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対州馬の飼育と調教 ④ 「 どのような場所で馬の飼養が可能か 」

馬を飼養する目的により異なるので一概には言えませんが、最悪な飼い方だけは示すことができます。

「馬房に繋ぎっぱなし」の飼い方です。

馬に限らず何の生き物でも当たり前のことですが、身動きの取れない場所にずっと閉じ込められていたら、その肉体的、精神的な苦痛は想像に難くないでしょう。

馬という動物は基本自分のテリトリーから出ない習性を持っていますが、だからと言って狭い馬房に入れっぱなしでよいということではありません。

犬のように散歩や運動をさせることが容易でないがゆえに、ほぼ馬房に入れっぱなしという馬たちも残念ながら相当数居ると言わざるを得ません。

本来草原を駆け回る動物を人間のエゴで狭い場所に長く閉じ込めておくことは虐待と指摘されても致し方ないでしょう。

しかし、一方でただ広さのある場所で放し飼いに近い状態にしておくと、人が制御できない馬になってしまいます。
但し、道産子などの在来馬は数か月間野山に放っておいて、時季が来ると集めて使役する慣習がありましたが、今はこれができる知識・技能を持った人がいないのではないかと思います。

それではどういう場所でならば、適切な飼養ができるか。これについては、対州馬の産地県である長崎を基本として項目に分けて述べたいと思います。


①少なくとも100 ~ 120坪くらいの広さがあること

・この場所に資材を横づけしたり、馬を運動させることのできる道路があるべきです。


②その場所に適度な日陰があること

・馬は寒さには強く、暑さには弱いです。
夏場に日陰が無い場所、あっても高温にある厩舎内にいなけらばならないとしたら、それは拷問に近い虐待となります。
それどころか、熱中症などによる死亡リスクも非常に高くなる。できれば、いずれの時間帯にも木陰となる場所があることが望ましいです。


③土の質が粘土質でないこと。

・土が粘土質であると、馬の体重で土中に蹄が沈み、従って蹄の状態が非常に悪くなります。これにより体のバランスが崩れ、健康のバランスも悪くなります。
蹄の伸びも早くなり、手入れも難しくなります。
また、粘土質の土地は吸水性が極端に悪くなり、降雨後はいつまでも水が溜まります。
水が溜まるとサシバエ等の害虫も発生しやすい。百害あって一利なしなのです。


④適度な斜面があること

山羊ほどではないですが、対州馬はかなりな斜面も登る能力があります。
この点は競走馬などとは大きく異なる点です。
適度な斜面を上り下りすることで脚力もつき、気晴らしにもなります。


⑤ぼろ(馬糞)を捨てる場所が近くにあること

・厳密に言うと、乗馬クラブや競走馬飼育など生業として馬を飼育する場合は馬糞は産業廃棄物となり、しかるべき処理を行わなければなりません。
しかし、実際にどこへ持って行ってどう処分するかについて、規則で細かく決まっているわけではありません。
ここでは、保存を目的とした対州馬の少数飼育についてのみ言及します。

まず馬糞についてですが、草食動物のそれであるので、匂いはほぼ無いです。
草食動物の糞が強く匂いを放つものであれば、天敵であり嗅覚の発達した狼などに存在を自ら知らしめてしまうからです。

かと言って、放牧地内に放置していれば、それなにり匂いを発生させるし、土質を悪化させるし、害虫の孵化を促進させてしまいます。
したがって、毎回の餌やりの時に処理しないといけません。

第一、訪問者や近隣の者に対しても不快な思いをさせてしまうことになります。
処理方法として一番いいのは、穴を掘って埋めることなのでしょうが、その量は膨大なものになるので、そこまでの土地を確保することは困難でしょう。

またリサイクルと言って堆肥にする場合もあるでしょうが、堆肥化するのは発酵させねばならず、この発酵によって、強烈な匂いを発生させてしまいます。
また害虫の温床をつくってしまうことになります。
よりベターな方法としては、雑木林などの場所に撒いて捨てることでしょう。

馬糞はすぐに微生物や昆虫によって分解され、よい土の原料となります。匂いもだしません。したがって、放牧地を探す場所はこの馬糞を捨てられる場所が近くにあるか否かが重要となります。



⑥水道と電気がひける場所であること


・毎日数回に及ぶ馬の世話を考えた時に、水道と電気、特に水道(井戸)の無い場所では飼育は無理と考えた方がいいです。



⑦民家とある程度離れていること


・昭和の時代にはそれ程問題にならかなかったと思いますが、この時代馬を身近に見れる環境はほとんどなく、馬という動物はほぼ「見慣れない大型動物」です。
従って一般住民にとっては馬の存在は不安なものであるということを十分理解すべきでしょう。

「匂いや虫がでるのではないか?」
「鳴き声がうるさくて生活に悪影響を及ぼすのではないか?」
「脱走したりして子どもに危険をおよぼすのではないか?」といった不安を抱かせてしまうのは、しょうがないことなのです。

実際には正しく飼養すれば、このような弊害は皆無なのですが、それは実際に証明できるまで待たなくてはなりません。
あくまで理屈ではないのです。

ちなみにうちの馬の場合、最も近い民家から15~20mぐらいの距離でした。しかし、幸い、その間に小さな河川があったため、容易に人が行き来できる場所でなかったこととある程度視界を遮断する林が存在したことが幸いでした。

結局、一度の苦情もありませんでした。それでころか、近所の小学生達や孫を連れたお年寄りの方が「懐かしいから!」と訪ねて来てくれることもけっこうありました。


⑧その他


・台風接近時のために、暴風林となる木々が生えているとか、細かく言及するときりがないのでひとまずここまでします。


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