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2023年6月の記事一覧

アウシュビッツとともに、学んでおくべき、明治政府による「集治監」という強制収容所の実態~「河童が覗いたニッポン」より

殆どの人は、監獄の囚人と聞けば、「犯罪などを犯した罪人」だと思うが、どう考えても、彼らの多くは「捕虜」である。 或いは「敵側の関係者」と言ってもいい。 戦に参加した多くの兵は、成り行き上、戦わざるを得なかったわけで、個人の意思など尊重されなかったはずだ。 その上で、戦闘に加わらされ、家族や仲間を失ったり、怪我などに苦しんだ挙句とらわれた上、このような「人間ではない道具のような存在」として惨殺されていることは、ナチスのホロコーストと同質、或いは同等の悪行である。 どうぞ現代

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ④ 差別

*** この日の日記は、特に秀逸な部分であり、大学などの教育機関で、ぜひ取り上げて教材にしてほしいと考えます。 発端は、「アンネがマルゴーの読みかけの本を断わりなしに読んだ」と思うかもしれませんが、この日の内容は、人間の存在意義にも関わる、深い内容を持つものです。 第一次世界大戦のほぼすべてのツケを押し付けられたドイツがその鬱憤を晴らすべく、始まった第二次世界大戦。 ヒットラーが押し付けた狂気は、「人種差別」でしたが、その狂気から逃れるはずのフランク一家の中にも、実は「

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ③ 性善説

これは、ナチスのSSに連行される約一年前、アンネが14歳の時に書いた日記である。 これはアンネの日記であるから、当然アンネの価値観から綴られたものであることは当然である。 しかし、そのことをいくら差し引いても、少なくとも同居していた二人は、あまりにもアンネに対し、「一人の人格を持った人間に対して」語っているのではなく、「こざかしく未熟な存在」という扱いをしていたことがわかる。 そのことに対し、(誰もがそうであるが)アンネは、日記の中で理路整然と反論を展開しており、それはもっ

フォークシンガー 笠木 透の歌詞と言葉 「 一本の ヤシの木 」

こういうふうに、「当たり前」の言葉を、最近では耳に、目にすることが、本当に無くなってしまった気がする。 若い頃、出会ったこれらの言葉が、今ほんとうに懐かしくてたまらない。

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ② しつけの問題

この日の日記を読めば、アンネ・フランクという、ひとりの人間がこの時、どのような問題を抱えていたかが理解できるであろう。 アンネは、これだけ理路整然と物事を見つめ、解釈しそれを整理したうえで記録できる人格を身に付けているのだが、特に母親を始め、他の隠れ家の人物たちが、自分をまるっきり「子ども扱い」をしており、そのことがいかに深く心を傷つけることであるかという警鐘を鳴らしている。 「ナチス・ドイツ」によるユダヤ人迫害から逃れる為に、隠れ家生活をしているにも関わらず、その家族や仲