうしを しぼりました。
おねえさんが しぼったうしは、一かい 足あげる うしなのです。
だから わたしはしぼれないのです。
わたしが しぼるうしは、おわりになった時、足を あげる うしなのです。あと 二ひきのこって います。
それは おねえさんが しぼるのです。
まん中のうしは、ちちくびが 大きくて しぼれません。
子っこ(仔牛を産んで)なして、ずっと すぎてから、大きくなって きました。
わたしは いつも、 一ぴきだけ しぼっています。
おねえさんを みると、おねえさんは、りょう手でぎっちりと ちちくびを にぎって、うんと 力を 入いれて、いっしょうけんめいにしぼっていました。
わたしも おねえさんのまねをして、いっしょうけんめいしぼりました。
だけど、おねえさんのは、ちちのでる 音が、じゆっじゅっとして、ちちが いっぱい でてきます。
わたしのは、ちゅっちゅっと おとがして、すこししか でてきません。
てが こわくなったので(つかれたので)、 一ぼんずつ しぼりました。
一ぽんが おわりました。
そして、また 一ぽん しばりました。
一ぽんのちちは うんと でました。
あと二ほん しぼればいい。
また ちちしぼりを つづけました。
そして ずっと しぼっているうちに、でなくなってきました。
そして もう 二ほんは、りょうほうの手で、ちちを つかんで しぼりました。ちゅうちゅうと、すこししか でないのも ありました。
じゅうじゅうと おとがして でる ちちも ありました。
そして ずうっとずうっと しぼっていたら、でなくなったから、 一ぽんずつ しぼって みました。
それでもでませんでした。
そのとき、うしが ちちの ところに 足をあげたので、びっくりしました。
おわったので、ちちを うさぎばこの ところに おいて来て、いすを かたして、おねえさんを まって いました。
おねえさんが あんまり こないので、おうちに きました。
おねえさんは まだ しぼって いました。

(相馬郡飯館村佐須小二年 阿部ちどり)

***

最初、読んでいくと、「小学校高学年くらいの子どもが書いたさくぶんかな?」と思っていたのですが、最後に小学2年生のものだと知り、驚きました。
ひと昔前の子ども達は、非常に豊かな経験をして、学習し、そして情操が育っていたのだな!と改めて思います。


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