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「共鳴するピッチ」について

こんにちは、幌です。
こんなところまで見に来てくださり
ありがとうございます。

新年ですし新しいことでも始めようと思い
自分の作品の制作プロセスについて
noteを書くことにしました。

今回は「共鳴するピッチ」という
高校野球とその応援に行く吹奏楽部男子の
読み切りについて書いてみます。
コミックDAYSで読めます。

月刊少年シリウスの編集さんが
「針と羊の舟」の単行本を読んでくださったそうで、
ご連絡を頂いて読切を描くことになりました。

ちょうど今の連載のことで自信を無くしており
何か違うものを描きたいと思っていた頃だったので、
読切に苦手意識はありましたがやってみることに。

(連載の前に青騎士用に
読切のネームを作っていた時期がありました。
当時は会社員だったこともあってか
会社が舞台の読切を…ということで描き始め、
会社が嫌すぎて漫画を描いているのに
なぜ会社のことを考えなければならないんだ
という苦しみに耐えられずボツになりました。
主人公に会社員としてのモラルが欠如している
場面がいくつかあり、己のモラルの低さが
そのまま露呈した結果だと思う。)

講談社で編集さんと打ち合わせをした時は
教養※のためにプロ野球を観始めた頃で、
基本的に月曜以外は野球の配信を観る、
という生活をしており、野球以外の情報が
ほぼ何も入ってこない状態だった為
野球のネタで何か考えることにしました。

編集さんも私も吹奏楽部に入っていたので
野球部の応援行きましたよね〜という話になり、
その辺からぼんやりと
「吹奏楽部に入って野球部の応援に行く男子、
でも自分も前は野球をやっていた」
というネタを考えて、何度かネームを直して最終形に。

ちなみに吹奏楽部だった当時の私を振り返ると、
担当楽器はコントラバスだったので演奏は出来ず、
暑いし野球部に対して良い印象が無かったし、
野球のルールもわからない・・・というわけで
とにかく早く帰りたい!ということしか
考えてませんでした。そして一年で辞めた。
良い思い出。


※教養としての野球とは…
野球特有の言い回し
(野球はツーアウトから、みたいなものとか)や
野球に喩えて何かを語る人って多いですよね。
野球の知識があった方が世の中の解像度がより上がり、
漫画にも役立つのでは・・・と思い観始めました。
知恵袋で「野球について詳しくなるには」と
検索したら、やはりパワプロがおすすめとのことで、
オフシーズンにパワプロをプレイして
ルールとプロ野球の一年間の流れを学び、
なぜかWBCは一切観ずに(気づいたら終わっていた)
その年の開幕戦から日本シリーズまで駆け抜けました。


「自分の方が先を走っていたと思っていた相手に、
いつの間にか追い抜かれている」という状態に
エモーショナルなものを感じるので
そういう関係性が描けて満足。

担当編集さんの助言により
きょーくんも若葉もなんかものすごく
良い奴というか、二人ともこの先もずっと
友達でいてくれ・・・という気持ちに
なれるようなキャラクターになってくれて
本当に良かった。

二人のポジションは
あまり深く考えずに投手にしたんですが、
そのおかげで若葉がマウンドに立つ時に
きょーくんが演奏する、という状態を作れたので
(これが若葉が打者だったりすると、
きょーくんの演奏と若葉のプレーを
重ねて見せることができない。
側から見るときょーくんの演奏は
「きょーくんの高校のチームのため」の
演奏だけど、相手チームでも若葉だけは
違う意味合いで見ている)
そこもうまいこといって良かったな、
と思っています。

当時はちょうど夏の甲子園が始まる頃で、
どうにかしてこの甲子園シーズンが終わるまでに
公開しなければ・・・!という思いで
朝は甲子園、夜はプロ野球を観ながら
ひたすら原稿を描く・・・という日々だった思い出。

以下に一番最初のネームと最終形のネームを
載せてみます。
私は他人のネームを見るのが好きなので
同じように思ってくれる人がいるかもしれない。
K100%で描くとコントラストで疲れるので
最近はこのくらいのちょっと紫っぽい色で
描くのにハマっている。

1.初期ネーム

この時はまだきょーくんのやる気があまり無い
若葉がきょーくんにもっと気まずさを感じている方が自然では?との意見がありました
「ハムスターの手」は編集さんが昔言われてた言葉で
気に入ってたので最後まで残したんですが、
「男の『小さい手』に「ハムスターの手」の比喩は
無理がある(女子ならわかるが)」との指摘が
他の方からあったので変えました
右ページのセリフ、途中で「元野球部」ではないな…
(中学まで硬式をやっていたので野球は部活ではない)と
気づいて「元野球少年」になりました
最終では
「きょーくんがいて嬉しいけど、ここではライバル」
という感じの表情に変更。

2.最終ネーム


一年生の最初の頃ってマウスピースだけの練習とかするよね、
という話になりこうなりました。
私はマウスピースもリードも音が出せなかったので
コントラバスにしました。
夏の高い気温を感じさせるように、との意見があり
ジュースとか日差しとか襟をつかむ仕草を入れました
セミの死骸で「もう野球ができるきょーくんは死んでしまった」みたいなことを表現したかった
きょーくんには姉がいると思う
野球っぽさもトランペットっぽさもあるような、
「飛ばす」みたいな言葉を使ってモノローグを入れてほしい、と言われてこうなりました
ネームでは曲がSunnyDay Sundayでしたが、
チャンステーマの方が若葉がここで抑えなければ・・・
みたいな緊迫感が出るかと思い変えた。
貧乏性なのかこういう風に左右とも大きいコマで作るのも
自分ではなかなか出来なかった

ちなみに、響介という名前は
今時の野球やってる男子の名前で
ありそうなものを探そうと思い、
近年のドラフト会議にかかった選手の名前を調べて
何人かいた名前だったので決めたような気がします。
(響という字が入る人が何人かいた)
「若葉」は響介の後から出てきた若い葉っぱ的な感じ。

イメソンとしてはリンドバーグの
every little thing every precious thingで、
こういう良い感じの曲を聴きながら描くと
自分の漫画を2段階くらい壮大に
錯覚することが出来、モチベーションの
維持につながる気がする。

とりあえず最近も描けるネタが野球くらいしかない為
野球関連の読み切りのネームを描いています。
ちょっと他にも視野を広げようとは思っていますが
ネタ切れするまでは野球で乗り切るつもりです。

<おわり>

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